Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/53d528f2b8f4b827414bdec4915b154154665064
世界遺産の東大寺をはじめ、多くの歴史的建造物がある奈良県で、文化遺産保護に携わるアジア・太平洋地域の若手専門家を対象にした研修が行われている。2000年の開始以降、39カ国380人超が参加。担当者は「得た知識は自国で広めてほしい。日本と各国のつながりも強化していきたい」と希望を語る。(共同通信=佐野七海) 今年9月23日、奈良県桜井市の談山神社にネパールやフィリピンなど10カ国13人の研修生の姿があった。「こちらが神社本殿です。昨日見た東大寺の持仏堂と見比べてみましょう」。講師を務める和歌山県文化財センター文化財建造物課の多井忠嗣課長(59)が呼びかけると、研修生はグループで話し合いながら、ノートにペンを走らせた。 持仏堂はかつて談山神社の本殿として建立、70年以上前に東大寺に移築された。神社建築が仏教のお堂に変わった例として、相違点を調べた。 集団研修は「ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所(ACCU奈良)」が文化庁などと共催。今年は26回目で、テーマは「木造建造物の保存と修復」だった。研修生はオンライン講義を受けた上で来日、9月19日から2週間、世界遺産・法隆寺など奈良県内外の伝統的な木造建造物を視察した。
タイ政府職員のニティ・サンマノルックさん(39)は「日本は、修復に向けた調査や計画など全ての過程が綿密で圧倒された」と驚いた様子。「タイでは木造建築の修復に関する制度が十分に整っておらず、奈良での経験を自国で生かしたい」と語った。 これまでの研修の参加者は各国で文化財保護分野をけん引する立場となり、20年以上の活動が実を結んでいる。ACCU奈良によると、2015年のネパール大地震で被災した文化財の修復に尽力した人もいる。 自国に戻った後も、研修生同士の交流が続いているといい、研修事業部の脇谷華代子次長は「奈良で培った国と国のネットワークを活用し、アジアで文化財保護分野での協力関係の足場を築きたい」と話した。 ◎ACCU奈良の集団研修 ACCU奈良の集団研修 奈良県天理市にあるユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所(ACCU奈良)が、奈良文化財研究所(奈良市)などと共催。国宝や重要文化財が多く、研究機関が充実し民間技術者が活躍するなど遺産保護の環境が整っている県の強みを生かした。「木造建造物」がテーマの研修と「考古学」がテーマの研修を開催している。

0 件のコメント:
コメントを投稿