Source:https://www.asahi.com/withplanet/article/15614384
Googleニュースより
障害の有無にかかわらずパートナーと一緒に暮らしたい。ネパールの障害者施設が、差別や偏見を超えてその願いをかなえる取り組みをしています。現地で取材しました。

障害の有無にかかわらず好きな人と結ばれて、一緒に暮らしたい――。障害者への社会的な偏見が根強く、障害者のカップルが一緒に暮らすことが難しいネパールで、こんな願いをかなえようとする取り組みが進められている。首都カトマンズで障害者たちが共同生活する施設に、パートナー用の個室を新設するプロジェクトを、日本のNPOなどが支援して進めている。現地で取材をした。
根強い障害者への偏見

カトマンズ中心部からバイクで20分ほど。民家や商店が立ち並ぶ地域の一角に、「タラケシュワール障害者施設」はある。

訪れたのは、1月下旬の朝食時。入所者らが銀色の皿に米やカレー、おかずを載せて、中庭で食べていた。声を掛けるとみなほほえんで、「ナマステ」と胸の前で手を合わせた。
ここで暮らすのは主に身体障害がある男女32人。男女別の相部屋にはベッドが並び、洋服や日用品が脇に重ねて置かれていた。一人ずつの仕切りなどはない。

この施設ができた約10年前から食費や医療費の援助などで支援を続けているのが、NPO「ルンタプロジェクト」の中原一博代表だ。インドやネパールで、40年間にわたって人道支援活動に取り組み、HIV陽性者の支援や、セックスワーカーとして人身売買された被害者の救出など様々な活動をしてきた。

ネパールの障害者支援に携わるのは、2015年のネパール大地震の後から。中原さんは「ネパールでは、『障害者なのは前世での悪業の結果』などと見なされることが多く、社会的な偏見が根強い」と話す。実際、入所者には学校や地域でいじめにあって、逃げてきた人も多いという。
政府の支援も手薄で、障害者登録をすると、月々一定額が支給される仕組みはあるものの、その額が少ないほか、出身地の役所でしかできないなど手続きが煩雑で、実際に申し込む人はほとんどいないという。民間の保険も、障害があることを理由に加入を断られることが多い。
結婚で、「支え合う」存在に
ここに暮らす入所者たちは、衣食を共にしながら、日中はフェルト加工品の作業をしてその売り上げを運営資金に回す。けがをしたり病気になったりすれば施設側が病院に連れて行く。

多くの入所者は「仲間と一緒に暮らせて楽しい」「設備が整っていて暮らしやすい」と話すが、次第に入所者の間で、パートナーと一緒に暮らしたいという声が上がり始めた。
当初は施設の裏手にバラックでおのおの囲いを作って暮らすカップルもいたが、雨が降ったら床は泥まみれ、暑さや寒さも厳しかった。そこで、パートナーが一緒に住める個室を作ろうというプロジェクトが始まった。

施設の創設者で自身も障害者である、チャンドラ・バハドゥ・カトゥリさん(38)は、エベレスト山近くの山岳部出身。3歳のころに崖から転落してけがをして以来車いす生活だが、結婚して3人の子どもがいる。「結婚したら、障害があっても支え合えて、困難も乗り越えていける」とほほえむ。

施設では、個室が完成したら入居予定だというカップルが10組いる。
その一人のアンブット・タマンさん(35)は、施設で料理を担当していたソリダさん(28)と知り合って結婚。2人で寄り添ってフェルトの作業をしながら「とってもうれしい」とはにかんだ。
SNSを通じて施設外の人と知り合って結婚する人もいて、ゴレ・タマンさん(40)はその一人。別の施設にいたシルジャナさん(38)とSNSを通じて知り合い、結婚を機に一緒の施設で暮らし始めた。「一緒に住めるようになるのはとても良いこと。多くの施設があるが、ここは使いやすいトイレがあって人間らしい生活が送れる」と話す。

クラウドファンディングで資金調達へ
個室は現在外枠の工事が進む。建築家である中原さんは、取材中も施工業者に「ここのスロープは高すぎないか」「玄関上の屋根には雨どいはつけるのか」と入所者が利用しやすくなるよう、確認に余念がなかった。
工事経費は約500万円で、そのうち250万円を施設が自力でまかなうがそれでは足りず、諸経費を含めた300万円はクラウドファンディングで協力を呼びかけている。寄付はクラウドファンディングサイトで2月27日まで受け付けている。
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