Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/51398f43f9875a2f4ec79bbfc07a4d62c491c05c
中国で世界のトップ大学の理工系の若手高学歴人材を呼び込むための新しい査証(ビザ)「Kビザ」が10月1日から導入されたが、これに中国内の若者から激しい反発が起きている。中国では、若者の失業率が約19%にも上るほど、ただでさえ高学歴の若者が職探しに苦労している。これまでも、日本での就職を目的に多数の中国人留学生が日本に入国していたが、中国が新たに導入したKビザにより、就職難の中国人の若者が一層、日本に押し寄せる可能性も排除できない。中国人留学生は昨年1年間で12万人以上、昨年までの9年間で134万人が来日しているのに加え、中国人移住者は来年には100万人を突破するとみられるだけに、中国のKビザ導入は日本にも少なからぬ影響を及ぼしそうだ。 【写真】保管していた大量のコンドーム、超高級マンションのベッドルーム、バスルーム、連行の瞬間も…イギリスで「終身刑」となった婦女暴行・中国人留学生の素顔 【相馬勝/ジャーナリスト】 ***
科学技術、工学、数学などにおける世界のトップ人材を中国に
Kビザは中国に入国する海外の若手科学技術人材に特別に発給されるもので、中国の理系分野での国際競争力を高めることが狙いだ。科学技術、工学、数学などにおける世界のトップ人材が中国で学んだり、ビジネス活動を行ったりすることができることを目的にしたものだ。 Kビザは従来の就労ビザや高度人材ビザとは異なり、雇用先や機関の招聘を必須とせず、入国回数や滞在期間の柔軟性が高い点が特徴。Kビザ所持者は教育、科学技術、文化などの分野での交流活動や起業、ビジネス活動にも従事できる。申請手続きも就労ビザなどと比べて簡素化されている。米国のトランプ大統領が海外からの米国への留学条件を厳しくし、門戸を閉ざすのとは対照的に、中国政府は、外国人材に広く門戸を開いているというメッセージを世界に発信することを狙っているようだ。 中国共産党機関紙「人民日報」系国際問題紙「環球時報」は、「Kビザの所持者は入国後、教育・科学技術・文化分野での交流や起業・ビジネス活動に従事できる。Kビザの発給は中国のビザ利便化がより広範囲に及ぶことを意味し、より開放的で自信に満ちた新時代の中国を世界に示している」と中国政府の意向に沿った解説を展開している。
若者はKビザに強い反発
しかし、中国政府の説明とは裏腹に、中国国内では、Kビザへの反対論がSNSの話題の中心となっており、ビザ関連のハッシュタグの閲覧回数は10月3〜4日の2日間で約5億回に達したほどだ。中国では、若者の失業率が19%近くまで上昇し、過去最高の1220万人の新卒者が厳しい経済状況の中で職を求めて競争している。こうした状況で、若い求職者が直面する根深い課題を指摘する声が数多く寄せられている。 SNS上では、「(修士号取得者で)就職に苦労している人たちがこんなにたくさんいるのに、(海外から)もっと優秀な人材を呼び込もうとしているのか」というコメントが投稿されると、数千の「いいね!」が集まるなど、国内のナショナリズム高揚や外国人嫌悪を反映したような見解が出ており、若者たちの不満が強いことを表している。
反体制の「白紙運動」再びも
今後、これらの政府への不満が募って、「白紙運動」などのような反政府運動が再び突然、展開されることも考えられる。白紙運動とは、2022年11月から12月にかけ、大学生を中心とした若者が何も書かれていない白い紙を持ち、政府のゼロコロナ政策を批判、中国共産党の自由抑圧姿勢を強く攻撃した一連の抗議行動である。 実際、若者への影響力が大きい著名な時事問題コメンテーター、胡錫進氏はSNSへの投稿で、「Kビザは、中国国内での雇用創出と並行して実施されなければならない」と述べたうえで、「Kビザをめぐる論争の核心にあるのは、国内の雇用市場の緊張と、若者たちが直面している就職への不安を映し出しているという点だ」と指摘。「特に質の高い雇用という観点から、まずは国内の雇用率を向上させることは、いまの統治にとって極めて重要だ」と強調し、若者の就職率を上げることが先決で、その後、Kビザを導入した方がよいとの見方を示している。 胡氏はかつて上述の「環球時報」紙の編集長だったが、“古巣”の同紙とは真逆の主張を展開しているところに、今回のKビザ問題が若者を強く刺激し、かつての白紙運動のような展開になることを懸念しているとも受け止めることもできる。いずれにしても、Kビザ導入によって、就職難の若者が苦境を一層深くすることだけは確かだろう。
中国人の日本移住100万人に
このようななかで、日本に直接影響する可能性があるのが、就職難の中国を避けて、労働人口が減少しつつある日本に移住する中国人の増加であり、コロナ禍終息以降、年々増加している中国人留学生問題だろう。 これまで、すでに多く報道されているように、日本への中国人移住者と大学などへの中国人留学生が増加しているのは見逃せない問題だ。2026年までに在日中国人の数は100万人を超えると予想されている。いわゆる「潤日本」現象である。潤は中国語の発音で「RUN」なので、英語の「走る」とかけて、「日本に脱出する」という意味だ。 日本の大学に加え、専門学校や大学院、短大などに留学する中国人も増えており、昨年の留学生数は12万3485人で一昨年よりも7992人増えている。昨年の外国人留学生数の36.7%を中国人学生が占め、ネパール(20%)やベトナム(12%)などを大きく上回る最大の留学生グループとなっている。
厳しい大学入試や就職難で増え続ける中国人留学生
このところ、中国人留学生は東京大学や京都大学、早稲田大学、慶応大学、北海道大学や東北大学、名古屋大学、立命館大学などの有名私立・国立大学に殺到していると伝えられるが、それだけではなく地方の私立大学が国からの私学助成金を目当てにして、中国人留学生を多数入学させているとの報道もある。一部の難関大学を除いて、日本の大学は、中国人にとって入学のハードルは決して高くないともいえる。 中国人の学齢期の若者が日本を目指す背景には、中国の大学入試が近年、苛烈化する一方となっていることがあげられる。昨年6月7、8日両日に行われた「高考(大学入試)」には過去最高の1342万人が受験した。今年の受験者は昨年より約7万人減の1335万人だったが、それでもかなり莫大な人数といえる。小学校時代から朝7時から夜10時ごろまで毎日勉強してようやく合格すると言われるほどの過酷な受験戦争が行われている。 さらに過酷なのが「就職戦争」だ。中国は社会主義体制なのでほとんどの企業は国営で社員数も決まっているので、就職できない卒業生も出てくる。今年の若者(16〜24歳)の失業率は過去最悪の18.9%と、日本に比べると非常に高い数値を記録している。 中国では「就職ができれば、人生は安泰」というわけにはいかない。自動車業界の低迷や不動産バブルの崩壊による市場の急速な冷え込みなどで、企業ではリストラが相次いでいる。好調と言われるIT企業でも35歳を過ぎれば、会社から「独立して、自分の会社を立ち上げてみたら」との実質的肩叩きにあい、家族を抱えて路頭に迷うことも珍しくないと伝えられる。このように、中国では大学入試の過熱化や就職難、さらに経済不振によるリストラの増加などが表面化し、若者が将来を悲観せざるをえない状況が加速している。
少子化、労働力不足の日本がターゲットに
と、目を転じて、隣国の日本をみると、人口は年々減少し、少子化が進み、大学入試の受験生も少なくなっており、一流大学ですら、外国人留学生の誘致に力を入れている状態だ。 日本の企業は中国人でも大学を卒業すれば、日本の大卒者と同じ待遇で受け入れるケースが少なくない。それも中国人留学生が日本を目指す大きな理由となっている。中国人の親が日本でマンションを購入し、子どもを中学、高校から大学へと進学、日本の企業に就職させるケースも増えているといわれる。日本企業は解雇規制が強く働くため、雇用も極めて安定している。家族も呼びよせ、中国人が多く住む地区に住めば、中国で生活しているのと同じ環境だ。日本を目指す中国人留学生が今後も増え続けることは至極当然といえるのではないか。
相馬勝(そうま・まさる) 1956年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞社に入社後は主に外信部で中国報道に携わり、香港支局長も務めた。2010年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『習近平の「反日」作戦』『中国共産党に消された人々』(第8回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞)など。 デイリー新潮編集部
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