Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/c0a2a14374ad7e8d938615bd86b7e260b10b7425
世界最小のトンボ、ハッチョウトンボの生息地として知られる和歌山県古座川町直見(ぬくみ)にある大谷湿田。例年5月下旬~6月上旬に羽化のピークを迎えるが、その姿が見当たらない。湿田を管理する町教育委員会によると、今年は雨が少なかったことなどが影響し、湿田の陸地化が進んだことが主な要因とみられるという。 【パンダ模様のカミキリ 黒と水色のコントラスト、和歌山県紀南の記事はこちら】 ハッチョウトンボの大きさは成虫で約2センチ。雄は赤色、雌は黄褐色と黒色のしま模様。ネパール、インドネシアなどの東南アジア諸国から南半球のオーストラリアにかけての広い範囲に分布し、日本は北限分布地となっている。 生息条件は、湿地性の低い草が生育する明るい湿原▽泥のある水深1~3センチの水辺が広がっている▽湧き水などで絶えず水が確保されている▽水質はやや酸性▽周辺の農地や人家から汚染水の流入がない▽周辺に豊かな自然が保全されている―など。 生息に適した湿地が宅地化などで少なくなったことから、全国的に数が減少。県は準絶滅危惧種に分類している。 大谷湿田では1992年、大量のハッチョウトンボが発見された。町は2001年、ハッチョウトンボを町の天然記念物に指定し、湿田(約1500平方メートル)を買い取って自然保護区にした。周囲に柵を設けたり、人が入れないよう網を設置してパトロールしたりなどし、保護をしながら一般の人が見学できる場所として守ってきた。 町教委によると、今年も5月上旬に複数の羽化を確認したが、その後、姿が見えなくなったという。陸地化していることから、湿田の隣にある水のたまった休耕田から水を供給しているが、土の中にしみこんでしまい、湿田に水がたまらない状態が続いている。 大谷湿田では現在、大型のトンボは多数見られるが、陸地化が進んだことで、道端に生える草が茂っている。周囲の休耕田や山はシカのすみかになっていて、湿田内には多数の足跡がみられる。 水辺の早期再生を 水生昆虫が専門の県立自然博物館(海南市)学芸員の神田雅治さんは、現在の大谷湿田の状況について「早急に手を打たなければ手遅れになる」と警鐘を鳴らす。「少ないとはいえ、まだハッチョウトンボが確認できるようであれば何とか持ち直せるはず。付近に小規模でも別の個体群がいれば、環境さえ戻れば個体数もより戻りやすい」と指摘する。 ハッチョウトンボは2年幼虫もいることから、今年の親が絶えても、来年に羽化する可能性があるとし、重機や手掘りで失われてしまった水辺を再生することを提案する。 神田さんは「何もせず保てる湿地もあるが、人の手が入らないと遷移が進んでいってしまう場所は、どんどん草刈りと堆積物の除去を進めるべきだ」と話した。
紀伊民報

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