Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/738a2096e3be64e882340b6ac708c539cc354743
配信、ヤフーニュースより
ベトナム人労働者、中国人を上回る
新型コロナウイルスの蔓延に伴う「水際対策」の厳格化で、外国人の入国が難しくなっている。ここ数年、日本における人手不足は外国人労働者で補われてきたが、その入国もままならない。経済活動を再開させようにも、人手不足がネックになる可能性が出てきた。 【写真】コロナ危機で、じつは日本が「世界で一人勝ち」する時代がきそうなワケ 厚生労働省が1月末に公表した「外国人雇用状況(2021年10月末現在)」によると、日本で働く外国人は172万7221人で、1年前に比べて2893人(0.2%)の増加にとどまった。2015年から2019年まで2ケタの伸びが続いてきたが、新型コロナの影響で入国ができなくなり、2020年の4.0%増よりもさらに伸びが鈍化した。 国籍別に見ると、中国人が5.3%減の39万7084人と、東日本大震災後の2012年以来9年ぶりに減少した。日本側の水際対策だけでなく、「ゼロコロナ」政策を取り続ける中国政府が渡航を厳しく制限していることが大きいと見られる。中国人に代わって日本での外国人労働の「主役」になっているのがベトナム人。2.1%増の45万3341人と2年連続で中国人労働者の数を上回った。 ベトナムは技能実習生の最大の送り出し国で、35万人あまりいる技能実習生のうち20万人を占めている。ベトナム国内で日本語教育などを行う送り出し機関が、日本の受け入れ機関と連携して大量の技能実習生をまかなっているが、「実習」は事実上名目で、実際は「出稼ぎ」である。日本への渡航費など多額の借金をして日本に来る労働者も多く、かねてから「技能実習の闇」として問題視されてきた。 かつて技能実習生の中心を占めていた中国人の技能実習生は5万人あまりにまで減少した。「専門的・技術的分野の在留資格」を持つ人が3割を占める他、留学生などの「資格外活動」として働いている人も2割近くを占める。さらに、中国人労働者の在留資格で最も多いのは永住者や日本人の配偶者など「身分に基づく在留資格」を持つ人たちで、3割を占める。 中国人労働者の場合、一時的な「出稼ぎ」から、正規の労働者として働く「定住」型の労働者が増えてきている。待遇の悪い技能実習生を敬遠する傾向も広がっている。 国籍別で次に多いのがフィリピン人で、2021年は19万1083人と3.4%増えた。フィリピン人の場合、永住権を持っていたり、定住している「身分に基づく在留資格」が7割以上を占める。 13万4977人いるブラジル人労働者の99%も「身分に基づく在留資格」で働いている。ブラジル人の場合、バブル期などに日本に働きに来て製造業の現場を支えた日系人などを中心に、国内にコミュニティを作って定住している人が多く、2世世代の人も増えている。 このところ急増していたネパール人が2021年は9万8260人と1.4%減少。分類して統計発表されるようになった2014年以降、初めての減少となった。これは新型コロナによる「水際対策」の影響が大きいとみられる。
飲食、小売の多くが「資格外活動」
外国人労働者が働く産業を見てみると、最も多いのが製造業の46万5829人で全体の27%を占めるが、新型コロナ下で減少傾向が続いている。製造業で働く外国人の4割弱が技能実習生で、水際対策で入国できないことから働き手が減っているとみられる。これは建設業も同様で11万人の働き手のうち7万人あまりを技能実習生が占める。 産業別で次に多いのが「卸売業・小売業」の22万8998人で13.3%。「宿泊業・飲食サービス業」の20万3492人で11.8%と続く。いずれも新型コロナの打撃が顕著な業界だが、1年前に比べて前者は1.3%減、後者は0.3%増と、いずれも労働者の数はほぼ横ばいになっている。 さらに、新型コロナでも外国人労働者数が逆に増えているのは、「医療・福祉」分野。まだ人数は5万7788人と多くないが、1年前比の伸び率は33%増と極めて大きい。医療や介護などの、いわゆる「エッセンシャル・ワーカー」の重要性が増しているものの、人手不足が深刻で、外国人労働者に頼る構図が見える。 問題は、今後、新型コロナの蔓延が徐々に収まってくる中で、人手不足が深刻になって来た場合、どうやって外国人労働者を確保していくかだ。特に飲食業や小売業が本格的に営業を再開した場合、その人材をどこに頼るのか、が大問題になりそうだ。 というのも、これらの業界が依存している外国人は多くが「資格外活動」の在留資格だ。つまり、日本語学校などへの「留学生」の資格で、アルバイトとして働くことができる制度を利用している。 飲食サービス業などは「単純労働」とみなされ技能実習の対象から外れていることから、技能実習生として外国人を確保することが難しい。「宿泊・飲食サービス業」の場合、20万3492人のうち半数以上の10万9070人が、こうした「資格外活動」と言われる外国人だ。こうした資格の労働者は週28時間、夏休みなどでも1日8時間しか働けないルールになっている。
「移民」を受け入れないと経済が回らない
国会では、留学生などの受入れ解禁を政府に求める質問などが相次いでいるが、実際のところ、人手不足に苦しむ企業の労働力として確保したいという思惑が背景にある。 新型コロナが明けて、入国規制が撤廃された場合、外国人労働者の取り合いが始まるだろう。製造業や建設業など規模の大きい企業の場合、海外機関と連携して技能実習生を大量に受け入れることも可能だが、経営規模の小さい飲食や小売りは争奪戦に負け、一気に人手不足に悩むことになりそうだ。 出入国在留管理庁は、人手不足の深刻な業種14分野で定めている外国人の在留資格である「特定技能」について、2022年度にも事実上、在留期限をなくす方向で調整していると報じられている。 事実上、「移民」を受け入れないと、人手不足で経済活動が回らない事態に直面しているということだ。特に日本人が働きたがらない「3K(きつい・汚い・危険)」と言われるような職種では、ますます外国人労働者への依存度が高まっていくだろう。 もっとも、ポスト・コロナで世界経済は大きく成長するとみられていて、発展途上国の外国人を労働力として求める国は増える。日本は早急に外国人を受け入れる制度を整備していかないと、人手を確保できず、世界から成長で劣後することになりかねない。
磯山 友幸(経済ジャーナリスト)
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