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夜になっても気温が下がらない熱帯夜が続くと、夜中に何度も目を覚ます。クーラーのつけっぱなしは寒いし、つけないと暑いし、温度調整が難しい。真夏でも安眠するためにはどうすればいいのか? 【マンガ】じつは「メルカリ」で、こんなものが売れる… 栄養面から対処法を考える。これさえ飲んで食べれば、今夜からの安眠は約束だ。
暑い夜に眠れないわけ
人間が寝たり起きたりするのには、自律神経が関わっている。自律神経には交感神経と副交感神経があり、この2つの自律神経は真逆の働きをする。起きている時、体を活動的に動かすのが交感神経の役割だ。暑さをキャッチして汗をかいて体温を下げるのも交感神経が働く。 一方で眠る時は副交感神経が優位になる。交感神経が抑制され、副交感神経が働き始めると心拍数や血圧は下がり、体の活動は抑えられる。昼は活動するために交感神経、夜は眠るために副交感神経が優位になるわけだ。 熱帯夜のように部屋の中が暑い夜は、汗をかいて体温を下げろという指令が常に出るため、いつまでも交感神経が活動して副交感神経が優位にならない。そのため、目が冴えて眠りにくくなる。 熱帯夜でも熟睡しようと思えば、副交感神経を強く働かせればいい。そのためにはスマホで寝落ちはしない、風呂に入るなどの方法があるが、今回は栄養の面から睡眠を考えたい。 眠る時に心拍数や血圧、体温を下がりやすくするには、血流の循環を良くする必要がある。副交感神経が働くと血管が拡張し、血圧も心拍数も体温もすべて下がる。逆にいえば動脈硬化やコレステロールなどで血管に障害があると、血管がうまく開かずに血流が滞り、血圧などが下がらず、眠りが浅くなる。また深く眠るには、眠りに関する生理活性物質が十分に分泌される必要がある。
血液循環にはタウリンとイソフラボン
血液循環を良くするにはどうするか? 京都大学名誉教授の家森幸男氏は、WHOに予防栄養学の研究センターを設立した予防栄養学の権威だ。家森氏は世界各国の食事を比較し、血圧を下げる成分はタウリンとイソフラボン、すなわち「魚と大豆」の食事だと結論した。 「島根県は脳卒中が多いんですが、詳しく調べると隠岐の島は他よりも脳卒中が少ない、塩分摂取量は変わらなかったので、何が違うのかと思ったら隠岐の島では魚をよく食べていました。魚の何が脳卒中を予防するのかと調べて見つけたのがタウリンなんです」 世界各国の心筋梗塞での死亡率と魚食の関係を調べたところ、魚を食べる国や地域ほど心筋梗塞の発症率が低いことがわかったと家森氏 「日本人の心筋梗塞の発生率は非常に低い。調べた範囲では先進国の中ではもっとも低い国でした。次いでヨーロッパで魚をよく食べる、スペインやポルトガルが低く、魚をあまり食べないイギリスやフィンランドは発生率が高くなっていました」
血圧を下げるだけでなく睡眠の質の向上にも
ではタウリンに本当に血圧を下げたり、血液循環を改善する効果があるのだろうか。 「チベットやネパールの山岳民族はバター茶を飲みますが、塩を入れて飲むため、塩分摂取量が1日18グラムにもなります。魚も食べません。彼らは血圧の高い方が多く、死因は脳卒中の方が多いようでした」(家森) そこで家森氏は彼らに1日3000mgのタウリンをドリンクとして飲んでもらった。2カ月間飲んでもらったところ、最高/最低血圧153/93が同138/84まで下がったという。魚を食べていない人で血圧高めの人はタウリンだ。 さらに最近になってタウリンには深部体温の放出を促す効果があることがわかった。眠る時は体の奥の体温=深部体温が下がるが、気温が高いと体温の放出がうまく行かず、眠りが浅く、眠りの質が悪くなる。眠れない暑い日の夕飯は塩分を少なくして、塩の害を打ち消す野菜を多く食べられる魚と野菜の蒸し料理などをおすすめする。 「それに大豆もいいんです。大豆に含まれるイソフラボンは体内で血管を拡張させるNO(一酸化窒素)を作るので、血流が良くなります。ただし活性酸素があるとNOが壊れるので、野菜などからビタミンCなどの抗酸化物質といっしょにとった方がいい」(家森) 沖縄の食事は長寿食といわれるが、ビタミンCや抗酸化栄養素が豊富なゴーヤと豆腐を炒めたゴーヤチャンプルーは理想的な食べ方だそうだ。またイソフラボンには食欲を抑える効果もあるので、ダイエットにも良い。 太っていると気道が脂肪で圧迫されて無呼吸症候群になる。太った人が昼間に寝落ちするのは、無呼吸症候群のせいだ。よく眠るためにも、豆腐などの大豆食品を食べて過食を抑えるのがよい。
眠れない夜にはお茶を飲め
お茶というとカフェインが含まれていて、敏感な人は眠れなくなるというイメージだ。しかし淹れ方を変えれば、お茶は強力な安眠ドリンクなのだ。 緑茶には緑茶にしか見つかっていない「テオニン」というアミノ酸が含まれている。テオニンを摂取した人は睡眠時間や寝つきが2割ほど良くなり、中途覚醒の度合いはほぼ半分に減ったそうだ。脳波を調べるとテオニンをとった人はリラックスを示すアルファ波が明らかに強く出る。 強制的に副交感神経を活性化させ、体がリラックスして眠りに誘うのがテオニンの効果だ。カフェインは覚醒作用があるので、できるだけカフェインを出さずにテオニンをたくさん出すお茶の淹れ方があれば、安眠に役立つ。 テオニンは温度に大きく影響は受けず、冷水でも熱湯でも同じように出る。カフェインは温度が高いほどよく出る。そこであまり熱くない65度付近でお茶を淹れるか、水だしで淹れるとカフェインの少ないお茶になる。面倒くさければ、緑茶をパックに入れて、冷水ポッドに放り込んでおけばいい。 なおテオニンがより多いのは最初に葉を摘む一番茶だそうだ。 熱帯夜を乗り切るには、できるだけ塩分を控えて魚介類や豆腐や納豆などの大豆食品を食べ、あまり熱くないお湯で入れた緑茶か水だしの緑茶を飲むのがよく眠れる食事ということになる。今夜からでもぜひ実践してほしい。
川口 友万(サイエンスライター)
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