Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/62ebf0ce58fc9f1ca400e8a62092edec4ddd6507
(CNN) ネパールと中国の国境地帯で8月に発生した壊滅的な洪水は複雑な要因が連鎖的に重なり合った結果であり、その多くは人為的な気候変動によって悪化したという。各国の専門家20人以上による新たな科学分析で明らかになった。 【映像付き記事】洪水で消え去った国境検問所、中国側をCNNが現地取材 被災した地域は、8月下旬に狭い山間の谷を襲った壊滅的な洪水の被害から未だ立ち直れていない。岩や氷を伴ったこの洪水は町や道路、橋を破壊し、少なくとも1300人の命を奪った。5000人を超える人々は現在も行方が分かっていない。 救助活動が復旧作業へと移行し、国が巨大な復興課題に取り組み始める中、世界中の科学者たちがこの悲劇の原因解明に尽力している。 現状で判明しているのは以下の点だ。8月26日、幅約600メートルの巨大な岩塊と氷河がランタン・リルン山から崩れ落ち、約2100メートル下の川に落下した。その際のエネルギーはマグニチュード(M)5.2の地震に匹敵した。 落下した岩塊は、氷をほぼ瞬時に溶かすほどの威力を持っていた。激流は水分を含んだ堆積(たいせき)物を巻き込み、谷底に埋もれた氷に激突したとみられる。この圧力で洪水は一段と勢いを増し、下流約32キロメートル以上の距離を破壊的な速度で突き進んだ。 オランダのユトレヒト大学の山岳水文学者、バルテル・イメルゼール氏は、これはヒマラヤ山脈における「前例のない災害」だと述べた。 しかし、そもそもなぜ氷河の崩落が発生したのだろうか。 気候変動が異常気象に及ぼす影響を調査するネットワーク、「ワールド・ウェザー・アトリビューション」に所属する氷河学者と気候科学者のチームは今月16日、今回の災害の原因究明に向けた包括的な分析結果を発表した。 報告書によると、今回の災害は単一の異常気象現象によって引き起こされたのではなく、複数の要因が重なった結果であり、そこに化石燃料由来の数十年に及ぶ気候温暖化が複合的に作用したという。この報告書は論文審査を受ける形式を用いているが、報告書自体の査読はまだ行われていない。 研究者らは、2015年4月に発生したM7.8の地震が山の南側斜面から岩と氷の雪崩を引き起こし、斜面を弱体化させた可能性があると指摘。それが今回の山岳崩壊の前提条件になり得たと結論付けた。報告書によると、それ以降、山では地滑りの発生頻度が増加しているという。 研究者らは気候変動が果たした役割を検討し、複数の要因が複合的に作用したことを突き止めた。 気候変動により、ヒマラヤ山脈では気温が0度に達する「ゼロ度線」が10年ごとに約97メートル以上上昇している。 報告書によると、気温上昇はネパールの高山地帯の永久凍土層を弱体化させており、特に崩落が発生した標高付近でその傾向が顕著だという。永久凍土層は氷、岩、砂、土壌が混ざり合った層で接着剤のような役割を果たす。 イメルゼール氏は、「永久凍土の融解は岩盤の強度を低下させ、斜面への水の浸透を促進する」と述べている。 氷河の変化も重要な要因の一つだ。ランタン・リルン氷河はここ数十年、特に2010年以降、著しく薄くなり縮小した。このため斜面の安定性が低下し、融解水が岩の亀裂に浸透しやすくなっていることが報告書で明らかになった。 研究者たちが崩落前の気象状況を調査したところ、現地は昨年の10月と11月上旬に記録的な降雪に見舞われた。続く7月と8月はこの地域で観測史上最も暖かい月となり、大量の融解水が発生。斜面の弱体化をさらに招いた可能性がある。 研究者たちは過去のデータと気候モデルを用いて、この地域の7月と8月の気温が気候変動の影響で約1.5度上昇していることを突き止めた。またこの地域の年間平均気温の上昇幅は2度と、世界の平均を大きく上回っている。 今回の報告書では、地球温暖化と降雪量・降雨量の増加との明確な関連性は示されなかった。これは複雑で険しいヒマラヤ山脈での測定・監視が困難なことも理由の一つだ。 しかしながら全体としては、「今回の災害の発生を招いた要因として、人為的な気候変動が関与していたことは疑いの余地がない」と、インペリアル・カレッジ・ロンドンの気候科学教授、フリーデリケ・オットー氏は述べている。 科学者たちは今回の崩落について、規模や速度、複雑さの観点からこの地域がこれまで経験したものとは根本的に異なると指摘。「既存の早期警報システムでは、十分な猶予期間を提供することはできなかっただろう」と結論付けている。 オットー氏は、「これは、我々が適応できる範囲をはるかに超えた種類の災害の一つだ」とし、世界が化石燃料による汚染を急速に削減しない限り、「このような規模の災害は今後も必ず発生するだろう」と付け加えた。

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