2025年11月28日金曜日

「まとめて買えば安くしてくれる」とは限らない…仕事がデキる人はすぐピンとくる”もう一つの可能性”

Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/d725db8b471edf0c44e84429d71462cf956badfd

配信、ヤフーニュースより

プレジデントオンライン

 理由は単純で、人形は手元に10個しかないので、12個を売ろうと思ったら、職人は家に帰って、人形をさらに2個つくらないといけない。余計な労力がかかるから、値段は高くなるというわけだ。 

■「自分の価値観を押しつける人」になっていないか  ここまで説明してきた通り、“客観”というのは、「自分を含めた関係者の『主観』の中から見出していくもの」であった。それは、一般的に「そうだろう」とみなが考えるようなものとは、必ずしも一致しない。  先のアメリカ人は、「10個の商品をバラバラに買うより、1ダースで買えば安くなる」という常識(固定観念)をもとに交渉に臨んだ。  しかし、人形を手づくりしているネパール人の職人にとってそれは、「余計なコスト(労働)が生じること」であり、アメリカ人側の常識はまったく通用しなかった。  ただ、「買い手は1個で買うよりも複数で買って単価を安くしたいし、売り手もたくさん売ったほうが得になる」という点では、文化の異なるアメリカ人とネパール人の間でも利害が一致していた。  不足していたのは、「職人にとって、追加で人形をつくることにどれくらいの価値があるか、あるいは負荷になるか」という発想である。  この発想が欠けた状態で、交渉を無理に進めれば、「なんで1ダースで買うと言ってるのに、安くしてくれないんだ!」と、自分の主観を相手に押しつけてしまうことにもなりかねない。そうなれば、この交渉が失敗に終わることは明白だろう。  ようするに、自分の価値観の絶対性を疑い、互いの主観をうまく調整をする力が必要になってくるということだ。 ■BCGの教え「他人の靴に“自分の足”を合わせる」  物事を考える際、多くの人は「客観的な視点を持つこと」こそが、最も大切だと思っている。「俯瞰する」という表現がよく使われるように、一歩引いた目線から、正しく物事を捉えるべきだ、と。  私もよく、「幽体離脱」という言葉で、こうした視点を説明している。  体から魂だけが抜け出したようなイメージで、「上から」とか「後ろから」とか、さまざまな視点から物事を観察し、考えるようにする。そうすることで、ひとつの物事を多角的に捉えられるようになり、問題解決や戦略的な意思決定のスキルが飛躍的に高まるのだ。  ただし、対人関係の話となると、単に「物事を一歩、引いて見る」というスキルだけでは、どうにもならない問題が発生したりする。というのも、人間の意見や思考というのは、必ずしもファクトや理屈に基づいているわけではなく、最初から偏っているからだ。  なまじ「俯瞰力」に自信がある人ほど、「自分は客観的に物事を見ている」と思っているから、「自分が正しい」という前提でコミュニケーションを取ってしまいがちだったりする。「客観性」というのは、案外たちが悪いものなのだ。  だからこそ、「主観と主観の重なり合ったところに“客観”が生まれる」というふうに、発想を切り替えてほしいのだ。  そのためには、「自分の主観と向き合う」ことはもちろん、もっと相手側の立場を理解し、「相手はこんな価値観を持っているのではないか」といった仮説を立てて考える姿勢が重要になる。  ボストン コンサルティング グループ(BCG)では、これを「他人の靴に自分の足を合わせる」と言う。

早稲田大学名誉教授/東京女子大学特別客員教授 内田 和成

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