Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/33b042ecb5146a833b9bebdaf8955a7c403e35aa
日本国憲法は5月3日、施行75年を迎えた。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を三大原則とし、これまで一度も改正されていない。岸田文雄首相は改憲に意欲を示し、夏の参院選で与党が勝利すれば、議論が進む可能性がある。いま岐路にある憲法をどう考えるべきか―。 「教育受ける権利」憲法26条の条文 広島県呉市にある日本語学習支援団体「ワールド・キッズ・ネットワーク」の無料講座。土曜日の午後、ネパールや中国、フィリピンなど外国籍の子どもたち6人が集まった。 「この漢字が分からん、先生」「先週もやったじゃろ」。広島弁と、元気な笑い声が行き交う。 約20年前から外国人支援に携わる同教室の代表の伊藤美智代さん(69)は訴える。「いま心配なのは学校に行かず、学齢簿に名前もない外国人の子なんです」 数年前、フィリピンから来日した13歳の少女がいた。ほぼ家にこもり、中学校にも行かない。この日本語講座に来てもほとんど話さず、笑わない。「日本は義務教育。学校に行かないと」と両親と本人に幾度も伝えた。それでも「オンラインで母国語で勉強する」と応じない。結局、1年半も不就学だった。「子どもの将来が狭まったのでは」と伊藤さんは今も悔やむ。 義務教育の年齢でありながら、学校に籍がない外国人の子どもは少なくない。文部科学省が3月に公表した調査によると、外国籍の子ども13万3310人のうち、7.5%に当たる1万46人が、不就学か就学していない可能性があった。
理由は憲法に行き当たる
なぜ不就学が放置されるのか。理由は、憲法に行き当たる。 26条の教育を受ける権利は、対象を「国民」とする。外国籍の子について触れていない。外国の子どもを受け入れるかどうかの対応も、各自治体に長い間委ねられてきた。文科省はその後、国際人権規約などを踏まえ「希望すれば、無償で受け入れる」とした。ただ義務ではないため、親の経済事情などによって学校に行かない子は後を絶たず、一部は年齢を隠して働いているケースもあるとされる。外国籍の子の教育を受ける権利は、憲法の「外側」に置かれたままだ。
「強制難しい」と事実上の放置も
自治体の対応にも差がある。広島市などは、外国人世帯に多言語の就学案内を送付し、積極的に通学を促している。一方、一部の自治体では「親が望まなければ強制は難しい」と事実上放置するケースもある。 少子化が進み働き手の確保が課題となる中、外国人人材に寄せられる期待は高まる。外国出身の子どもたちが十分に教育を受けられなければ、人材の育成は進まない。日本の魅力や経済成長にも影響しかねない。 憲法の理念は重要で普遍的だ。ただ国際化など時代の変化にどう合わせていくのか、議論が必要との声もある。 外国人問題に詳しい広島弁護士会人権擁護委員会副委員長の滑川和也弁護士は、日本も批准する「子どもの権利条約」などで初等教育を無料で受ける権利は保障されていると指摘。「教育は、他の人権を実現するための不可欠な手段であり、法令上の措置や制度づくりを急ぐ必要がある。外国の子も日本で活躍できる道筋を整えるべきだ」と訴える。
中国新聞社
0 件のコメント:
コメントを投稿