2025年10月31日金曜日

参政党の「日本人ファースト」が時代からズレていると思う、これだけの理由!

 Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e048886050980b59a4576ddb066537d83ba4d72b

山田順作家、ジャーナリスト
「日本人ファースト」で大躍進。参政党の神谷宗幣代表(写真:ロイター/アフロ)

■「排外主義」という非難に対する神谷氏の見解

 参政党の神谷宗幣代表は、党のスローガン「日本人ファースト」が「排外主義」と非難されたことがよほど意に反したのか、8月28日に配信されたメディアアーティストの落合陽一氏のユーチューブ番組で、以下のように述べた。

「(日本は)移民が作った国、混血でできた国だ。外国の方を排斥しようではなく、急激に入れすぎると米国や欧州みたいな摩擦が生じる」

「ドイツは(外国人比率が)20%を超えて大変混乱している。緩やかに外国人を受け入れていくのは10%以下ではないか、との概算をわれわれはしている」

(以上、9月2日産経新聞記事「日本は移民国家」参政党・神谷宗幣氏、将来的な外国人受け入れ比に言及「上限は10%」より)

 なるほど、神谷氏の言わんとするところはわかる。しかし、参政党が問題視している外国人の問題は、外国人そのものが原因で起こったのではない。日本自身(=日本政府)が招いた問題である。

 また、10%以下を「それくらいまでなら受け入れていい」とすると、神谷氏の認識は完全にズレている。なにか認識違いをしていると思わざるを得ない。

■外国人が日本人より優遇されているという不満

 「日本人ファースト」がここまで支持されたのは、外国人に比べて日本人が冷遇されている。外国人が優遇されすぎているという、国民の不満があったからだろう。それが参政党を大躍進させた。

 では、その不満となんだろうか?

 具体的に見ていくと、まずは、外国人でも国民健保に簡単に加入でき、高額療養費制度を受けられるという「医療タダ乗り問題」、簡単に日本でクルマの運転ができる「外免切り替え問題」などが挙げられる。

 続いて、中国人富裕層が日本の不動産を買い漁っているという問題。また、一般層まで日本居住を目的にやって来て、中国人居住者が増えているのが不愉快だという問題もある。

 さらに、外国人が日本人の生活を脅かし、街の治安が悪化しているという問題。これはとくに「川口クルド人問題」として、たびたびSNSで取り上げられ、マスメディアも問題視するようになった。

 もうひとつ、外国人のインバウンドの急増で、主に観光地で起こっているオーバーツーリズムという問題も、「日本人ファースト」に多くの日本人が共感した原因だ。

■日本の外国人受け入れ制度に問題があった

 しかし、これらの問題のほとんどは、外国人に問題があるから起こったのではない。日本政府の外国人に対する曖昧な政策と姿勢が問題を引き起こしている。

 たとえば、「90日の滞在で高額療養費制度を受けられる」という問題は、外国人の加入に対する制度の仕組みが安易すぎるから起こった。したがって、この10月から加入要件が厳格化されることになった。同じく、「外免切り替え問題」も、制度が厳格化されることになった。

 最悪とも言うべきなのは、中国人の不動産買い漁り、日本移住を招いている原因である「経営管理ビザ」取得のハードルが諸外国に比べて著しく低いことだ。

 諸外国の投資ビザに匹敵する「管理経営ビザ」は、なんと資本金500万円で取得できる。これに気づいた政府は、早急に3000万円以上に引き上げるというが、それでもまだ安すぎるのではないか。

 クルド人問題は、明らかに出稼ぎ目的なのに難民認定申請ができ、何度でも仮放免が許されたから起きた。はなから難民申請を却下すべきだった。

 ただ、この3月、トルコでは政府との間で武装闘争を繰り返してきた「クルド労働者党」(PKK)が停戦に合意したので、クルド人はもう難民ではない。

■政府の失政による円安がオーバーツーリズムを招いた

 

 こうして残ったのが、外国人のインバウンドによるオーバーツーリズム問題だが、これは空前の円安が招いたと言っていい。なにもかも“安いニッポン”は、外国人にとってどんなに魅力的か。東洋の旧富裕国の食と文化を以前の半値以下で満喫できるのだから、外国人が押し寄せないわけがない。

 赤字国債を際限なく発行し、そのために金利をゼロにせざるを得なくなり、円という通貨の価値を大きく毀損した。その結果の円安、インバウンドの激増である。

 マナーを守らない外国人がどっとやって来ても、自ら招いたのだから文句は言えないだろう。

 

 こうしたことをかえりみれば、「日本人ファースト」を言うのは遅すぎたと言える。外国人労働者を「労働移民」として正式に受け入れる。そのための制度をきちんとつくればよかったのである。参政党が問題にすべきは、外国人ではなく、これまでの日本政府のいい加減な政策だ。

 しかし、もう手遅れとも言える。なぜなら、今後、外国人労働者は来ないからだ。この点が、参政党の認識のなさ、ズレている点である。

■日本に行くより韓国、台湾に行くほうが稼げる

 いまさら「日本人ファースト」などと訴えてみても、観光客は来ても、労働移民などやって来ない。だから、「10%以下」などとあえて言うような話ではない。

 日本はすでに先進国ではない。海外から出稼ぎにやって来て、稼げる国ではなくなっている。

 日本の外国人労働者数国籍別ランキング(厚生労働省「外国人雇用状況」2023年10月時点)を見ると、次のような順位になっている。

1位:ベトナム 570,708人

2位:中国 408,805人

3位:フィリピン 245,565人

4位:ネパール 187,657人

5位:インドネシア 169,539人

 かつて1位だった中国は大幅に減り、ベトナムが1位になっている。これは、中国の賃金が上昇し日本の賃金に魅力がなくなったからだ。ベトナムはまだ最低賃金が低いので、日本の賃金の優位性はあるが、最近は日本より台湾、韓国を選ぶベトナム人が多い。

 なぜなら、台湾、韓国のほうが、時給が高いからだ。ちなみに、日本より韓国のほうが日本円換算で1500円を超えていて、日本の約1000円に比べて500円は高い。

■フィリピンの出稼ぎ労働者はサウジアラビアを目指す

 

 出稼ぎ労働者を送り出す国の人間にとって、最大のファクターはいくら稼げるかである。この点から見ると、日本の魅力、ランキングは落ちている。とくに円安が進んだここ2、3年で急落している。

 たとえば、前記ランキングで3位のフィリピンは、アジア最大の出稼ぎ労働者輸出国で、かつては日本に大量の出稼ぎ労働者を送り出したが、いま、その主な行き先は、サウジアラビア、UAE、クウェートなどの中東の富裕国である。日本はかろうじてトップ10に入るぐらいまで、順位を落としている。

 サウジアラビアに行けば、家事手伝い、看護、介護、建設などに従事しているのは、ほとんどがフィリピン人だ。

 4位のネパールは、ベトナム同様、近年、日本に来る労働者が多くなったが、日本より、サウジアラビア、UAE、シンガポール、マレーシア、オーストラリアを目指す人間のほうが多い。5位のインドネシアも同じだ。

 日本に出稼ぎに来るのは、昔から日本に親和性がある東南アジア諸国の人々だったが、もうベトナムやフィリピンはピークアウトし、残るのは東南アジアの最貧国、ミャンマー、ラオス、カンボジアぐらいである。

 

■「日本人ファースト」より「人間ファースト」

 こうして見てくれば、参政党の「日本人ファースト」は、じきに意味をなくすだろう。来てくれと言っても来てくれない、そういう国に日本がなってしまったからだ。

 こうなると、外国人の人権を守るという“大義”で活躍するリベラル弁護士もおとなしくなる。参政党の“敵”は自然にいなくなる。もとより、外国人労働者そのものが減る。

 ただし、今後は強敵が現れる。生成 AIの進歩は凄まじく、そう遠くない将来、人間と同等以上の能力をもつAGI(汎用人工知能)が出現するからだ。人間同様のタスクをこなすヒューマノイドも出現する。

 すでに中国では、完全ロボット工場も稼働している。時代は「AIファースト」なのである。

 こうなると、「日本人ファースト」などと言ってはいられない。スローガン自体が時代に合わなくなる。言うべきは「人間ファースト」ではなかろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿