新型コロナウイルス対策としてマスクの着用が定着する中、聴覚障害者らでつくるNPO法人「インフォメーションギャップバスター」(横浜市)は、口の動きが見える透明なマスクの作り方をウェブサイト(http://www.infogapbuster.org)で公開している。手話を理解する時に口の動きも重要な情報となるが、透明なマスクの流通量は少ない。手近な材料を使って作れる方法を紹介している。 手話を使う人は、手や指の動きだけでなく、表情や口の形も言葉の情報として読み取ることが多い。そのため、新型コロナの影響でマスク着用が広がっても、手話通訳者やろうあ者相談員などは、聴覚障害者と接する際にマスクを外す必要があった。顔全体を覆うフェースシールドは福祉の現場にはあまり普及していないという。 そんな中、ある手話通訳者が通訳の場面で「マスクを外さなくてもよい」と言われ、相手の気遣いに感動した。「お互いに安心してコミュニケーションが取れるようにしたい」と考え、市販の立体型マスクを参考に、見た目やフィット感を試しながら透明マスクを考案したという。 材料は、透明で軟らかいカードケースかクリアファイルと耳にかけるゴム。文房具店や100円ショップなどで手に入る。型紙に沿って切り抜き、両脇にパンチで穴を開けてゴムを通せば完成する。スポンジを鼻当てにすれば密着度が増し、内側にメガネ用の曇り止めを塗ると呼気で曇るのを防げる。折りたためるため持ち運びにも便利だ。 同NPOメンバーで薬剤師の吉田将明さんが勤務中に使用したところ、聴覚障害者から「口の動きが確認できて、内容がよくわかる」と喜ばれたという。「角度によってはマスクを着けていることが分からないぐらい」という声もあり、愛媛県今治市長の記者会見の場などで使用されたこともある。 使用した人からは「ぴったりフィットする」「鼻当てがなくても息苦しくない」などと好評だ。吉田さんは「感染防止のため、一人一人に何ができるかを考えてほしい。いずれは医療用の透明マスクを開発してもらえたら」と願う。ウェブサイトでは型紙と、日本語のほか英語とネパール語で作り方を紹介している。【谷本仁美】
0 件のコメント:
コメントを投稿