Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/ff0539dbdcf817f3fd0b82fec396be8b9de1ace0
40代後半にして会社を辞めた僕は、学生ビザを取得してネパールに移住することを決めた。 【見たことある?】海外転出手続き後「マイナンバーカード」にこんな表記が追加されるんです! 住まいが海外になるということは、つまり日本には“所在”がなくなるということ。税金は? 郵便は? 私物はどうする? そして、移住準備にどのくらい時間がかかるのか……。 今回は、僕が実際に立てた「ネパール移住計画の全体像」を紹介したい。
■移住時期はどう決める?
僕が通う予定のトリブバン大学ビソバサキャンパス(ネパールの国立大学の国際言語キャンパス)の入学時期は、夏(7月)と冬(2月)の年2回。2024年3月末に会社を辞める予定だったので、最速で行くなら2024年の7月入学がベストだ。 しかし、移住を考え始めてからは夜な夜なカレンダーを眺めては、すぐにでも行きたい気持ちと現実的な準備との狭間を行ったり来たりしていた。
■日本で自由な時間を過ごしたかった
それまで勤めていたベンチャー企業では、6年間、朝から晩まで働き詰め。 だから、会社を辞めたら、まずは少し休みたかった。行きたくても行けなかった場所に行きたい。会いたくても会えなかった人に会いたい。久しぶりに自由に動ける時間を味わいたかった。 3月末に会社を辞めて7月入学では、慌ただしくなるに決まっている。ならば、次に入学できる2025年の2月を狙おうと考えた。
見ず知らずの土地「福岡」でワンクッション挟む
会社を辞めれば、東京に住む理由もなくなる。 「どこに住んでもいいんだ!」と思うと、好奇心がむくむくと湧いてくる。日本のどこかにしばらく住んでからネパールに行くというのもありだな。 そこで、思いついたのが福岡。海と山が近く、食べ物もおいしい。実際に住んだことがある人は、みな口を揃えて「福岡はいい」と言う。 結果、いろいろな縁が重なり、2024年6月頃から福岡に引っ越すことに決めた。住んでみると、人生初の福岡暮らしが半年で終わってしまうのはもったいなく感じ、最終的にネパール行きを2025年7月入学まで延ばした。 福岡という見ず知らずの街に住んでみると、いろいろ気づかされることが多かった。同じ日本でありながらも、食文化や慣習がまったく違う。時間をかけてお気に入りの店を見つけ、人間関係もゼロから構築しなければならなかった。 これは、ネパール移住に向けてのちょっとした予行練習になった。
ネパールの「夏」と「冬」の違い
次に引っ越す時期について考えてみた。 ネパールの7月は雨季。毎日のように雨が降り、山肌は濡れ、空は灰色に沈む。 一方、2月は乾季。雨はほとんど降らず、空気が澄み、カトマンズからもヒマラヤがくっきりと見える。空の青さが際立ち、山の稜線は圧倒的だ。 気候だけで言えば、乾季(2月)が圧倒的に過ごしやすい。ただ、今回は“旅”ではなく、“生活”をしに行く。2年は住むつもりだから、いずれは雨季がやってくる。だったら、いっそネパールの雨季を経験してみるのも悪くない。僕はこれまで乾季しか訪れたことがなかったから、むしろワクワクしていた。
海外移住前に日本でやっておくべき手続き
移住のタイミングが決まったら、まずは役所関係の手続きだ。 海外転出届を出すと、マイナンバーカードに「国外転出」の記載が入る。日本の“住民”ではなくなる瞬間である。そして、自動的に国民年金や健康保険が停止される。すでに年払いで納めてしまっている場合は、自分で申請をして還付を受けることになる。住民税は前年の所得に応じて課されるため、移住後も支払わなければならない。 郵便物の転送届も大切。海外転出届によって役所関係の郵便は止まるが、税金、銀行、証券、保険などはそうはいかない。電子化を進めても、郵便物をゼロにするのは難しそうだ。僕はすでに両親が他界して実家がないので、転送先は兄を頼ることにした。 携帯電話も悩みどころ。解約してしまおうかとも考えたが、海外に住んでも日本の二段階認証にSMSが必要なことも多い。 そもそも、僕はネパールに永住するつもりはなく、また日本に帰ってくることが前提の移住だ。となると、これまでの電話番号は維持し、最安のプランに変更することにした。
大量の私物の保管場所問題は?
独り身ゆえに荷物は少ないほうだと思っていたが、実際に並べてみると驚くほど多い。 家財道具は、粗大ゴミとして捨てたり、回収業者さんを利用して処分した。服もずいぶん捨てたし、書籍や雑誌もかなりの量を廃棄して断捨離に努めた。それでも、大事なアウトドアギア&ウェアや、愛読している書籍類 (絶版本や図録、カタログなど)は、どうしても捨てることができなかった。 結果、そのすべてを収納するには、四畳半とまでは言わないが、二畳半ほどのスペースが必要になった。テント泊装備なら軽量化できても、生活の荷はそう簡単には削れないのだ。 レンタル倉庫に預けるのが手っ取り早いが、毎月の賃料がかかる。せっかく身軽になろうとしているのに本末転倒だ。 そんなときに思い出したのが、地元にある親から相続した小さな土地だ。早速、僕は物置を購入、設置し、すべての私物をそこにぶち込んだ。
忘れてはならないのは、会いたい人に会っておくこと
前述の海外転出に際してのさまざまな準備 (段取り、手続き、処分など))は、3か月もあればできると思う。会社勤めをしながらでも、4〜5か月あれば十分ではないだろうか。 個人的に一番大変だったのは、私物の処分だ。まずは、捨てる捨てないの判断に頭を悩ませたし、物置の設置や私物の移動においては、友人にもお願いして手伝ってもらった。 そして移住前に忘れてはならないのは、会いたい人に会っておくこと。家族も含めて、次にいつ会えるかわからない。だから、北は北海道、南は鹿児島まで、いろいろな人に会いに行った。 これでもう心配はない。僕は安心してネパール行きの飛行機に乗れそうだ。 根津貴央(ねづたかひさ) ロングトレイルとハイキングが専門分野のライター。2012年にアメリカの『パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)』を歩く。2014年からは、仲間とともに『グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)』を踏査するプロジェクトを立ち上げ、毎年ヒマラヤに足を運ぶ。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS)がある。2025年4月にネパールへ移住。 @hikertrash_taka @ght_project
根津 貴央



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