2020.06.18
いろんなことに疲れたな、という時、決まって行きたくなるのがネパールだという旅行ライターの山田静さん。登山客だけではなく、世界の旅人をひきつける小さな国の魅力を4回にわたって紹介します。
(トップ写真はカトマンズの仏教寺院・スワヤンブナート)
■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら
本連載では毎回、一度の旅について紹介してきたが、今回は「ネパール旅」をご案内したい。
人生のちょっとした節目や、なんだか疲れた……というときに私が行きたくなるのがネパールで、思い出すだけで2018年までに10回以上は訪れている。ネパールといえばヒマラヤ登山の国、というイメージもあるが、特に登山が好きというわけでもない。では何にひかれているのか語っていきたいと思う。
まずは首都・カトマンズ。さぞかしヒマラヤの眺めがいいはず、と思いきや、眺望どころか世界有数の大気汚染がひどい都市と言われている。黒い排ガスを盛大に排出する古い車が整備されていない道を土ぼこりをたてながら走り、あっちこっちで道路工事もしている。盆地なので悪い空気がよどみ、交通量の多いところではネパール人もマスクやスカーフで口元をガードしているほどだ。2008年に王制が廃止され連邦民主共和国になったものの、国民のための政治がスムーズに動いているとはまだ言いがたく、17年に訪れたころまでは計画停電や断水もよくあった。15年にカトマンズの北西で発生した大地震からの復興も道半ばで、町なかには壊れかかった建物もまだ放置されていた。
と、ここまで書くと全然よさそうでも楽しそうでもないが、何度行っても妙に飽きないし、延々と散歩してしまう。
散歩の拠点となるのはタメル地区だ。アジアの中でも古い安宿街のひとつで、かつてはヒッピーが集まる場所として有名だった。ドミトリー1ベッド3〜4ドルといった安宿から1部屋20ドル程度の中級ホテル、100ドルくらいする高級ホテルやデザイナーズホテルまで、1時間もあれば一通り見て回れる狭いエリアに宿が密集している。宿と宿の間には土産物屋やスタンドジュース屋、カフェ、安くておいしいメシ屋、高級レストラン、旅行会社などがこれまた密集。トレッキングを終えた旅人が売り払った山道具を扱う中古アウトドアグッズ店はタメルならではのお店で、長旅の途中、ネパールで登山をしたいという旅人も、タメルに来れば山道具が一式手に入る。自分の登山が終わったら、また売ればいいのだ。
晴れた日はほこりっぽく、雨が降ったあとは泥はねがひどいタメル。世界じゅうから来たさまざまな服装の旅人にまじって「ナマステ」なんて店の人と言い交わしながら歩いていると、「おお、私は旅に出ている!」という実感がむくむくと湧いてくる。
こういった旅人街は、何かと人をだましにかかる悪いやつが集まりがちだが、なぜかタメルはいつ行ってもわりと平和(悪いやつもいることはいる)。おとなしいネパール人の雰囲気も手伝って、旅人たちもインドにいるときの緊張をゆるめて、穏やかな表情を浮かべている人が多い。いつ行ってもくつろげる広々したカフェやオープンテラスのレストランがいっぱいあるのも、私がタメルを気に入っている理由だ。
もちろんタメルだけがカトマンズなのではない。ここから一歩出ると、「ザ・ネパール」といった雰囲気の寺院や、ローカルな市場や地元の商店街と出合える。混沌(こんとん)としていながらなんとなくのんびりとしていて、角を曲がればそこには神様。そんなカトマンズの街歩きが私は大好きだ。
よく歩く散歩ルートを写真で紹介していこう。
次回はカトマンズを離れて、山に行こう。人気の山岳リゾート、ポカラを紹介する。
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