Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/2ad0a1abf9f866c3df51e170a7e2f3422a474d70
(ブルームバーグ): 中国の習近平国家主席が今週末、新型コロナウイルス禍後初めてインドを訪問する。ニューデリー入りする習氏には、隣国でありライバルでもあるインドとの微妙な雪解けムードを維持するという課題が待ち受ける。
中国外務省によると、習氏は主要新興国で構成するBRICS首脳会議に出席するため、9月12、13日にインドを訪問する。会議に合わせ、モディ首相と会談する可能性が高い。
習氏のインド訪問は2019年以来となる。同年、両首脳はチェンナイで2回目となる非公式会談を行ったが、翌20年に中印国境地帯での衝突で死傷者が出たことから関係は悪化した。
近年は海外首脳を自国に迎えることを優先してきた習氏による訪問は、BRICSの重要性だけでなく、世界最多の人口を擁するインドとの関係維持に、中国がいかに価値を置いているかを示している。
シンガポールの南洋理工大学のディラン・ロー准教授は、「最近のインドと中国の緊張緩和は、より戦略的な関係の立て直しではなく、現実的なリスク管理とみるべきだ」と指摘。「不安定な国境情勢が、双方にとって長期的な経済成長の妨げとなることは両国とも認識している。ただ、戦略的不信は根強く残り、すぐにはなくならない」と話す。
習氏が19年10月にインドを訪れた際、モディ氏は総選挙を終えて国内での政治的基盤を強固にした直後だった。チェンナイでは、習氏が古代都市マハーバリプラムで遺跡を視察し、その後の数年を中印関係にとって「最も重要な時期」と宣言した。
しかし、全長3488キロの国境で起きた衝突によって、こうした機運は崩れた。20年6月の衝突では双方の兵士が死亡し、両国関係は過去数十年で最も冷え込んだ。核兵器保有国である両国間の往来はコロナ禍で途絶え、インドは中国の投資と技術に新たな規制を課した。
さらに23年には、習氏がニューデリーで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議を欠席し、代わりに李強首相を派遣。モディ氏を軽んじる対応と受け止められた。
関係修復に向かい始めたのは、24年にロシアのカザンで開かれたBRICS首脳会議に合わせて両首脳が会談してからだ。25年には天津でも会談した。両国は直行便を再開し、インドは中国企業からの投資に対する規制を一部緩和した。両国は先月、国境を巡る交渉で限定的ながら進展があったことを示唆した。
今週末の会談では、今後の関係に向けた広範な枠組みの整備が焦点になる見通し。経済関係や人的交流、国境問題の管理が、幅広く議論されるという。公に発言する権限がないとして匿名を条件にインド当局者が語った。
火種なお残る
今なお多くの火種が残っている。インドは、トンネル掘削機などの主要機械や、製造業に不可欠なレアアース磁石や酸化物といった材料に対する中国の輸出規制を引き続き懸念している。中国政府は以前から、テクノロジーや貿易、防衛などの分野でインドが米国と連携することを警戒している。
インドはまた、自国の勢力圏とみなす地域で中国が関与を強めていることにも不安を抱いており、特に長年対立するパキスタンが中国との防衛関係を深めていることを警戒する。最近では、パキスタン軍が宣伝動画で中国のシステムに似た防空システムを公開した。パキスタンは昨年のインドとの衝突でも、中国製戦闘機を投入したことを大々的に公表していた。
リスク情報会社ベリスク・メープルクロフトのアジア調査責任者、リーマ・バタチャリヤ氏は、「インドと中国の対立は、なおもBRICSの結束を阻む最大の要因となっている」と指摘。「習氏の訪問予定や最近の国境問題の進展によって協力の余地は生まれているが、関係改善は戦術的で脆弱(ぜいじゃく)に見える。戦略的な立て直しではなく、米国の関税に対する共通の不満も一因となっている。2国間の緊張はすぐに再燃する可能性がある」と述べた。
先月、中国とネパールの国境で発生した土石流により、一帯が被害を受け、貿易が混乱したことも不透明感に拍車をかけている。中国当局によると、人気の巡礼地がある中国側の国境地域で、数十人のインド人が依然として行方不明となっている。中国政府は行方不明の外国人を巡り各国大使館と連絡を取っているとしているが、インド人の捜索については、具体策を明らかにしていない。
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の南アジア担当シニアリサーチフェロー、チエティジ・バジパイ氏は、習氏の訪問は「信頼醸成の仕組みとして重要だ」と指摘。一方、国境問題から中国とパキスタンの関係に至るまで、「根本的な不満」は残っているとし、「こうした根本的な不満が解消されない限り、戦略的な関係の立て直しではなく、戦術的な雪解けにとどまる」と述べた。
タクシャシラ研究所の地政学戦略プログラムの責任者、マノジ・ケワルラマニ氏は、今後の両首脳の会談で進展を示す兆候になるものとして、貿易・投資を巡る対話の枠組みや、グリーンテクノロジー分野での協力、中国からインドへのレアアース供給問題に対処する取り組みを挙げる。
ケワルラマニ氏は、「習氏とモディ氏が24年10月にカザンで会談して以降、双方は関係悪化に歯止めをかけ、関係を再構築しようと取り組んできた」と話した。
トランプ米大統領の下で米国の動向が予測しにくくなったことが、中印関係の新たな不確定要素となっている。貿易交渉の長期化やトランプ氏によるパキスタンへの接近を背景に、インドと長年のパートナーの米国の関係は悪化した。一方、米中関係は上向いており、前回の貿易戦争を経て、習氏はトランプ氏への対応に自信を深めている。
ケワルラマニ氏は、こうした新たな力学により、モディ氏との会談に臨む習氏はより優位な立場にあると指摘。「同時に、中国側もインドが巨大な隣国であり、メリットをもたらす国であると認識していると思う。また、自国の意向に沿った地域秩序を実現しようとするなら、協力する必要がある相手でもある」と述べた。
原題:Xi’s First India Trip Since 2019 Offers Olive Branch to Modi (1)(抜粋)
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