Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/7d6fa72978b366693778dc911829c25e7af9388c
元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。 【写真】カトマンズのホームステイ先のお母さんが旅の無事を祈って首に巻いてくれたスカーフ * * * 2カ月前に旅をしたばかりのネパールで、ヒマラヤの氷河が崩壊したことが原因とみられる巨大土石流が発生した。一瞬にして街が丸ごとのみ込まれる、まるでCGのような信じられない映像に、心底衝撃を受け、悲しい気持ちでいっぱいだ。 あの心優しいネパールの人たちがなぜあのような未曾有の悲劇に遭わねばならないのか。答えはないが、全くないというわけではない。 今回の氷河の崩壊が地球温暖化によるものかは断定できる段階ではないだろう。だが、気温の上昇が氷河の状態を不安定にしていることは間違いない。ここ3年の世界の平均気温は産業革命前と比べて1.5度上がっている。他ならぬこの自分が、氷河崩落の引き金を引いた人間の一人である可能性は決して低くない。 温暖化の影響は、まず元々気候が厳しい国で表れる。だから温暖な地域で暮らす我らはどうしても実感しづらい。自分も恥ずかしながら、このような崩落の危機の高まりが近年指摘されてきたことを全く知らなかった。
それでも、我が国の近年の夏の異常な暑さ、突如襲い来る豪雨の頻発による深刻な被害などを見れば、本当は、実感しづらい段階は過ぎているように思う。そしてそうなってみれば、本当に恐ろしいのは、自分たちの生命財産に影響を与える「今ここにある脅威」を目の前にしても「何も変えられない」我らのメンタリティである。それが良いとか悪いとかいう話ではなく、今変えられないということは、これからも変えられない可能性が高いからだ。 我が日本政府も、物価高対策や景気対策には熱心に旗を振ろうとしているが、温暖化対策となると熱心な様子ではない。票にならない不人気政策だからだろう。でも冷静に考えると、AIに頼り生産性を上げ便利で豊かな暮らしをすることと、地球環境が人類の生存を脅かす危うい地点に来ていることは、同じ途上にある話である。繁栄を目指しつつ滅びへ向かう私たちは一体何がしたいのか。 いながき・えみこ◆1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。著書に『老後とピアノ』『家事か地獄か』、翻訳本『ピアノが弾けるようになる本』など。最新刊は『買わない生活』 ※AERA 2026年9月14日号
稲垣えみ子

0 件のコメント:
コメントを投稿