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ベトナムから来た技能実習生が福岡で孤立出産し、死産した子供の遺体を遺棄したとして刑事罰に問われた。 【写真で見る】夢を持って来日した留学生たち 日本だけで問題になる妊娠出産 支援活動に加わった日本語教師の高向有理さん(60)は、出産後まもない彼女が、病院ではなく警察署に留められている姿に衝撃を受け、さらなる悲劇を防ごうと、外国人向けのテキストを作成した。しかし孤立出産は日本人でも起きている。 その背景から見えたのは、女性の権利をおざなりにし、限定的にしか「性」を教えない日本の実情だった。 ■夢と希望を持って日本に来た人たち 福岡県の離島にオープンしたリゾートホテル。ここで働いているのは、ミャンマーから来た女性たちです。特定技能1号の在留資格で、調理や配膳などの仕事をしています。 彼女たちは、島の民家を改装した寮で生活しています。天候によっては船が出ないこともあるので、島に住むことも働く条件の一つです。 人手不足の日本で、条件にあう日本人は、なかなか応募がありません。 部屋の一角におかれた仏さま。ミャンマーは信仰が厚い仏教徒の国で、彼女たちは日本でもお祈りを欠かすことはありません。 ■アニメが大好き 日本はあこがれの国 首都ヤンゴンから来たテイさんは22歳。日本に働きに来るには、80万円ほど費用がかかりました。テイさんにとって日本は憧れの国でした。 ミャンマーから来たテイさん(22) 「私は子供の時からアニメが大好きだから。アニメを見て日本に来た。日本は本当にきれいなところね。だから、私行きたいと思って」 テイさんの妹もいま、大阪で働いています。 テイさん(22) 「私はミャンマーに日本レストランを開きたいというのが夢です。30歳くらいにミャンマーに帰って仕事をして結婚したい。子供は二人だけ欲しいです」 ■9人兄弟 病気の母に仕送りを 日本語を3年間学んでから来日したというイさんは24歳。携帯電話に入っている写真を見せてくれました。9人兄弟の8番目で大家族の中で育ちました。 ミャンマーから来たイさん(24) 「お金を稼いで家族を支えたいです。お母さんはいま病気になっていますので、お金いっぱい送金します。1ヶ月10万円くらい送ります」
イさん(24) 「自分のレストランをひらきたいです。できれば日本でひらきたいです。結婚したいけど難しいから、いま、ちゃんと考えています」 ■孤立出産した技能実習生が刑事罰に 福岡県に在留する外国人は2025年末で12万5501人でした。10年前の6万0417人と比べると、2倍以上に増えています。 こうした中、ベトナム人の技能実習生が孤立出産し、死産したこどもを遺棄したとして刑事罰に問われる事件が起きました。2024年、福岡市のアパートで孤立出産した20歳のベトナム人技能実習生は、死産した赤ちゃんをふたのついたゴミ箱の中に入れました。死体遺棄の罪に問われ、懲役1年6ヶ月執行猶予3年の有罪判決を受けました。「妊娠したら帰国させられる。とても怖くて誰にも相談できなかった」と話しています。実習生は支援集会で訴えました。 ベトナム人技能実習生(20) 「病院に行きたかったけど、いけなかった。裁判所の判決を受け入れることはできません。無実を証明できるまで訴え続けます」 ■日本語教師が外国人のためのテキスト作成 実習生の支援活動に加わった日本語教師の高向有理さんは、警察署に差し入れに行ったとき、事態を目の当たりにして衝撃を受けたといいます。 日本語教師 高向有理さん 「赤ちゃんを産んで死産した人が、普通の感覚で言うと保護されるべきだと思うんですけれども、逮捕されて、起訴されて、まだ産後すぐの時に拘束されているということを知って衝撃を受けました。誰にも助けを呼べずに一人で出産するというような、想像しただけでも壮絶な経験をしていますよね。本人も知っていたら病院に行ったんじゃないかなって」 高向さんは福岡市にある西日本短期大学で、留学生たちに日本語を教えています。高向さんが中心になって、日本に来る外国人が健康で安心して暮らすためのテキストを作りました。「日本語で学ぶライフプラン」です。 「日本で家族をつくる」という項目では、日本で妊娠した場合、どうすればよいのか。産むとき、そして産まないときはどんな方法があるのか。イラストを使って、分かりやすく説明しています。
■日本だけで問題になる妊娠出産 高向さんは、20代で英語を学ぶため、アメリカへ留学。その後、インドネシアで7年間生活した経験があります。 日本語教師 高向有理さん 「妊娠出産がこんなに留学とか仕事との障害になるようなことがインドネシアでもなかったし、アメリカでも留学生で出産している人がいましたから、障害になることはなかった。同級生も出産しましたし、子育ては大変ですけれど、それで在留のビザがどうなるかなんかは問題にならなかったと思うんですよね。それで悩んでいると聞いたことがないので。」 高向さんは妊娠出産が可能な年齢の女性たちが大勢来日しているのに、そこに目を向けない日本の姿勢に疑問を投げかけます。 日本語教師 高向有理さん 「働くとか勉強することだけする人、産まない単身者が日本に来ることが大前提ですよね。つまり『男性モデル』ですね。お金を稼いだりする男性がくる、女性でも産まない単身者が来る前提は、非常に不自然ですよね」 ■「妊娠したらやめてもらう」マタハラ横行 福岡市にある福岡出入国在留管理局には、多くの外国人が手続きで訪れています。ここで3か月に1回行われているのが、九州各県の自治体で外国人相談窓口を担当する人たちを集めた連絡会です。その会合で高向さんが講演することになりました。 日本語教師 高向有理さん 「孤立出産を少しでも防ぎたいという思いで、この教材開発、情報提供の活動を始めました。孤立出産は外国人だけではなくて、日本人にも、国籍関係なく起こっていることですし、技能実習生にも留学生にも、在留資格も関係なく起こりうる問題です」 2022年に行われた外国人技能実習機構による妊娠出産の実態調査では、「妊娠したらやめてもらう」という警告を受けたことがある人が、26・5%もいました。高向さんは、マタニティーハラスメントが横行していると指摘します。 そもそも基本的人権の一つとして、性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)があり、国連は権利を尊重することを提唱しています。具体的には、子供を持つか持たないか、子どもを産むならいつ何人産むかを自分で決められる権利です。しかし日本では、ほとんど認識されていません。 外国人の相談窓口では本人の意志を尊重して対応することが求められます。
グループワークでは、産むか産まないか、産むとしたら日本で産むのか、母国で産むのかを確認することなどが話し合われました。 ■夢を持って来日した留学生 西日本短期大学にネパールから留学しているパルさん22歳。ヒマラヤ山脈を望むリゾート都市、ポカラから来ました。アルバイトをしながら、福岡市内のアパートで暮らしています。国から持参したという大きな鍋で、チキンカレーを作りながら、話を聞きました。将来の夢はありますか? ネパールから留学 パルさん(22) 「10年くらい、日本で就職して働くつもりですけど、その後は故郷に帰って、自分の小さなお店を開きたいです。結婚はあと5年くらいしてから、27歳でしたい。たぶん、彼氏ができたら」 ■避妊方法も 実践的な性教育 パルさんが受けている妊娠出産についての授業を取材しました。 教えているのは、高向さんと一緒に、外国人のためのテキストを執筆した日本語教師の志田華奈子さんです。学んでいる留学生は、ネパールとベトナムから来た18才以上の男女です。年齢にあわせた実践的な性教育が行われていました。 日本語教師 志田華奈子さん 「『まだ子供を産みたくなかったら恋人と一緒によく避妊について話をしましょう』これはちょっと恥ずかしい、そんなこと言えないって、何も言わなかったら、後で困ることになります。『どんな避妊の方法がありますか』1つ目はコンドームを使います。これを使うのは男の人です。女の人が使うのはピルと緊急避妊薬」 日本と母国とでは用いられている避妊の方法が違い、また入手の仕方や金額も違うため、戸惑う留学生もいるということです。 ベトナムではコンドームは病院で配布されていて、無料です。 また経口避妊薬のピルも、薬局で千円程度で買えるそうです。産婦人科で処方してもらい、金額も3千円以上かかる日本とは、入手のしやすさが違います。 ■女性主体の避妊法が少ない日本 国連の調査によると、日本では、避妊している40%のうち、ほとんどが男性用コンドームを使用しています。(国連経済社会局2015年)
しかし、ベトナムでは子宮内に入れる器具「IUD」や経口避妊薬が多く使われ、ネパールでも手術や注射といった、女性が主体の避妊法の割合が大きくなっています。(国連経済社会局 ベトナム2020年調査/ネパール2022年調査) 日本では、経口避妊薬や緊急避妊薬も入手しにくい上に高額で、女性の権利を侵害していると、国連から改善を促されている状況なのです。 そして授業では、性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)についても教えています。自分が産むか、産まないかを決めることができる権利があること、そして、その意思決定に沿った対処方法も具体的に教えました。 日本語教師 志田華奈子さん 「では妊娠していることがわかったら、皆さんどこに行きますか?(病院に行きます)病院に行ったら必ず病院の先生は、産みますか?産みませんか?どっちですかと聞くよ」 授業を受けたパルさんは、「日本にきたばっかりの時はいろいろな嘘の情報を聞いて、妊娠したら国に帰れということが多いと聞いていました。私も信じていた。でも、もう困らないです。相談したり、医者に行ったらいい結果になると思いますから、もう安心です」と語りました。 ■日本で出産し仕事を続ける夫婦 鹿児島大学でひらかれたセミナー「移民女性の妊娠・出産」。技能実習生として来日し、日本で結婚、出産を経て、子供をもちながら働いている夫婦が登壇しました。 鹿児島県枕崎市の養豚場で働くベトナム人のイーフンさん(26)は、同じく実習生として鹿児島県にやってきたベトナム人のチンさん(28)と結婚、3年前に男の子を出産しました。妊娠を知ったときは、怖かったといいます。 ベトナムから来日 イーフンさん(26) 「妊娠した時は怖かったです。ベトナムに帰るか、仕事やめるか、どうするかなと思って。ベトナムの送り出し機関からは、妊娠するのはいけないと言われました」 イーフンさんは不安ながらも妊娠したことを職場に相談。その後、職場近くの産院で出産して、現在は息子を保育園に通わせながら、仕事を続けています。 イーフンさんが働く岩戸牧場では全従業員22人のうちベトナム人は7人で、外国人が貴重な働き手となっています。 イーフンさんから妊娠の報告を受けた岩戸牧場の宮路里佳子さんは、まずイーフンさんに「おめでとう」と祝福しました。
日本で出産後も働き続けることについて宮路さんは、「一緒の職場でずっと働いていてもらえるってすごく素晴らしいことだなと思って、何も拒否することはないなって思いました」と話しています。 イーフンさんが妊娠中は、同僚が重労働を代わってくれたり、助けてくれたといいます。現在は婦人科で経口避妊薬を処方してもらって服用しています。 ■”はどめ規定”で性教育が進まない日本 国連のユネスコ=教育科学文化機関は、科学的根拠に基づいて包括的な性教育を進めるようガイダンスを作っています。 2025年9月、東京駅に近い街頭で行われた集会。公益財団法人ジョイセフが主催した「SRHR for ALL!スタンディングアクション」です。「性と生殖に関する健康と権利」を尊重することを訴えて100人以上が集まりました。 NPO法人 ピルコン 染矢明日香さん 「忘れてはならないのが性教育です。性暴力や思いがけない妊娠の根本的な対策には包括的性教育の導入が不可欠です。にもかかわらず日本では長年、はどめ規定という壁によってこどもたちに必要な性の学びが制限されています」 はどめ規定とは、現在の学習指導要領では、「妊娠の経過を取り扱わない」と規定していて、「性交を教えない」限定的な内容になっています。国連女性差別撤廃委員会は2024年、日本政府に対し包括的性教育の実施を勧告しています。 包括的性教育とは、思春期前に生理や精通など身体の変化や妊娠の経過を教えるだけでなく、幼いころから他人に安易に触らせてはいけないプライベートゾーンを教えるなど、成長に合わせて段階的、実践的に進めるほか、性的同意をとることや、性にかかわらず平等な取り扱いをすることなど人権教育も含めて、広い範囲で性について学ぶものです。 集会では、10年に一度の学習指導要領の改訂が2027年に予定されており、いま子供の権利を守る性教育の実施を国に訴えるチャンスだとしました。 ■産婦人科医が進める包括的性教育 福岡県でも包括的性教育の実施を進める活動をしている人がいます。公立八女総合病院で産科部長を務める宮川三代子さん(51)です。医師として思春期のこどもたちと触れ合う中で、正しい性の知識が必要だと感じてきました。 大牟田市で2026年3月、医療関係者やこどもたちの相談員を対象にした性教育セミナーがひらかれ、宮川さんが講師を務めました。
産婦人科医 宮川三代子さん(51) 「SNS上で情報収集するから、どんどん妄想は妄想で広がり、本当の正しい情報じゃないところが入ってしまう」 性に関する情報があふれているいま、10代で性加害者として検挙される例も増えています。 宮川さんは、「10代のための『性と加害』を学ぶ本」(時事通信社)から、検挙された10代への聞き取り調査の結果を紹介しました。 産婦人科医 宮川三代子さん 「性加害者が最初にふれた性的な情報は6.5歳。アダルト動画とか、SNSでちょっとエッチな広告とかでてきますよね。フィルタリングをしたり色々対策をするけど、やっぱり目にしてしまうんですよね。見つけた時には、どうしてダメなのかを教えてあげる。本当のことじゃないことが書いてある、つくりものなんだよとか、ですね」 宮川さんは早い段階から年齢に応じた性教育が必要だと話します。その基本は、人権教育、その人らしさを尊重して大切にすることです。 グルーブワークでは、性別によって個人の可能性が制限されている現状を認識しました。 参加者「女のくせにってよくいわれません?男の子がおとなしいと男のくせにって」 参加者「家の中のことは女の子だけど、外のことは男性。九州に限られるかもしませんけど、男性が上座で、女性が下座というのは、ずっとあるなって話をしました」 宮川さんは、「現状を知らないと、その中にどっぷりはまっているとわからないですね。だからこうやって、こういうのもあるねって、ここ変えていきたいよねって思うのが大事かなと思っています」と話しました。参加した32歳の助産師は、3人の子供がいます。セミナーの感想です。 参加した助産師(32) 「性教育のスタートが日本は遅いんだろうなというのがあって、言うことが恥ずかしい、教えることも恥ずかしい、口に出してはいけないという暗黙の了解みたいなのがありますが、実際こどもたちから質問を受けたときには、必ず答えるようにしています。自分の身体は、自分で大事にしないといけないっていうことをを伝えるようにしています」
■その人が幸せになるための”性教育” 外国人のためのテキストを作った日本語教師の高向さん。就職活動を控えた短大生と学校近くのお寺に花見に出かけました。ネパールから来た短大生のスミトラさん(24)は、ホテルのフロントで仕事をしたいそうです。 ネパールから留学 スミトラさん(24) 「将来、長く日本で働いて、色々な経験を積みたいです」 高向さんは、若い人たちに幸せな人生を歩んでほしいと願っています。そのためには、性について幅広く、年齢に応じて教えることが不可欠です。 日本語教師 高向有理さん 「やはり自分を大切にする、自分の周りの人を大切にするということが根本にあるので、ただ、制度が活用できるとか、性教育に関していえば、避妊ができるとか、妊娠するかしないかとか、子供を持つか持たないかということを決めることだけではなくて、やっぱり、その決めた人が幸せであること、というのが一番大切なことだと思っています」
RKB毎日放送す。

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