Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/fc25fe2e9d3eb62805e3b292ac7fdd1af3e61904
人手不足が深刻な介護分野で、唯一の国家資格である「介護福祉士」。全国の養成施設では日本人学生が減り続け、2025年度は留学生数が逆転した。人材を確保しようと、国家試験に合格しなくても5年間は介護福祉士として登録できる特例措置が続いており、26年度末の期限を延長するかどうか、議論になっている。延長を主張する日本介護福祉士養成施設協会副会長の小笠原靖治さん(54)と、慎重な立場の福岡県介護福祉士会長の江口賀子(しげこ)さん(59)に、人材確保の在り方について聞いた。(酒匂純子) ■「お年寄りが大好き」ネパール出身の介護福祉士【写真】
日本で働きたい若者は「宝」 日本介護福祉士養成施設協会副会長 小笠原靖治さん
全国の養成施設で外国人が増えている。私が校長を務める福岡介護福祉専門学校(福岡市)でも、各学年定員40人のうち2年生27人、1年生31人が留学生。大半がネパール人だ。 今は全国的にもネパール人が多いが、いつまで続くか分からない。養成校としては新しい国を開拓し続ける必要がある。愛知県の社会福祉法人2団体と共に、モンゴルの若者が来日して介護福祉士を目指すルート作りを始めた。
国の経済が発展すると若者文化は変化し、就きたい仕事も変わってくる。そもそも介護は多くの若者が目指す仕事ではない。 ドイツや韓国、オーストラリアなどもアジアの介護人材を求め、取り合いになっている。日本は介護職の賃金が低い上に、円安で仕送りが目減りしている。在留のハードルも高い。
それでも日本を選ぶ理由は、文化が好き、安全、日本人が優しい、から。他国に比べて不利でも「日本で働きたい」と言ってくれる若者は「宝」だ。 そんな状況で今、さらにハードルを上げるかどうか、議論になっている。
現在は国家試験に合格しなくても、養成施設で学んだ人は5年間、介護福祉士として登録できる。この特例措置は26年度末に期限を迎えるが、このまま切れると現在の在留資格「介護」が得られなくなり、留学生は激減するだろう。国の審議会でも委員として延長を主張してきた。 日本語の細かい表現などで試験につまずく学生も、内容は十分理解している。実習や就労の現場でも高く評価されている。
制度を変えるべき時は、今ではない
働きながら勉強しやすいよう、試験を3分野に分けて不合格分野だけを改めて受験できる「パート合格」の制度も今年始まった。実際に合格しやすいか、まだ検証できる段階でもない。 介護福祉士の質を保つため、延長に反対する意見も理解できる。養成校としても、合格していない人が介護福祉士に登録できる状況が良いとは思っていない。ただ制度を変えるべき時は、今ではない。人材育成には時間がかかる。10年、20年後に壊滅的な状況になり、後悔するようなことになってはいけない。
日本人の入学はかつて年2万人いたが、3千人にまで減った。留学生が減れば養成校がゼロの県も出て、人材輩出の地域格差が広がってしまう。介護は誇りある素晴らしい仕事であり、国籍にかかわらずしっかり養成していく必要がある。
専門性、質の確保が必要だ 福岡県介護福祉士会長 江口賀子さん
介護人材が足りないと言われるが、実際は介護職の数は増加や横ばいで推移している。この人口減の時代に、他産業も人手が不足している状況を考えると、介護業界はむしろ「増えている」と言っていいのでは、という感覚がある。 ただ高齢化によって介護の需要が高まり、人手が追い付かない。大手企業も参入し、施設も増えている。一つ一つの現場を見ると常に人が足りない。
介護職が高齢化している問題もある。若い世代が減っているのは危機的だ。少子化で数が少ない上、大学進学率が伸びて一般企業などへの就職希望者が増えた。さらに同じ「介護」に関する仕事でも、障害者施設や自治体など専門職が求められる職場が広がり、高齢者介護の現場を目指す人が減っているようだ。 もはや外国人材は欠かせないと実感している。私が准教授を務める西九州大(佐賀県神埼市)でも、現在の1年生から留学生たちを受け入れた。 国家試験に合格しなくても5年間は介護福祉士として登録できる特例措置について、日本介護福祉士会は延長に反対している。専門職としての質を確保するため、国家資格の「統一化」が必要だ。国家試験に合格した人が国家資格を取得できる、ということだ。
17年度から養成校を卒業した人も国家試験の合格が必須となったが、実際は当初から特例措置がずるずる続き、合格しなくても介護福祉士になれる状況は変わっていない。国家資格なのに「みんなこのレベルの知識を持っていますよ」と明確に言えない現状は歯がゆい。特例措置は外国人材を想定していたのだろうが、不合格の日本人が助けられている現実もある。 養成校側の「特例措置がなくなると留学生が来なくなる」という危機感も理解でき、難しい問題だ。介護福祉士会としては外国人の受験者が合格できるよう、試験対策の講座などに取り組んでいる。しっかり支援していきたい。
より福祉が必要な社会になっている。介護だけでなくひきこもりや生活困窮など、複合的な課題を抱える人や家族が目立つ。介護職も専門性が問われている。 介護はその人の希望する生活を支えるクリエーティブ(創造的)な仕事だ。多くの人に面白さを知ってもらいたい。職員の処遇改善は重要だ。介護報酬の引き上げや職員を大切にする事業所経営など、課題はたくさんある。
西日本新聞


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