2026年9月20日日曜日

太陽光発電を「諸悪の根源」とする愚―「ネパール土石流」「温暖化」「クマ」…デマが日本の未来を蝕む

 Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/91d2216537c90f207cb65e47dab33b51ec28a7de

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
太陽光発電に関するデマと事実のイメージ図 筆者作成

 昨今、太陽光発電、とくにメガソーラーへのデマとネガティブ・キャンペーンがネットに溢れています。「水害の原因だ」「温暖化を進める」「クマを里に出す」…。しかも、問題はネットだけではなく、経済産業省と資源エネルギー庁は、「日本には太陽光発電の適地が少ない」と繰り返し、太陽光全体に先がないような印象操作をした上で、技術的に確立しておらず、CO2削減効果も疑問視される「ゼロエミッション火力」を推進しようとします。 

 ネットのデマも、官庁の恣意的な説明も、太陽光発電への誤解と敵意を煽ります。その結果、日本のエネルギー転換と脱炭素が遅れます。米国とイスラエルによるイラン攻撃にともなうホルムズ海峡の封鎖は、海外から輸入する石油等の化石燃料に依存する日本のエネルギーのあり方がいかに危ういものかを示しました。 

 それにもかかわらず、日本のエネルギー改革は大手電力会社等の既得利権を持つ勢力の抵抗もあり、遅々として進みません。さらに、一般市民の間にも上述のように、「太陽光発電パネルが諸悪の根源だ」という悪質なデマが広がり、エネルギー改革の妨げになっています。本稿では、太陽光発電にまつわるデマをファクトチェックし、事実について深堀りします。

【本稿の内容】

  • デマ「水害の主因は太陽光パネルだ!」
  • デマ「太陽光パネルが地球温暖化を進行させている!」
  • デマ「クマが増えたのはメガソーラーのせいだ!」
  • デマ「太陽光パネルは猛毒の流出、電磁波で危険!」等
  • 地球温暖化に関する偽・誤情報は極めて有害
  • まとめ

 〇デマ「水害の主因は太陽光パネルだ!」

【デマ】「斜面にメガソーラーがある。だから土砂が崩れ、川があふれた。ネパールも熊本もパネルのせいだ」

【事実】先日、ネパールとチベットの境界で発生し、多大な被害をもたらした大規模な土石流について、日本のネット上では「中国側の大規模な太陽光パネル群によるヒートアイランド現象で氷河が溶けたことが原因だ」との主張が拡散されました。しかし、国際的な専門家や信頼できる報道機関が原因と指摘したのは、地球温暖化の影響です。

 そもそも、中国の太陽光パネル群は、ヒマラヤ中央部の国境氷河から直線でも数百キロ以上離れています。日本で言えば東京都~広島県の距離以上に離れた別流域の氷河に局所的なヒートアイランド現象が影響したというのは、あまりにも無理があります。

 専門家達は今回の崩落の原因として、温暖化の影響を指摘しています。例えば、ネパールの山岳研究機関 ICIMOD は、「積雪が減り氷河が後退し、むき出しの岩場が増えて熱を吸収する。斜面が脆弱になる。気候変動(=温暖化)と関係している」と分析。著名な氷河の研究者であるアシム・サッタル博士(インド工科大学)も、「氷河が後退し永久凍土が解けると斜面は崩れやすくなる。この種の災害と気候変動には非常に直接的なつながりがある」とニューヨーク・タイムズにコメントしています。 

海外報道を元に筆者作成

 2025年8月の熊本・九州北部の豪雨被害でもその原因が太陽光パネルだと主張する投稿がSNSで広がりました。「メガソーラー(大規模太陽光発電所)によって山を切り崩したことにより、山が保水力を失い大水害に発展した」という主張です。一般論で言えば、メガソーラーが山の保水力を減少させるのは事実であり、そのため、調整池を併設して、雨水があふれ出るのを防ぎます。ただし、山の保水力を奪う点ではメガソーラー以外の人工物(住宅地や道路、ゴルフ場など)も同じか、それ以上の影響があります。さらに、戦後の拡大造林(本来の広葉樹林を伐採し、木材用の杉やヒノキを大量に植えた)や、皆伐(森林の一定の区域内にある樹木を一度にすべて伐採する林業の手法)が山の保水力を奪ったとの指摘もあります。 

筆者作成

2025年の熊本水害については、同年9月に気象庁・気象研究所が「熊本県を中心とする大雨を対象に地球温暖化の影響を評価したところ、地球温暖化が無かったと仮定した場合に比べて総雨量が約25%増加していた」 と発表。 つまり、熊本・九州北部の水害は太陽光パネルが原因ではなく、むしろ、温暖化による海水面の温度上昇により大量の水蒸気が発生して、それが豪雨をもたらしているということが、科学的な事実なのです。

出典:気象庁ウェブサイト


〇デマ「太陽光パネルが地球温暖化を進行させている!」

【デマ】「太陽光パネルは日光を受けて表面温度が上昇する。そのヒートアイランド現象により地球温暖化を進行させている」

【事実】これはもう、完全に論理的破綻が凄まじく、まさに論外なのですが、著名な環境派の登山家も同調するような意見をSNSに投稿しているあたり、本当に困ったものです。そもそも、ヒートアイランド現象とは、主に都市部の気温が、周囲の郊外地域に比べて高くなるというもの。ビルや住宅、道路が日光で熱せられ、その周囲の空気も暖めることが、局所的な気温上昇につながっていますが、日本全体の都市部の面積の方がメガソーラーのそれより圧倒的に広いことは、もはや言うまでもないでしょう。全国の市街化区域の面積は、国土交通省の発表(2022年3月時点)によると約144万ヘクタール。日本のメガソーラーの総面積を公式に集計した単一の統計はありませんが、1MWのメガソーラー設置に必要な面積は約1〜2ヘクタールなので、設備容量から推計すると、日本中のメガソーラーを合わせても、せいぜい数万ヘクタールです。しかも、ヒートアイランド現象の要因にはオフィスビルや一般家庭からの廃熱(エアコンなど)、工場や自動車からの廃熱も含まれるので*、控えめに言っても、メガソーラーがヒートアイランド現象の主要因だとは言えません。

*火力発電所や原発も大量の温排水を放出しており、周囲の海水の温度を引き上げています。 

 そもそも、ヒートアイランド現象の影響自体が非常に局所的なものです。ヒートアイランド現象が起きているのは、その原因となる都市部などに集中しており、その範囲外の気温、まして地球全体の平均気温上昇への影響は「無視できるほど小さい」(IPCC:気候変動に関する政府間パネル)ということが世界全体の観測結果から結論付けられているのです。

筆者作成

 仮にヒートアイランド現象で地球平均気温を引き上げるとしたら、都市部の気温はどれくらいになるでしょうか。興味深いので、筆者はざっくりと計算してみました。地球の表面積は約5億1000万平方キロメートルで、都市部はその0.1〜0.3%程度です。この面積比から都市部だけで地球全体の平均気温を1度引き上げるとすれば、都市部は気温400~700度であることになります。どう考えても無理がありますよね。メガソーラーの総面積は都市よりさらに狭いので、地球全体の平均気温に影響することはあり得ません。

  一方、代表的な温室効果ガスであるCO2は人間活動により大気中の濃度が高まっており、産業革命前(1750年頃)で約278〜280 ppmであったのに対し、直近では423.9ppmで、約52%増加。やはり、温暖化はヒートアイランド現象ではなく、人間活動によるCO2等の温室効果ガスの排出が原因という科学的なコンセンサスを受け入れるべきですね。

筆者作成

〇デマ「クマが増えたのはメガソーラーのせいだ!」

【デマ】「山を太陽光パネルで覆ったから、クマが里に出てきた」


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