Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0d632d54b7a50ddd26d38d72ca6a6913e7cb5ab5
鍋田ゆかり
安房暮らしライター(館山市・富津市・いすみ市 など) ネパール伝統の行舞チャルヤー・ヌリテャ 写真提供:岡本真宥尼僧ネパールで1500年以上前から続く伝統の行舞(ぎょうまい)“チャルヤー・ヌリテャ”は、ネパール仏教において門外不出とされてきた修行の舞です。チャルヤー・ヌリテャの第一人者、プラジワル・ラトナ・ヴァジュラーチャールヤ師と、日本人初の継承者、岡本真宥(しんゆう)尼僧が、千倉町にある「花の谷クリニック・病棟ホール」で舞の披露と解説を行います。チャルヤー・ヌリテャについて真宥尼僧にお話を伺いながら、本イベントをご紹介します。
門外不出の“行舞”その扉が開かれたとき
元々チャルヤー・ヌリテャは、奉納のためでも人に見せるためでもない、僧侶たちがこの世の真理に近づくために、寺の中の閉ざされた一室で舞われる門外不出の舞でした。
「チャルヤー・ヌリテャは行舞と訳しますが、そもそも古代仏教の世界では、『舞』は変化し続ける人間の動きを指していたという解釈があります。チャルヤー・ヌリテャは人間そのものの本質、いわば生きることの意味を解き明かしていく修行法なのです」
いつしかネパールにも近代化の波が打ち寄せ、人々の信仰心が薄れゆく中、僧侶の担い手が減り、布施だけでは暮らしが立たない僧侶が兼業をせざるを得ず、僧侶たち自身の技術も衰退し始めました。一方で、漏れ出したいくつかのチャルヤー・ヌリテャが、一部の芸能アーティストたちによって形だけが真似され、観光客向けに舞われるようになりました。
今から70年ほど前のこと、このままでは人々の生きる智慧となるチャルヤー・ヌリテャが滅びてしまうと危惧をした3人の僧侶が、時と場所を選び心ある者になら行舞を正しく教えるべきだと考え、門外不出だったチャルヤー・ヌリテャの門を開きました。
チャルヤー・ヌリテャを未来へつなぐ、ネパール密教の行舞を守る人々
真宥尼僧とプラジワル師 写真提供:岡本真宥尼僧真宥尼僧は、1985年からネパールで伝統舞踊の習得や保全に努め、1997年に、チャルヤー・ヌリテャの門戸を開いた3人の僧侶の1人、ラトナカジ・ヴァジュラーチャールヤ師の弟子となりました。ラトナカジ師亡き後は、息子のプラジワル・ラトナ・ヴァジュラーチャールヤ師に師事。日本で指導活動を行いながら、ネパール王立劇場や日本各地、今年は大阪・関西万博のネパールナショナルデーでも舞いました。
現在のネパールにおいて、プラジワル師ほど多くの行舞を舞える人はいないといわれています。彼は、ネパール密教チャルヤー・ヌリテャ保全活動組織「Nritya Mandal」を主宰。現在はアメリカ・オレゴン州に、海外では初、ネパール仏教としては500年ぶりのネパール仏教寺院を建立し、寺を守りつつ、世界各地で活動しています。
真宥尼僧は、「Nritya Mandal Japan(日本ネパール密教チャルヤー・ヌリテャ協会)」の代表を務め、2014年以降コロナ禍を除いて毎年プラジワル師を日本に招いて、チャルヤー・ヌリテャを紹介しています。
長く生きるために舞う修行者の健康観に学ぶ
プラジワル師が11月13日にご来日後、お二人は大阪柏原と八尾、江の島、福井の若狭、富山を行脚される予定です。
今回、鋸南町(きょなんまち)の曹洞宗・乾坤山日本寺にブラジワル師を案内するため、初めて南房総を訪れることになりました。それを聞いた知人の紹介で、ホスピス精神に基づいた活動を行っている花の谷クリニックでのイベントが決定しました。
チャルヤー・ヌリテャの披露に加え、所作一つひとつの意味についても解説されます。
「僧侶たちがチャルヤー・ヌリテャを舞い、真理に近づくためには、長生きしなければなりません。チャルヤー・ヌリテャは健康で長生きするための動くヨーガです」と、真宥尼僧は話しました。
真宥尼僧は以前、癌で入院した経験があります。同室の人がベッドでうずくまっている様子を見て、こういう時にこそ学んできたものを活かすべきと考えました。チャルヤー・ヌリテャから抜粋し、長患いしている方でも足腰が弱い年配者でもできるようにと始めたのが、「古代ネパール手指(しゅし)ヨーガ」です。
「先人の知恵を活かして元気で明るく過ごせれば、社会全体の調和や平和にもつながると思います」と、日々の暮らしの中で手軽にできる手指ヨーガを広める理由を話しました。
今回は、手指ヨーガのレクチャーも行われ、どなたでも参加可能です。チャルヤー・ヌリテャの世界に触れながら、手指ヨーガを一緒に体験してみませんか。
【イベント情報】
名称:ネパール仏教僧侶の修行の舞チャルヤー・ヌリテャ(行舞)
日時:11月18日
14:00〜15:30
参加費:無料(喜捨受け付け)
場所:花の谷クリニック・病棟ホール
〒295-0003 千葉県南房総市千倉町白子2446
主催:花の谷クリニック
取材協力:岡本真宥尼僧
安房暮らしライター(館山市・富津市・いすみ市 など) 館山市・富津市・いすみ市・南房総市・鴨川市・安房郡担当。バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。現在は親子犬2匹と安房の自然にどっぷり浸かりながら、シュノーケリング、サイクリング、ハイキング、シーカヤック、キャンプ、野点、自転車旅を通してその魅力を発信中。
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