Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/bcf60dd287be8d3f7e1926b01de35e19abac53e6
去年10月、スイスのジュネーブで8年ぶりに開かれた女性差別撤廃条約の実施状況を審査する国連の委員会。 【映像】「皇室典範の改正」は目立たぬよう “配慮”されていた?(実際のレポート) 同性愛婚を認めることや選択的夫婦別姓の導入など、多くのトピックと共に日本が指摘を受けたのが「男系男子」のみを皇位継承者と規定する皇室典範の改定だった。 これに対し林官房長官は「皇位につく資格は基本的人権に含まれていないことから、皇室典範において皇位継承資格が男系男子に限定されていることは、女子差別撤廃条約第1条の女子に対する差別には該当しない旨、我が国の立場を表明するとともに強い遺憾の意を伝達した」と述べた。 勧告直後から度重なる削除要請を行ったにもかかわらず、削除が行われなかったため、日本政府は1月に異例の対抗措置を発表した。 外務省は、女性差別撤廃委員会の事務を担う国連の組織に支払っている任意拠出金の使途から委員会を除外すると1月27日に伝達したとしている。 毎年の拠出金は2000万円から3000万円。拠出金の使途から除外することに加え、委員会のメンバーを日本に招いて意見交換をするプログラムも取りやめるという。 こうした政府の異例の対応に、SNS上では賛成の声も上がる一方、疑問の声も上がった。 「女性差別撤廃のために金を出したくないってさすがにめちゃくちゃでは」 「意見が気に食わないなら声明を出せばいいだけ」
「委員の訪日見送りも撤回してほしい」
今回、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で包括的性教育の公教育での導入や緊急避妊薬へのアクセス改善などを委員たちに訴えた「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子さんも衝撃を受けたうちの一人だ。 「自分たちが望むような形でない勧告が出たら、拠出金の使途として出さないと反応するというのは、そういう勧告を出すという仕組み自体が壊れてしまうような判断だと思い衝撃が大きかった」(福田さん、以下同) 福田さんが危惧するのは、拠出金のことだけではない。 「委員の訪日も見送られているが、実際に来ていただいてどういう状況か見てもらうのはすごく大切なことだったと思う。見送りも撤回してほしい」 こうした中、福田さんらは、今月3日から「日本政府は女性差別撤廃委員会に真摯に向き合ってください!」とするオンライン署名を開始。7日10時時点で2万人を超える署名が集まっている。 「国際的なレピュテーション(評判)という意味でも『日本もそうなっちゃったんだね』というのは残念だと思うし、今ならまだ撤回とか引き返せるかもしれない。ただ責めるだけじゃなくて、より良い方向に向かってほしいっていう願いを込めて」
政府の考えが浮き彫りに
今回の政府の対応について政治学者の佐藤信氏は「やはり異例な対応だと思う。今回、いくつも勧告がある中で皇位継承に関する部分は極めてマイナーな部分だ。にもかかわらず、これを取り上げて全体の勧告を出している委員会に対しての拠出を問題視した。どれだけこれが重要な問題と政府が考えたかが浮き彫りになっているようだ」と指摘。
「受け入れられない部分があってもよい」
女性差別撤廃委員会からの「勧告」とはどのようなものなのか? 佐藤氏は「こういった機関は必ずしもこれだけではない。子供の権利条約とかもそうだが、女性の権利だったりとか、国際的にみんなが条約を結んで『こういう風に進めていきましょう』となったものについてモニタリングする形で国際機関に見てもらい、状況を報告する。それに対して『ここまではうまくできましたね。もうちょっとここは努力必要ですよ』などと勧告を出してもらって、それに対して応えるというやり取りを続ける仕組みがある」と解説。 また、委員会では以前勧告を受けていた点に対する政府による報告に加えて、NGOやNPOなどの団体から意見書が出されるという。 この点について佐藤氏は「例えば慰安婦の問題であったり男女の所得の格差の問題だったり各団体が問題視している点について意見書を出してくる状況。こういった意見書をたくさん見た中で、全体として『今、日本はこういう状況ですね。これくらいは必要ですね』と勧告を出すスキームになっている」と説明した。 皇位継承については「ヒアリングの段階で日本政府も働きかけをしていて、委員会の中でも除外してくださいと言っている。今回は日本政府、外務省などから見て、コミュニケーションがうまくいかなかった。何回も筋を通したつもりで説明をしたのに、聞いてもらえなかったという信頼関係が破綻した部分も大きいと感じた」と述べた。 なぜ、コミュニケーションがうまくいかなかったのだろうか? 佐藤氏は「憶測でしかないが日本政府は、そもそも皇位継承の問題は『女性の差別撤廃の話ではない』という立場を取っている。だが、委員の側はそうではなかったのではないか。その背景には、例えば委員長はスペインの方、日本の説明を担当してるのはネパールの方。スペインは次の王位継承権を持っているのは女性であり、ネパールも20年ぐらい前に君主制が廃止された。そういう方々から見て、男女平等のトレンドの中で『君主の皇位継承権に関しても男女がだんだん平等になってきているんだ』との認識はかなり高かったのではないか」と分析した。 ただ、重要なのは皇室典範だけが勧告を受けていたわけではないという点を強調した。 「むしろ、皇室典範がメインのパートではなく、男女の所得格差の問題だったりとか、政治の話では候補者男女均等の話もでているが重要な項目がたくさんある。例えば選択的夫婦別姓は何回も勧告されているが、今も実現していない。日本が必ずしも実現できていない所も話としては聞いて、それに対して答えるというコミュニケーションを取っていくものだ。だからこそ、端っこの方に局所的に出てきた皇室典範の話に反応してしまったことは残念だ」 (『ABEMAヒルズ』より)
ABEMA TIMES編集部
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