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https://news.yahoo.co.jp/articles/1d9e25f0ad6997b2fdbc9eb910d70aa07508ad16
<ブラジルの提案には「化石燃料依存を段階的に克服」という文言が含まれているものの、環境団体などからは明確にすべき措置があるとの批判が出ている>【木村正人(国際ジャーナリスト)】
[ブラジル北部パラー州ベレン発]国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)で議長国ブラジルは11月18日、気候資金、NDC(国別削減目標)、貿易措置・エネルギー移行の影響、化石燃料からの移行・森林保護の4つの大きな課題についてドラフト案を示した。 【画像】日本は意外にも...「世界で嫌われている国」ランキング、2位はアメリカ 「化石燃料からの脱却」に関する案には「化石燃料依存を段階的に克服し、正義・秩序・公平な移行への道筋を支援する」という文言が含まれている。「化石燃料補助金の廃止を促す」案も盛り込まれているものの「化石燃料の段階的廃止」を義務付ける文言はない。 化石燃料削減を支援するための「ロードマップ作成・ハイレベル会合設定」など助言レベルの文言案にとどまっていると批判される。今のところ化石燃料依存から脱却する道筋を支援するロードマップを議論する案が入ったと前向きな受け止め方が多い。 ■化石燃料の「依存の克服」というあいまいな表現 NDCの2年ごとの報告と連動して野心的な目標とのギャップを年次レビューする案も含まれている。これまで後回しになっていた「化石燃料からの脱却」が公式ドラフト文書に選択肢としてだが登場した点は今回の進展として注目されている。 化石燃料の「使用停止・段階的廃止」を明記せず「依存の克服」というあいまいな表現にとどまっているため、市民社会や環境団体から「弱すぎる」と批判が出ている。「ロードマップを作る」こと自体が目的化して「実際に化石燃料を減らす」措置が明確になっていない。 英独が主導、コロンビアが産油国として参加した「脱化石燃料ロードマップ」支持連合も正式に発足した。ブラジル提案を歓迎する一方で「明確なスケジュール、期限、マイルストーンを文書に入れなければ意味がない」と具体性を要求している。 ■化石燃料の「段階的廃止」具体化への政治的気運 他に参加したのは欧州連合(EU)加盟国、太平洋島嶼国、アフリカ、南米の複数国、アジアのバングラデシュ、ネパールなど気候脆弱国で支持国は84カ国に達した。「段階的廃止」を具体化しようという政治的気運が一気に強まった。 「化石燃料からの移行は不可避。期限のないロードマップは地図ではなく願望に過ぎない」(EU)、「ドバイのCOP28で約束した 『化石燃料からの脱却』 を今年ベレンで実行段階に移す必要がある。タイムラインは不可欠だ」(英国)という。 コロンビアは日量約100万バレルの産油国で、通常なら「段階的廃止」に反対する側だ。しかし「化石燃料の段階的廃止について明確なスケジュールを支持する」と賛成に回った。「産油国ブロック」の一角が崩れた格好だ。 段階的廃止を拒否する米国は不在。EUは反動でブラジル提案の強化を求める。AOSIS(小島嶼国連合)は「タイムラインがなければパリ協定の1.5度目標は死ぬ。これはわれわれにとって生死の問題」と訴えた。化石燃料と森林を同時に議論するブラジルの戦略も奏功している。 ■議長国は産油国を刺激しすぎないよう慎重な中立姿勢 「脱化石燃料ロードマップ」支持連合がブラジルに求めた追加要求は(1)化石燃料の段階的廃止の世界共通タイムライン(2)30年のマイルストーン設定(3)石炭削減(削減措置のない石炭の早期廃止)(4)メタン排出の大幅削減(5)化石燃料補助金の完全廃止――だ。 ブラジルのマリナ・シルバ環境・気候変動相は「議長国としてはすべての国に受け入れられる文言を探らねばならない」とサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など産油国を刺激しすぎないよう慎重な中立姿勢を示す。気候資金をどう絡めるかが交渉のポイントだ。 アンモニア・水素の混焼で化石燃料の延命を図る日本について、国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナーの伊与田昌慶氏は「混焼は再エネに比べ高コスト。脱化石燃料ロードマップづくりへの賛同は日本の国益を損なわない。脱化石燃料を前に進める決断を期待する」という。

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