Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/43f5c2eabf7b2c5d438bd58e4320906d4426426f
2022年の注目すべきキーワードとして「リジェネラティブ」を紹介しましたが、日本でもその機運が高まっています。Indeed Japanが昨年の9月に発表した調査によると、直近5年間で「SDGs」を含む仕事掲載数は700倍以上に増加したそうです。 サステナビリティに取り組む企業や担当者の数が増えるのは大変好ましい事だと言えますが、筆者は日本企業のサステナビリティに関する活動が「良く言えばおとなしい、悪く言えばパッシブ(受動的)であり、そして形式的である」と感じています。 ■日本のサステナビリティは「形式的」? 例を挙げましょう。著者が先日、サステナビリティテーマにした国際的なイベントに参加した時のこと。あるセッションで、「なぜ人権の問題に取り組むのか」というファシリテーターからの質問に対して、とある大手企業のパネリストは「投資家からの要請である」と回答していました。 そしてセッション終了後の質疑応答で、客席の大学生からこの件に関して質問がありました。「投資家は自分たちから遠い存在です。いち消費者としての自分に、何かできることはないのか」というものです。 するとパネリストは、かなり長い時間考えた後、「学生の皆さんにはまだ分からないと思うが、企業に勤めるようになれば投資家の重要性が分かると思う」という趣旨のコメントをしました。このやりとりについては賛否両論があると思いますが、筆者はホロ苦さを感じました。 何も行動を起こさないよりは、投資家の要請に従う形ででも、何かをした方が良いことは確かです。しかし言われたことだけをやって満足するのは違います。日本を牽引すべき存在である大企業がそんなことでは、日本のビジネス界におけるサステナビリティの未来は、明るくなりません。 別のセッションでも、どちらかと言えば「形式的」と言わざるを得ないような取り組みの紹介が少なくありませんでした。 「トレーサビリティの実現」と唱えているものの、原料農家を把握するところまでで終わっているものや、水の使用量を減らすのではなく、使った水の使用量を相殺できるだけの森林を購入するというものなどです。
もちろん本気で何かを変えようとしている企業もありましたが、そうでないセッションが多かったため、個人として、また会社としても、どうすればもっと踏み込んだアクションができるのかを考えさせられました。
企業が「自分ごと」にするためには?
■中小企業や若い世代に宿る「強い意志」 一方、中小企業を中心に、本質的にサステナビリティを追求している企業もあります。 例えば、三鷹市の鴨志田農園。近隣の民家からでた生ゴミを活用した無農薬・無化学肥料で野菜を作ったり、コンポストアドバイザーとしてネパールでの生ゴミ堆肥化の国家プロジェクトを推進したりしている企業です。 園主である鴨志田さんは、「Farm to Tableができれば、Table to Farmもできる。生ゴミは濡れていると温室効果ガスであるメタンガスが出るので、都市に住んでいる人は、洗濯ものを干すようにゴミを干すべきだ」といいます。このメッセージはパワフルで、人々を動かすのに十分な説得力があります。 それに加えて、若い世代、特に高校生や大学生のサステナビリティへの関心はとても高くなっています。先のイベントでも、企業が出店するブースで真剣に話を聞く参加者の中心にいるのは学生でした。大人や企業が動かないことに対してフラストレーションを覚えている学生も少なくなかったように感じました。 ■企業が「自分ごと」にするために このように、大企業の形式的な取り組みが散見される背景には、サステナビリティを「企業ごと化」できていない現状があると考えています。その理由のひとつに、サステナビリティ分野に各企業のエースを投入していない、受動的な姿勢があるのではないかと思います。 その場合、2~3年毎の人事異動でたまたまそのポジションについた役員や担当者に、環境と企業がWin-Winになる取り組みを考えてもらうことは非常に難しいでしょう。サステナビリティへの投資と事業としての収益性を両立させるには、小手先の取り組みではなく、全社的な事業構造の改革が必要になるからです。 冒頭のイベントのある講演では「過去何年ものあいだ、大人が何ら変わっていないことに失望した」とまで発言した学生もいました。うなずける反面、企業も決して現状を変えたくないと思っているのではなく、それぞれが頭を悩ませていることを筆者は理解しています。なぜならば、サステナブルなアクションにどのようにして企業活動としての合理性や採算性をもたせるのか、という本質的で難解な問いに答えることは簡単ではないからです。 しかしだからこそ、経営者は影響力のある優秀な社員に「サステナ事業開発」に取り組ませて、デジタル技術を活用したり、パートナーシップを業界の外に広げたりする事業構造改革を中期的にリードしてもらい、「企業ごと化」を進めていく必要があるのではないでしょうか。 加藤順也◎LVMHグループ、Kurt Salmon US を経て、世界大手のマテリアル企業で日本支社のマネージングディレクターを務める。小売業や消費財メーカーへのコンサルティングやRFIDを筆頭とするデジタルIDソリューションの開発が専門。上智大学卒。UCバークレーHaasビジネススクール DLAP修了。
Forbes JAPAN 編集部
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