2025年10月31日金曜日

無政府状態で混乱 ネパール危機 怒りの根源は「政府の汚職」しかし、現地と繋いで聞こえた本音とは?

 Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/505103dd80df8e4da780ef6771265c0e9d7d7b0d

堀潤ジャーナリスト
ネパールの若者やジャーナリストたちに現地の様子を直接聞かせてもらった 8bitNewsより

 ネパールで政治の混乱が深まっている。数十年にわたる汚職と経済低迷に市民の不満が爆発し、政府がSNSを遮断したことをきっかけにZ世代の抗議運動が拡大。首都カトマンズを中心に混乱が広がり、11日までに死者31人、負傷者1000人以上が確認されている。

 市民の怒りの根源は「政府の汚職」だ。与党政治家らは企業に有利な政策変更や大規模取引への関与、人身売買にまで関わっているとの告発が相次ぐ。若者たちは「大きな要求ではない。ただ汚職のない国と経済の安定がほしい」と訴える。

 そうした中、私は、現地の若者たちに直接インタビューした。「今は抗議を一刻も早く終息させ、平和を望みたい」メディアの報道だけでは伝わってこない様々な不安や本音に触れた。

 彼らは、日本に対しても特別な思いがあり、そしてSOSを発信していた。12分余りの動画にまとめたので、ぜひ見てもらいたい。


腐敗に覆われた政治

 カトマンズ在住のジャーナリスト、ミトラ・ボラルさんは「どれだけ政権が交代しても、同じ指導者が権力を握り、腐敗で私腹を肥やしてきた」と指摘する。企業優遇の政策改変や大規模取引での不正、人身売買にまで関与が疑われ、政治の隅々まで腐敗が染み込んでいるという。


 さらに政府が「フェイクニュース拡散防止」を理由にSNSを遮断したことは、人々の生活を直撃。「約1,000万人の海外在住ネパール人にとってSNSは命綱。遮断は言論の自由を奪う行為」と批判する。

◆将来を奪われた若者たち

 22歳の大学生で映画監督を志すソウマ・ツァヴォダリさんは、突然の学業中断に直面している。「未来がどうなるのか想像もできない。積み重ねてきた努力が一瞬で失われた」と語る。


 「私たち“ジェンジ”世代は良い未来を願って努力してきたのに、すべてを失った。情報の洪水に押し潰され、多くの若者が精神的に追い詰められている」。ソウマさんは、特に障害者が孤立し、生活すら成り立たなくなっている現状を訴え、「経済的な支援だけでなく、心理的な支えも必要だ」と国際社会に呼びかける。

◆パラスポーツアスリートの願い

 「私は『パラファイター』だ」。28歳のパラスポーツ選手ラメシュ・カトリさんは、自ら立ち上げたYouTubeチャンネルで障害者の声を発信している。
 抗議について「報道ではSNS禁止への反発とされているが、核心は『汚職への抗議』だ」と強調。警察の発砲で初日に17人が死亡し、国が一気に不安定化した。「たった2日で国が何百年も後退したように感じる」と嘆く。

 

 同時に「障害者も平等に生きたい。特にスポーツの分野で健常者と同じ機会を持ちたい」と訴える。2016年には日本でパラ水泳のトレーニングを受けた経験もあり、「日本の人々に感謝している。どうかパラスポーツや障害者を支援してほしい」と語った。特に子どもたちへの支援の必要性を繰り返し訴える。

◆共通する願いは「平和と腐敗のない社会」

 3人の声に共通するのは、「平和」と「汚職のない社会」への切実な願いだ。市民が求めるのは決して大きな要求ではない。しかし現実には、命を奪われ、未来を奪われ、日常すら奪われている。

 

 混乱の渦中にいる市民たちは今、世界に向けて声をあげている。「私たちを忘れないでほしい。ともに自由と民主主義を守ってほしい」――その願いは、日本を含む国際社会に届くべき切実なSOSだ。

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