Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/08ef3d4e7a4d9b6e1e92d121a9da8016d8a9fa58
ヒマラヤの氷河が融けて、ネパールと中国に大規模な洪水災害を引き起こしました。ところが、その氷河の融解によって「水が減る時代」が訪れるというのです。
ロイター(9月14日)が報じた新たな分析では、ヒマラヤ地域は今世紀半ばにも「peak water(ピーク・ウォーター)」と呼ばれる重大な転換点を迎える可能性が指摘されています。
ピーク・ウォーターとは、氷河の融解によって増えていた河川流量が最大となり、その後は氷河そのものの縮小によって、逆に水量が減少へ転じる時点を意味します。
「水が多すぎる」から「水が少なすぎる」
ヒマラヤは「アジアの給水塔」と呼ばれています。これは、インダス川、ガンジス川、ブラマプトラ川など、アジアを代表する大河川の水源を支えており、その水に数億人規模の人々が依存してからです。
今回の報告によると、ヒマラヤ地域には推計約4万の氷河がありますが、地上で継続的に観測されている氷河は、わずか21しかありません。インドでは200近い氷河湖が高リスクとされ、そのうち56は「非常に高いリスク」に分類されています。氷河融解が進めば、まず氷河湖が拡大し、決壊洪水など「水が多すぎる災害」が起こりやすくなります。
ところが、その先には逆の問題があります。氷河そのものが小さくなれば、乾季に川へ供給される融解水も減っていきます。つまり、「水が多すぎる」から、将来は「水が少なすぎる」へとリスクが転換するのです。
ネパールすでに「水」の電力危機
ロイター(9月14日)によると、今回の洪水で12カ所を超える水力発電所が被災し、ネパールの発電能力のおよそ1割が失われました。ネパールにとって水力発電は、ほぼすべての電力を支える基幹電源です。しかも近年は、余った電力を隣国インドへ輸出し、外貨を稼ぐ重要な産業にもなっていました。
ところが今回の洪水によって、国内の電力需要すらまかなえなくなり、インドから電力を輸入するという逆転現象が起きました。「電力を売る国」が、一度の巨大水害によって「電力を買う国」に変わったのです。
氷河は「未来の水」
今回の洪水災害を見ると、氷河は恐ろしい存在に感じるかもしれません。しかし忘れてはいけないのは、ヒマラヤの氷河がアジアの人々にとって巨大な天然の貯水池でもあるということです。
氷河は、いま洪水を引き起こす可能性のある「危険な水」であると同時に、将来の農業、飲料水、発電を支える「未来の水」でもあります。だからこそ必要なのは、「氷河が融けている」というニュースを眺めるだけではありません。
どの氷河が危険なのか。どの氷河湖が決壊する可能性が高いのか。ピーク・ウォーターはいつ訪れるのか。その後、河川流量はどう変化するのか。水力発電や農業、都市の水道をどう適応させるのか。
こうした監視と長期計画が必要となるでしょう。

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