Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/5a40415f6f59d35bf6a1320dd87e99fd22075f37
閑散としたスーク・ワキーフを出ると、海岸へと続く小さな道があった。湾の向こうに高層ビルが集まる地区ウエスト・ベイを見渡せる。ペルシャの海の上で、つるつるとした近代的なビル群が空に向かって我先に背を伸ばしている。決して広くはない国土の中で、独創的なデザインの建物が毎年のように増えていく。
■ 「カタール人に貧しいやつはいない」
海沿いを歩いていると、ひとりのインド人と出会った。インド南部出身だという。生まれた町の名前は聞いたことがなかった。印象的だったのは地元のカタール人と、彼ら移民についての話だ。
「カタール人に、貧しいやつはいない」と彼は言った。言葉の節々に、自分たちとは違うんだという含みを感じた。
「みんなリッチなんだ。首長はもちろん、中間層も。この国にはなんといっても天然ガスと石油がある。あの海の向こうにはたくさんのプラントがあって、その下に資源が埋まってるから」
カタールに来る前はセイシェル諸島で働いていたという。11年前にドーハに労働者としてやってきて、今は運送の仕事をしている。ワールドカップは観たいけれど、チケットが高いからたぶん難しいだろうね。そう言う彼の表情には悲しさも諦めもなく、それを当たり前のこととして受け入れているようだった。
「アラビア語は話せない。英語で事足りるし、必要性も感じない。それに、ドーハで生粋のカタール人に会うことなんて少ないんだ。カタール人は30万人くらいで、俺たちインド移民は70万人だ。その次はネパール人だったっけ。バングラデシュ人も多い。この町に11年住んでいるけど、まだカタール人の友人はいない」
欧州には問題こそあるものの、移民の地域融合を促す環境はある。カタールで感じたのはそれとは異なる、移民とカタール人の間にある大きな壁だ。
海のそばで砂埃に包まれて労働者たちが道路工事をしていた。いま、カタールは国をあげて工事をしている。11月のワールドカップで世界を迎えるまでになんとしても終わらせろと上からの通達があるという。労働者はほとんどがインド系だ。殺風景な工事現場に、彼らの国の言葉が響いていた。
豊福 晋
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