Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/258d3b88e489ce1c469a5665fa1f9cae18f57917
CREA WEBでは「猫」特集が今年も好評公開中です。今回は、猫に負けず劣らず愛らしい動物の親子に会いに、多摩動物公園にお邪魔しました。前後篇あわせて46枚の撮り下ろし写真とともに、ぜひお楽しみください。 【画像】お母さんの周りを、元気に動き回るデコポン。 2024年、東京都多摩動物公園では新しい命がさまざまに誕生しました。4月生まれのアムールトラ・フタバ(オス)、9月生まれのインドサイ・デコポン(メス)です。同年7月には、アジアスイギュウのさち(メス)も誕生し、3頭ともにすくすくと成長しています。 CREA WEBでは12月下旬、多摩動物公園へ伺い、アムールトラ、インドサイ、アジアスイギュウの親子を取材しました。後篇では、インドサイとアジアスイギュウの親子についてレポートします。
50年ぶりのインドサイの誕生
インドサイの誕生は多摩動物公園にとって1973年以来、50年ぶりのこと。このことからも繁殖の難しさがよくわかります。 2頭の繁殖は同園と神奈川県横浜市立金沢動物園で行われている共同の繁殖計画によるもので、お母さんの「ゴポン」はアメリカのサンディエゴ動物園で生まれ、移動した金沢動物園から来園。お父さんの「ビクラム」は2001年にネパールで保護されたのちに飼育され、来園した個体。小さいころ、トラに襲われた傷が今も残っているそうです。 前篇に引き続き、飼育展示課の井上邦雄さんに、親子についてのお話を伺いました。 「繁殖は最初から最後まで全て大変でした。というのは、ゴポンとビクラムの相性がいいかどうかは、会わせてみるまでわからないからです。相性が悪い場合、発情期の同居で闘争になる心配もありますし、発情期に同居できたとしても、それが確実に繁殖行動につながるかはわかりません」 「慎重に計画を立てて発情時の同居の回数を重ねる中、出産経験のあるゴポンのリードもあって、繁殖経験のないビクラムも同居に少しずつ慣れていきました。さらに繁殖行動も出てきて、1年目の最後にマウント行動が。そのときは交尾にまでいたりませんでしたし、発情期の同居のタイミングを工夫した2年目も進展しませんでした。そこから、ゴポンの発情のタイミングで、ゴポンが普段出ている運動場へビクラムを入れて匂いで繁殖行動を促したところ、ようやく交尾にいたりました」 繁殖行動にいたるまでの難しさもさることながら、460〜496日というインドサイの長い妊娠期間にも驚きます。 「日々の健康をチェックするトレーニングを通して飼育係との信頼関係を築いて、ゴポンの各部位を観察できるようにしていました。妊娠初期は体形にあまり変化がないので、妊娠しているかの判断が難しかったですね。ただ、妊娠すると採食量が増加し、糞量も増えるので、その変化を観察しながら妊娠継続のケアを続けました。夏が暑かったこともあって、発情が来ていないのでは? という懸念もありましたが、最終的に岐阜大学等との共同研究で糞中の性ホルモン値を測定したほか、一定期間、発情が来なかったことによって妊娠が確実になりました」 インドサイは国内で4園7頭しか見られない貴重な動物。アムールトラ同様、絶滅危惧種です。野生ではスポーツ・ハンティングや密猟によって、一時期、数百頭まで減少したものの、現在は現地での地道な保護活動が実を結んで回復傾向にあるそうですが、開発などによって生息地がなくなるという環境問題にも直面しています。
昨年夏に誕生した、アジアスイギュウの「さち」
多摩動物公園では昨年7月、アジアスイギュウも誕生しました。 2021年に沖縄県竹富町から来園したお母さんの「まる」とお父さんの「幸吉」の間に生まれた子どもは、「さち」(メス)と名付けられました。 人の少ない午前中、放飼場を覗くと、日の当たる場所で寄り添って寝ている母子の姿が。小声で会話するものの、お母さんのまるにはしっかり聞こえているよう。頭を起こし、私たちのほうへ視線を向けて注視していましたが、安全と判断したのか、再び横になります。 お母さんのまるには大きな2本の角がありますが、さちの頭にもすでに角のような小さな突起が。現時点では毛の色や毛並みも大人とは異なるさちが、今後どんなふうに成長していくのか。また足を運んで、大人になる姿を見たいという気持ちが強くなりました。 動物園は、野生動物を近くで観察できる貴重な場所です。訪れる際は、どんなことに気をつければいいのでしょうか。多摩動物公園の教育普及係の方に伺いました。 「皆さんで利用いただく施設なので、いくつか禁止事項があります。とくに、飼育動物に向けてのフラッシュ撮影は禁止ですし、動物への病気の感染を防ぐために、ペットと一緒の入園はできません。動物たちが気持ちよく暮らせるように観覧していただきたいと思います」 基本的なマナーを守って、動物たちへのリスペクトや感謝を忘れずに観察したいものですね。 今回、アムールトラ、インドサイ、アジアスイギュウを中心に取材しましたが、ひとつの種を数時間じっくり観察することによって、新たな発見がたくさんありました。また、土日は混雑している多摩動物公園ですが、冬の平日、さらに午前中ということもあってか、来園者も多くなく、動物たちもまったりと各々のルーティンを行っているのが印象的でした。 動物園で見られることで身近に感じる野生動物ですが、生息地ではさまざまな問題も。動物たちの美しい姿を見ながら、自然や環境などについて自分なりに考えてみてもいいかもしれません。 多摩動物公園
高本亜紀
0 件のコメント:
コメントを投稿