Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/ca50ff9458540d479aa43459600d28dd32078012
【続「老マンション」理事長奔走記 】#10 繁華街のマンションに住んで数年。親しくなったのは、私と同じ時期に入居した鍼灸治療院の先生だった。といっても、賃貸なので住民ではない。それでもマンション住民の情報(悪口も含めて)はお互いに交換し合った。 岸田首相が率先して「議員特権」を享受 原宿に億ション所有も“格安”議員宿舎入居の怪 挨拶しない感じの悪いガキもいれば、挨拶しない仏頂面の金髪のおじさんもいる。一方でいつも挨拶してこちらを気遣ってくれる女子中学生もいた。インドかネパールかわからないが、飲食店で働く人も住んでいた。彼らが乗った後のエレベーターはとてもスパイシーな香りがして、その晩はカレーが食べたくなった。子供も老人も外国人もいる。多様性という意味でコミュニティーとしては最高だが、残念ながらコミュニティーを形成するまでには至っていない。そこまで仲良くはないのだ。 昔は有名な女優の事務所も入っていたそうだし、舞台俳優も住んでいる。新宿ゴールデン街や新宿2丁目で店をやっている人もちらほらいた。ホストっぽい兄さんや夜の蝶っぽい姉さんも出入りするのを見かけた。香水と酒の混じった夜の香りが特徴的で、今あの界隈ではこういう香水がはやっているのかと知る。あれ? ニオイばかり嗅いでいるな、私。 私自身が蚊帳の外にいただけかもしれないが、住民同士のトラブルは聞いたことがない。ただ、私がトラブルを起こしたことはある。水漏れだ。 1回目は真下のお部屋に。お詫びにアクタスで買ったタオルを持っていき、ひたすら謝った。今思うと、水漏れにタオルって……無神経だったな。 そして2回目。ある夜、酔って、風呂に湯を入れたまま寝てしまったことがある。朝方に誰かがピンポンを鳴らした。その音にハッ として飛び起きたのだが、時すでに遅し。やってきたのは真下の住民で、ものすごい勢いで天井から水が流れてきている最中だという。 ■噂話にかまけて加害者に 彼は怒るわけでもなく、淡々と惨状を述べた。2回も水漏れ被害を受けたら、普通怒り心頭のはずが、彼は優しかった。 朝になって、水漏れはうちの下の2部屋に起きていることがわかった。数時間水を出しっぱなしにしたせいで、甚大な被害を与えてしまったのだ。ともかく、2部屋へ直接出向き、被害状況を確認し、ひたすら謝る。管理会社に連絡したところ、管理組合で入っている保険が使えるとのこと。しかし被害状況は甚だしく、ひとりは衣類や寝具がびしょびしょに、もうひとりはパソコン周辺がやられたそうで、とても保険だけで賄えるとは思えず。 翌日、2部屋の方にそれぞれ、お詫びの5万円を手渡し、「管理組合の保険で賄えない被害は私の保険で手続きするので、お申し付けください」と名刺を渡す。誠意は必須。つうか噂話している場合じゃねーわ! あたしが害悪だよ! ただ、それをきっかけに、階下の人とは距離が近くなった。 (つづく) (コラムニスト・吉田潮)
0 件のコメント:
コメントを投稿