2025年11月19日水曜日

ネパール唯一のデフ柔道道場から生まれた「代表選手」 夢の実現を支えたのは、情熱あふれる日本人だった

 Source:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/tokyo/region/tokyo-450077?redirect=1

東京新聞11/19(水)10:00、Googleニュースより

ネパール唯一のデフ柔道道場から生まれた「代表選手」 夢の実現を支えたのは、情熱あふれる日本人だった

古屋祐輔さん(左)と試合を終えたススマ・タマン選手(中)、ラッキー・チョウダリ選手=17日、東京都内で(平野梓撮影)

 東京デフリンピックの柔道に、ネパールの男女2人の選手が出場した。男子60キロ級のラッキー・チョウダリ(18)、女子52キロ級のススマ・タマン(19)両選手は、首都カトマンズにある同国唯一のデフ柔道道場の出身だ。

 道場を開いたのは、日本人の写真家・古屋祐輔さん(39)。現地の一部で根強いという障害者への偏見や差別を変えたいと、選手育成に力を注いできた。(平野梓)

◆「耳の聞こえない人でも世界と戦える」と伝えたい

 2人は16日に試合に臨んだ。ともに初戦敗退だったが、会場で見守った古屋さんは「格上の相手に引かず、一歩踏み出せる強さを見せてくれた」と誇らしげ。「耳の聞こえない人でも世界と戦える。それがネパールの人たちにも伝わればいい」

 神奈川県藤沢市出身。大学時代、訪れたネパールの孤児院で柔道を教えるボランティアをした。子どもたちに感謝され、将来は同国のために働きたいと思うように。30歳で移住し、柔道の普及に携わってきた。

 日本ではろう学校に教師として勤務した経験があり、現地の手話も勉強した。聴覚障害のある子どもらと関わるうち、偏見や差別を知るようになった。

◆偏見や差別…衝撃を受けた一言 護身術として

 「聴覚障害者は性被害に遭いやすい」

 中でも衝撃を受けたのは、そんな話だった。声を出せないため助けを呼べない。現地では、障害者は「前世で悪い行いをしたから」とみなす考えも根強くある。「一家の恥」とされ学校に通わせてもらえない子どもも多く、識字率の低さから警察に訴えられない被害者は少なくないという。

 古屋さんは、なんとかしたいと2019年、カトマンズのろう学校の寮の近くに道場を開設。現地の柔道家らの協力を得て、生徒たちに護身術として柔道を教えてきた。

 2022年、デフリンピックの東京開催が決まると、代表選手を出したいと考えた。ただ、ネパール政府はスポーツや障害者福祉への理解が不十分で、代表選手の渡航許可は遅れた。

 今年9月に同国で起きた大規模デモの影響もあり、当初は政府が援助するはずだった渡航費も得られず、古屋さんが自費で負担した。

◆他の選手にも同じ経験をしてほしい

 古屋さんのサポートを受け、初舞台を終えたラッキー選手は「次に向けてもう一度努力します」と誓う。

 「体を守り、自分の未来を良くするために柔道をしている」と言うススマ選手は、「今回の代表は私だったけれど、他の人も同じ経験ができるようになればいい」と、自分たちに続く選手が育つことを願う。

 古屋さんは今回の渡航費などをクラウドファンディングで募っている。目標金額は250万円。

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