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世界中で頻発している「猛暑」「突風」「豪雨」などの異常気象。2024年、「日本の夏」に注意すべき自然災害を異常気象研究の権威、三重大学大学院・立花義裕教授が解説します。
世界各地で記録的猛暑 原因は偏西風の蛇行と北上 日本は?
世界中で記録的猛暑に見舞われています。5月28日インドで50.5℃、6月17日にサウジアラビア・メッカで51.8℃など各地で50℃超えとなっています。
この記録的猛暑の要因を三重大学大学院・立花義裕教授は「北半球の気温上昇は、偏西風の蛇行と位置が北上したため」だとしています。
Q.通常、偏西風というのは、蛇行していないものなんでしょうか? (三重大学大学院 立花義裕教授) 「少しは蛇行しますが、こんな風に大きく蛇行せずに割とまっすぐ西から東に吹きます」 Q.北に上がっていることでも気温上昇を招いているということですが、どういうメカニズムなんですか? (立花教授) 「偏西風は、北の寒気と南の暑い空気の境界線で吹きます。ですので、偏西風の北なのか南なのかで気温が全然違います。それが北にずれるということは、より暑い空気に覆われるということです。さらに蛇行していますので、蛇行で北に盛り上がっているところでは、少々偏西風が南下しても暑いままです。蛇行の激しさと北上の2点がより暑くさせる原因です」
2019年と2023年を比べると、東京の35℃以上の猛暑日は倍に増え、2023年は22日となっています。2024年はすでに7月7日に静岡市で40.0℃を観測しました。立花教授によると、「40℃超の地域も去年以上に増え、暑さは10月まで続く可能性もある」とのことです。また、例年より厳しい暑さになる条件を3つ挙げていて、それが①偏西風の北上・②日本付近・インド洋の海水温上昇・③ラニーニャ現象だということです。 Q.先ほどの偏西風の北上に加えて、日本付近とインド洋の海水温の上昇とありますが、日本の北海道付近の海水温が例年に比べてかなり高くなっています。どうみていますか? (立花教授) 「こんな暑い水温を見たことがないです。それくらい異常です。気温の1℃・2℃は大したことないのですが水温は1℃・2℃でも異常です。この異常によって暑い空気が日本に来るわけです」 Q.インド洋の海水温の上昇も日本の猛暑に繋がるといいますが、どういうメカニズムなんでしょう? (立花教授) 「インド洋が暑いと、インド洋の暑い空気が北のヒマラヤやチベット高原に行きます。そして、そこに暑い高気圧ができます。これをチベット高気圧といいます。それが日本の方に張り出します。それがインド洋の水温が暑いことの影響です。インド洋が暑い影響でチベット高気圧が張り出し、もともと日本付近には夏の高気圧がありますので、暑い高気圧が二つ来るのでさらに暑くなるというわけです」
Q.③のラニーニャ現象による気温上昇のメカニズムについても教えてください (立花教授) 「ラニーニャ現象というのは、南米の赤道付近の水温が割と低くなり、日本の南の海の水温が高いことをいいます。そうすると、冷たい空気の影響で、南米沖から日本の南に向けて風が吹きます。その風が北に上がるので、日本付近に暑い空気がたくさん来ます。ですので、ラニーニャのときには日本が暑くなります。2024年は、ラニーニャで暑い・インド洋と日本付近の海水温が高くて暑い・さらに偏西風が北に上がっているので暑いという暑くなる条件がそろっているんです」
異常気象の影響で日本の食卓に異変
猛暑は私たちの食卓にも影響を及ぼしています。新潟では、2023年産のコメの1等米比率は、うるち米全体で15・7%、特に暑さに弱い品種のコシヒカリだと4.9%と過去最低を記録しています。2023年8月の新潟市の平均気温は30.6℃と全国1位、降水量は全国最少、日照時間は全国最長とコメには厳しいコンディションでした。 また、海水温の上昇は魚にも影響が出ています。北海道のサンマは、2014年10万8578tの水揚げがあったのに対して、2022年は8121tと約90パーセント減。岩手のサケ類は、2014年の1万6009tの水揚げに対して326tと約98%減となっています。 さらに果物も、山形のサクランボの収穫量が2024年は例年の半分、過去最低水準になる恐れがあるということです。
7月8月は「ダウンバースト」に注意!風速50mになることも
2024年の7月・8月は「ダウンバースト」と呼ばれる「突風」の発生が増加するため、注意が必要だといいます。その「ダウンダースト」の仕組みですが、積乱雲から下降気流が発生して、空気が強く地面に当たり叩き付けられて強風が四方に広がることで発生するといいます。立花教授によると、「発生の予兆は『冷たい風』と『積乱雲』。起きやすいのは『関東平野』(茨城・千葉)」だということです。 Q.実際の風の強さはどのくらいになるのでしょうか? (立花教授) 「場合によっては毎秒50mと台風並みの風になります。しかも大事なのは、雨が降っていない場所でも強風が吹くんで危険なんです」
Q.何故関東平野で起きやすいのですか? (立花教授) 「まず、『ダウンバースト』が起きやすいのは、広い平野です。さらにまわりが海で、湿った空気が入ってきやすくなっていて、より積乱雲が発生しやすくなっています。ということは、上空に強い雲ができてドンと落ちてきやすいのです。そして、大阪平野でも濃尾平野でもどこでも起きる可能性はあります」
いざというときに身を守るために、「ダウンバースト」の予兆を感じたら、「丈夫な建物に避難」・「小さな窓の部屋に避難」・「車のなかへの非難はNG」だということです。 Q.車への避難はNGですか? (立花教授) 「風が強いので、車も飛ぶかもしれません。竜巻の避難と同じことを考えてください」
2024年アジア各地で大雨被害 日本でも記録的大雨が
2024年7月9日、中国・重慶で大雨・浸水被害・土砂崩れで6人死亡。6月半ば、ネパールで雨季の大雨のため少なくとも47人が死亡。7月9日、韓国西部で記録的大雨があり5人死亡、行方不明1人などアジアでは大雨被害が相次いでいます。立花教授は、「豪雨をもたらしているアジアの地域は、高気圧と高気圧の間にある低気圧の場所」だとしていて、ここにも偏西風の蛇行が影響しているといいます。
Q.この蛇行が原因で豪雨がアジアを襲っているということですか? (立花教授) 「蛇行がへこんだ(南下した)場所には低気圧ができます。そしてこの場所は、西に行ったり東に行ったり、南に行ったり北に行ったり動きますので、どこで豪雨が起こってもおかしくないのです」
日本でも7月14日、長崎・五島市で線状降水が帯発生し、1時間雨量85.5mmを記録。10日~12日朝にかけて、愛媛・松山市で213mm(平年1か月分相当)の雨量観測し、土砂崩れのため3人が死亡。9日には、島根県内で浸水被害・土砂崩れが発生しています。出雲市では観測史上最大の12時間雨量211.5mmを記録しています。 Q.今後も危険な豪雨は続くのでしょうか? (立花教授) 「海面水温が非常に高いので、海からたくさんの水蒸気が上がって来るため、同じ低気圧でも以前よりより激しい雨が降りやすくなっています。ひとたび降れば豪雨、あるいは猛暑。豪雨と猛暑の二極化が起きると思います」
豪雨から身を守るために、すでに外に避難するのが危険と感じたときは、山・崖から離れた2階以上への「垂直避難」が大事です。 (「情報ライブミヤネ屋」2024年7月16日放送)
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