Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/afa8818009d3d917a7d0e4c8bfb64e1dd39b2140
「大阪・関西万博」の閉会まで、約1カ月ほどとなった。 始まる前は地元・関西でも盛り上がりに欠け、その成否が心配されていたのだが、8月11日には入場券の販売枚数が運営収支の損益分岐点となる1800万枚を超え、黒字のめどがついた。赤字分の補填についてはなし崩し的に国の税金が投入される恐れがあったことから、万博に興味がない層や開催に反対だった人たちも一安心といったところか。 振り返るとさまざまな出来事があった万博。 開幕日の4月13日には多くの入場者が利用する東ゲートでスマホがつながりにくいという状況が発生。入場の際に必要な入場チケットのQRコードの表示に時間がかかり、スムーズに入場できないという事象が起こった。 これはスポーツ興行で多くのファンが集まり、みんなが一斉にスマホをいじった際などに起こる通信障害と同様の状態。多くの入場者に来てもらいたいのにそれをさばくだけの通信インフラが用意されていなかったという事態に先行きの不安さを感じさせたが、QRコードを事前にプリントアウトするかスクリーンショットに撮っておくことをアナウンス、そして各通信キャリアなどに携帯通信環境強化の協力要請を行い、翌日には移動型基地局が用意されるなど、迅速な対応で事なきを得た。 5月には会場内でシオユスリカという蚊に似た虫が大量発生。人を刺したり、血を吸ったりという類の虫ではないものの、正直あまり気持ちのいいものではない。ただでさえ会場内の飲食物は高額なのに、その食べ物に群がられたら…と心配の種がまた一つ増えた格好となった。 このシオユスリカは淡水と海水が混ざるエリアに生息する特性があり、大阪湾内の埋め立て地・夢洲は格好の住みかだった。こちらについては専門家や環境省に相談、殺虫剤の大手メーカーなどに協力を要請し、一時は収まったものの完全に駆除することはできず、一部ではまだ発生している。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」を理念に掲げ、テーマ事業の中には「宇宙・海洋・大地に宿るあらゆるいのちのつながりを感じ、共に守り育てる」という項目もあるので、やむなしと言えばやむなしか…。
その後も各国のパビリオンの工事費未払い問題が発覚するなどネガティブな話題もあったが、7月19日に唯一残っていたネパール館がオープン。開幕98日目にしてすべてのパビリオンが出そろった。 また万博といえば、会場内は禁煙のうえ喫煙所が用意されず、喫煙者は東ゲート外にある東ゲート施設東棟と西棟まで出向かなければ喫煙ができなかった。ところが関係者が隠れてたばこを吸うケースが発覚したことや、かねてからあった入場者からの「喫煙所が遠くて不便」という言葉に応える形で6月28日から会場内のリング北側と、EXPOメッセの南側に喫煙所を新たに設けた。 この判断については通信障害の際に移動型基地局を用意したのと同様、柔軟な判断ではあったのだが、いかんせん急な設置ということもあり、ボックス型ではなく外側を壁で囲っただけのいわゆる「青空喫煙所」。これでは猛暑の炎天下の中、喫煙する者にとっては酷な環境だと言える。加えて、国際的な催しであり、来場者や各国パビリオン関係者には多くの外国人が含まれている。屋外喫煙が一般的な彼らにとっても当初の会場内全面禁煙は不便であったはずだ。そもそも多様性を訴えるなら、もう少し喫煙者に対しても配慮した喫煙所の設置や情報の共有といった基本的なことは今後のイベント会場などでも求められるべきではないか。 そして万博中の極めつけのエピソードといえば、やはり8月13日に大阪メトロ中央線が電気系統のトラブルにより、21時30分から全線で運転を見合わせ、翌日の5時25分まで運転を再開できなかったことか。一時は来場者、スタッフや関係者を含む、約3万人が帰宅困難者に。結局、約1万1000人が翌朝まで会場内にとどまることとなったのだが、各パビリオンが万博協会の要請、もしくは自発的な判断で施設を開放し、帰宅困難者を収容。猛暑の中ということもあり、36人が頭痛や体のしびれなどを訴えて救急搬送されたが、大きな被害もなく事なきを得た格好となった。 ここで挙げたさまざまなトラブルに対し、運営側は迅速に対応したものの、よく考えるとどれも事前に察知できたものでもある。地下鉄の問題は一見、万博側は被害者にも見えるが、シャトルバス専用の西ゲートは稼働しており、そこにバスやタクシーといった車両を集めるといった策もあったはず。今回の万博は今後、大規模イベントを開催する際の大きな教訓となったのではないだろうか。


0 件のコメント:
コメントを投稿