Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/16fc2854b3e388a84495098b388f00923efcf32c
中国と盟友関係にあるパキスタンで再び反中テロが起き、中国人3人が死亡した。王毅外相がパキスタンを訪れて、中国とイスラム諸国の友好をアピールしたばかりだったこともあり、習近平政権にとって大きな衝撃となった。(時事通信解説委員・西村哲也) ◇女性が孔子学院の車狙う パキスタン南部の大都市カラチで4月26日、車両を狙った爆弾テロがあり、中国人3人とパキスタン人1人が死亡した。中国外務省の発表によると、狙われたのは中国語などの普及を図る「孔子学院」の車で、中国人の死者はいずれも同校の教官だった。自爆テロだったという。 孔子学院は事実上、中国政府の宣伝機関であり、世界各地で中国の対外的影響力拡大の拠点となっている。 現地メディアによれば、パキスタンからの分離独立を目指す過激派「バルチスタン解放軍(BLA)」が犯行を認めた。実行犯は女性だった。 パキスタンは中国の陸海シルクロード経済圏「一帯一路」に参加しているが、BLAは中国による港湾都市グワダル(バルチスタン州)の開発などを経済的侵略と見なして反対している。 パキスタンでは昨年夏、中国人を狙ったテロが続発。BLAやイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動(TTP)」の犯行とされている。TTPが実行したとみられる自爆テロでは、中国人9人を含む13人が死亡した。BLAなどはパキスタンだけでなく、隣国アフガニスタンにも拠点があるといわれる。 中国政府は当時、李克強首相や趙克志公安相、王外相が相次いでパキスタン側と連絡を取り、関係省庁の合同作業チームまでパキスタンに派遣。事件の徹底捜査と再発防止を求めて、圧力をかけた。 ◇「黒幕は代償払う」と警告したものの… 米軍が昨年夏にアフガンから撤退した後、中国はこの地域に対する外交を活発化させ、今年3月下旬には王氏がパキスタン、アフガン、インド、ネパールの4カ国を歴訪した。 特にパキスタンでは、中国外相として初めてイスラム協力機構(OIC)外相会議に参加。中華文明とイスラム文明が友好・協力関係にあることを強調し、「反テロ」で国際協力を深めていく重要性を指摘した。 その直後にも、安徽省で中国・アフガン・パキスタンの3カ国外相会談などを主催して、地域の安定に向けてイニシアチブを発揮していた。 今回の反中テロはその約1カ月後に起きた。中国外務省によると、呉江浩外務次官補は直ちにパキスタン駐中国大使に対して「極めて重大な関心」を伝え、「迅速かつ徹底的な捜査」を要求。同省報道官は「中国人の血が無駄に流れたということになってはならない。この事件の黒幕は必ず代償を払うだろう」と警告した。 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)も4月27日の論評で、パキスタンにおける反中テロには「国際的な(中パ以外の)第三者の勢力」が関わっているとした上で「パキスタン国内であれ国外であれ、中国人を襲撃目標とする勢力は必ず最も厳しい打撃を受けるだろう」と主張した。 これらの発言や文章から中国側の怒りの大きさが分かるが、状況は中国にとって厳しい。中国の対外援助による開発プロジェクトが実際には専ら中国企業に委ねられ、地元に恩恵のない形で行われて反発を買うケースは多く、パキスタンもその一例だ。 また、パキスタンにおけるテロ対策にはアフガン情勢の安定が欠かせないが、中国が後押しするタリバン政権下のアフガンはいまだに混乱が続いている。パキスタンやアフガンの現地当局が頼りにならないからといって、かつての米国のように自ら軍事介入するわけにもいかない。最大の盟友ロシアはウクライナ侵攻で余力がなく、中国としては頭が痛いところだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿