10/24(金) 12:45配信、ヤフーニュースより Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/a778a981dda3d313324b3b8a0cf8ecc24970c9c3
はじめに
『Casa BRUTUS』2025年10月号の万博特集ディレクションを担当した吉家千絵子(Casa BRUTUS元編集長)から、アフター万博のいろんな情報をまとめてお届け! 万博に何度も行き尽くした方から、残念ながら一度も行けなかったという方まで、前向きになれる有益な情報が入っています! ※本記事は2025年10月24日時点の情報に基づいています。 【フォトギャラリーを見る】 「小さな地球のような生き物」であった万博の最終日。私は大屋根リングを1周して、西の果てからウォータープラザまで全てのパビリオンの外観写真を撮りました。「モンハンに入れなかった」とか「ミャクミャクおしりマグネット買えなかった」というレベルの後悔は消え、もう二度とこの「小さな地球のような生き物」に会えないのがとてつもなく淋しかったです。24回(うち仕事で10回)行った夢洲。そこで出会った光景や人々は、一生の思い出確定級の愛しいものです。ありがとうございました、万博! そんな私なので、会う人ごとに「万博ロスは大丈夫?」と聞かれます。はい、実は「大丈夫」を通りこして、めちゃポジティブです。「万博は準備が大切」を布教してきた私は、万博後にもしっかり備えていました(笑)。「アフター万博」と言うと少ししんみりしてしまいますが、“ビヨンド万博”と意気込めば楽しくなります。ほら、ミャクミャクも、閉幕日の翌朝、全世界に向けて「おはよう、未来。」と励ましてくれたじゃないですか。さあ、万博ロスをプラスに変えるための10の秘訣、始めましょう。
1:万博に関連した展覧会に行き、さらに興味を広げてみる。
夢洲は終わりましたが、万博関連の展覧会はイロイロ続いてます。中でも「並ばなくてもイタリア館に入れる!」と注目が集まっているのが『天空のアトラス イタリア館の至宝』@大阪市立美術館(2025年10月25日〜26年1月12日)。2日でオンラインチケットが完売するほどの大人気ぶりです。万博関連は3作品だけですが、万博の目玉であった《ファルネーゼのアトラス》に加え、展示期間が短く多くの人が目にしていないペルジーノ(ラファエロの師)の《正義の旗》と、今回新しい原稿が見られるダヴィンチの《アトランティコ手稿》、イタリア館来訪者にも新鮮な内容になっているのがミソです。
『ゆめ織るEXPO―万博と織物の意外なつながりー』@川島織物文化館(〜2025年10月31日)は、日本を代表する織物メーカー、川島織物セルコンが、1899年のパリ万博に初めて出展して以来、夢洲に至るまでの壮大な展覧会です。一般には非公開だった迎賓館タペストリーの制作資料や特製のミャクミャク綴織(つづれおり)タペストリーに出合えます。好評につき、特製の「ミャクミャク」のみ11月14日まで期間を延長して展示されるそうです。
シグネチャーパビリオンのプロデューサーたちの活動も盛んです。〈Better Co-being〉の宮田裕章・蜷川実花率いるクリエイティブチーム〈EiM〉は『蜷川実花 with EiM 共鳴するアクアリウム』@神戸ポートミュージアム・アトア(〜2025年11月3日)を展開中。日本最大級の球体水槽を使用し、色鮮やかな魚たちと繰り広げるインスタレーションは、もうひとつの〈Better Co-being〉と言えるかもしれません。 〈null²〉の落合陽一は『アートアドベンチャーエヒメフェス2025』(〜2025年11月3日)に参加。〈愛媛県総合運動公園の森〉で〈null²〉の外観のような鏡を展示、「水の上を歩く」体験を仕掛けています。〈いのちめぐる冒険〉の河森正治も万博記念公園で展覧会を開催中(次の章で詳しく触れます)。 そして、関西から来る人も増えているのが〈森美術館〉で開催中の『藤本壮介の建築:原初・未来・森』(〜2025年11月9日)。夢洲ができるまでの過程、そして藤本壮介×宮田裕章の未来都市像など見どころ満載、さらに5分の1スケールながら大屋根リングに再会できます! おしゃべりする「大屋根リング」ちゃんも大人気です。 関連展覧会に行けば、万博を追体験するだけではなく、興味がさらに展開します。気がついたら万博ロスどころじゃないでしょ。
2:基本に戻って、〈万博記念公園〉に行く。
万博プレイバック気分なら、基本に戻り、70年万博の跡地である大阪吹田市の〈万博記念公園〉へ。25年万博に大きな影響を及ぼしていた70年万博。シンボルロゴは当時の桜のロゴから影響を受け、〈シャインハット〉は〈太陽の塔〉へのオマージュであり、〈null²〉や〈パソナ館〉には70年万博の要素が散りばめられていましたね。でも、公園に行っても〈太陽の塔〉をチラ見したくらいの人が多いのでは? 〈太陽の塔〉は内部見学が素晴らしく、かなり強烈な岡本太郎の世界観に驚くはずです。
また、〈EXPOパビリオン’70〉は、当時の人気館〈鉄鋼館〉(前川國男設計!)を再利用していますが、ヨヤクナシデスグハイレマス。2023年夏から別館を併設して展示が大充実しています。さらに、現在、シグネチャーパビリオン〈いのちめぐる冒険〉のプロデューサー河森正治の企画展『EXPO’70パビリオン企画展 河森正治 創作展 ~万博・合体・変形・未来~』を開催中。彼の創作過程と夢洲の展示の一部が見られます。中でも彼が歩いた70年万博の記録は圧巻の熱量です。「70年万博ガチ勢が今回の大阪万博を産んだ!」と妙に嬉しくなります。
3:万博で気になったあの国の味にトライする。
万博は「未知の味にもトライする」大切さを教えてくれました。フードを通じて国を理解する楽しさもあいまって、海外パビリオンのレストランはどこも大盛況でした。 夢洲の海外レストランの一部は会場外の飲食店が運営をしており、その店では会場とほぼ同じ味が、(多分)行列なしで楽しめます。スペインは〈エチョラ〉@大阪、ベルギーは〈ベルジアンブラッスリーコート〉@大阪&東京、マレーシアは〈エーダイニング〉@大阪、イタリアは〈イータリー〉@関東で味わえます。 さらに、夢洲とは関係ありませんが、気になった国のグルメにトライするのは、まさにビヨンド万博。たとえば、アイルランドやウズベキスタンなど、展示で心惹かれた国の店を訪れてみましょう。また、デーツ、ラミントン、エッグタルトなど、夢洲で認知度をぐっと広げた海外フードアイテムを探すのも流行っています。調べてみたら、意外と近所で見つかるかもしれません。 そして、今後は、夢洲で営業していたレストランの再オープンが楽しみです。ドイツ館のレストランが2026年夏に大阪で開業予定。トルクメニスタンのレストランやサウジアラビア、ヨルダン、UAEなどの中東諸国の味わえるカフェも進行中……と心躍るプランが続々と予定されています。
4:「ミャクミャクは永久に不滅」だから、推し続けよう。
184日連続勤務の後、わずか数日の休暇で復帰したミャク様。現れる場所ごとに大騒ぎが起こり、むしろ万博期間以上の大人気ぶりです。「鳥取砂丘ハロウィンパーティー after EXPO2025」への降臨も大きな話題になっています(10月26日予定)。2025大阪・関西万博オフィシャルストアでは一部閉店へ向かう店もあるものの、新店やポップアップストアも増え、むしろ活気づいています。新商品も日々アップされ、10月24日には大人気の黒ミャクミャク × サンリオキャラクターズのぬいぐるみが登場予定! 万博会場の東西ゲートのミャクミャク像は、2026年1月から大阪各地巡業に出て、観光を盛り上がる予定です。そして、数年後に用地が整い次第、夢洲に戻り、「ミャクミャクは永久に不滅です」なので、安心して推し続けましょう。
5:万博のアレコレとの再会を計画する。
話題になったパビリオンやキャラクターの第二の居場所が続々と決まっています。〈ドイツ館〉の人気キャラクター〈サーキュラー〉は、「大阪が気にいったので残ります」とドイツ領事館が着ぐるみの写真と共にアナウンス。早速ディバイス2体が〈大阪市立科学館〉に寄贈され、さらなる活動に注目が集まっています。〈アイルランド館〉前の巨大彫刻《Magnus Rinn(マグナス・リン)》(ジョセフ・ウォルシュ)は京都の〈知恩院〉へ、〈いのちの未来〉のアンドロイドは京都府のロボット研究施設〈けいはんなオープンイノベーションセンター〉へ、お引越しが決定。〈よしもと館〉の巨大ネギのアート作品は、ネギが特産の群馬県下仁田町へ。11月開催のネギ祭りで披露され、その後、駅前に展示される予定で、落ち着くべきところに落ち着いた感があります。そして、ヨルダンの赤い砂は「サンド・アライアンス(砂同盟)」を結ぶ鳥取に運ばれ、展示活用されることになりました。また、東大阪市役所では人口12,000人の島国〈ナウル共和国〉と連携して、臨時パビリオンを展示中、加えて話題のパキスタンのピンクの岩塩も展示され、小コモンズ状態です。 そして、2026年春には〈パソナ館〉が淡路島で再オープン予定、同島には〈オランダ館〉も移転が決まっており、これは盛り上がりますね。万博サウナ〈太陽のつぼみ〉や〈ブルーオーシャンドーム〉なども移転計画中で、吉報を待ちましょう。
6:万博のレガシー継承に、関心を持ち続ける。
大屋根リングの行く末を巡り、各地で討論が行われています。現状では「北東部分の約200メートルを切り出して保存し、その周辺を公園として利用する」方針が万博協会と大阪市から打ち出されています。が、関西7大学の理事から「より多くの保存」を求める案が挙がっており、今後のIR構想と相まって、まだ具体的な未来像が描かれていません。70年万博では閉幕後に取り壊し予定だった太陽の塔が閉幕後の1975年1月に保存されることが決定し、実に半世紀を経た2025年夏についに重要文化財に指定された経緯もあります。レガシーの継承は一筋縄ではいかないようです。 一方、超人気パビリオン〈null²〉のお引越しクラウドファンディングは1日で目標の1億を突破する盛り上がりをみせ、第2弾も成功(現在、第3弾進行中)、どうやらお引越し決定へ。万博閉幕日に落合さんは「万博好きなら納得する場所へ」と叫んでいらっしゃいましたので、期待しながら続報を待ちましょう。 さて、大屋根リングはどうなるのでしょうか。万博のレガシー継承には、私たちが関心を持ち続けることが大切です。閉幕後も毎晩ライトアップされる姿は今も多くの万博ガチ勢を勇気づけてくれています。
7:万博で気になった場所を旅して、世界を広げる。
ヨルダンのワディラム砂漠、カナダの氷河、ペルーのマチュピチュ、トルクメニスタンの犬……旅で出会いたいリストをいっぱいにしてくれたのが万博。コロナや円安で忘れかけていた海外旅行への欲望を掻き立ててくれました。実際に「万博ロスから逃れて、ウズベキスタンに行きます」とSNSに投稿した人も。 旅先は国内でも効きます。関西パビリオン出展参加府県(福井、三重、滋賀、京都、兵庫、和歌山、鳥取、徳島)は公式スタンプラリーを閉幕後も継続しており、それを目当てで訪れる人もかなりいるそう。 万博は閉幕したけれど、会場の外こそが、実は万博。それを実感するには、新しい旅に出るのが一番手っ取り早い気がします。
8:2030年リヤドに行くために、今から頑張る。
建設費と推定された壮大なパビリオン、始発でも味わえるか微妙だった超人気レストラン、大評判のショー『水の物語』、会場外でもイベントを行なったナショナルデイ……など、期間中、話題が尽きなかったサウジアラビア。次回の登録博、「2030リヤド万博」へのプロローグは気合十分でした。「2030リヤド万博」は今回の約4倍の敷地で行われ、世界約200カ国の参加が見込まれています。 「変化の時代 共に先見性のある明日へ」がテーマで、すでに光輝く未来都市のような会場図が公式サイトで公開されています。5年後って、なかなか良い感じの目標です。今からアラビア語を勉強して(いや、それより英語?)、民族衣装の作法を覚えて、あと貯金をしましょう。「リヤドにミャクミャクを連れて行こう!」と、SNS上の呼びかけにも注目が集まりましたね。現地でミャク連れと会ったら、お互いに頑張った5年間に思いを馳せて、胸熱の展開になりそうです。
9:実は約500日後! 2027年春「GREEN×EXPO 2027」に行く気満々になる。
日本の次の万博系といえば、2027年3月から神奈川で行われる「GREEN×EXPO 2027」。正式名称は「2027年国際園芸博覧会」で、通称「横浜花博」。大阪万博は世界で5年に一度の大規模な万博(=登録博)で、それより規模は小さく、テーマを絞った博覧会(=認定博)になります。が、関東での万博は1985年ぶりで、しかもこのスパンの短さで、日本での万博が続くのは初めてのこと。
隈研吾のモニュメントの模型は、既に大阪万博でお披露目ずみ。〈ウーマンズパビリオン in collaboration with Cartier〉や〈ノモの国〉など、今回の建築素材のリユースも発表されており、大阪からの熱気のバトンが引き継がれます。 住友林業、NTT、東急グループなどの企業館だけでなく、カタール、タイ、ネパールなどの海外勢の参加も決定して、なんだか早くも期待が高まってきました。世界70カ国以上の参加を目指しているそうです。キャラクターは大阪万博にもちょい登場していたトゥンクトゥンクで、地球儀みたいなユニークなフォルム。ダンスは踊れるのかな? どんな特技があるか未知数だけれど、今から行く気満々でいいですよね?
10:「あなたの万博」を振り返り、自分のマインドマップを作る。
ここまで読み進んでも、まだしんみりしているあなた、では、今一度、あなたの万博を振り返りましょう。集めたスタンプやパンフレット、撮りまくった写真を見ましょう。自分のフォトブックを作り、振り返るのも流行っています。すると、「これが大好き」「ここにツボった」が浮き彫りになるはずです。それこそが、万博の経験をどう活かすかのポイントです。「自分の希望を落とし込んだ地図作りがとにかく大切」と万博攻略のための記事で繰り返しましたが、アフター万博の秘訣もやはり地図です。「万博」を中心に置き、「自分の好きだったこと」「見つけたこと」から「自分のやりたい」ことへ視点を拡張し、心の地図=マインドマップを完成させてください。その結果、次の一歩が1〜9箇条にあるかもしれないし、別方向にあるのかもしれません。万博経験は十人十色です。「あなたの万博」が「あなたの次の一歩」へと導いてくれるはずです。 故郷がダムの底に沈んでしまう時、人はこんな気持ちなのかもしれない……と思いつつ、最終日、大屋根リングの柱に抱きついてから、会場を後にしました。あの会場にはもう行けないけれど、夢洲は心の良き場所に住みつき、イロイロ産み出す活力となってくれるはずです。アフター万博ではなく、“ビヨンド万博”。「25年万博の展示が人類を救う発明に結びつく未来」は遠い先かもしれませんが、万博を経て、日常は少し明るくなったはずです。「心に大屋根リング」を抱きながら、ミャクミャクのごとくキレキレのステップで、前に進みましょう。
text_Chieko Yoshiie editor_Keiko Kusano

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