Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/c5104d88f97b61386c78954fdb8f314294241731
配信、ヤフーニュースより
世界では2022年1月、新型コロナウイルスワクチンの累計接種回数100億回という節目を迎えた。しかし、その大部分は富裕国で接種されており、イスラエルのように4回目の接種を始めている国もある。低所得国で少なくとも1回目の接種を終えている人は、人口のわずか約10%にすぎない。 AIの医療分野での活用には、まだ課題が山積している:新型コロナウイルス対策の利用事例から明らかに 世界では1日に約2,400万回というペースでワクチン接種が進められている。しかし、オミクロン株はそれをしのぐ勢いで、これまでの変異株より何倍も早く感染を拡大しているのだ。当初は「デルタ株よりも軽症」と報じられてきたオミクロン株の症状も、高齢者や基礎疾患をもつ人、ワクチン未接種者は重症や死に至る可能性が高いこともわかっている。 最初にオミクロン株の検出を公表した南アフリカをはじめ、英国や米国、フランスやイタリアといった国は早くも新規感染者数のピークアウトを迎えた。それでも死亡者数はじりじりと上昇傾向にある。米国ではオミクロン株による一日の死者数が、デルタ株のピークを上回っている。 一方、早くもオミクロン系統の亜種(BA.2)が出現し、世界各国で確実に感染者数を増やしつつある。デンマークでは最初のオミクロン株(BA.1)から進化したBA.2が新規感染者の大部分を占めるようになった。BA.2はオミクロンの約1.5倍感染力が強いと予測されているが、その病毒性は最初のオミクロン株と比べてあまり違いは見られないという。 オミクロン株の出現によって、過去に新型コロナウイルスに自然感染した多くの人たちが再感染し、ワクチン接種者はブレイクスルー感染する傾向が見られるようになってきた。免疫を回避する変異株の出現に伴い、英国やデンマークではワクチンの義務化を断念する動きもみられている。 こうしたなか、わたしたちはこれからどう行動し、このウイルスと向き合うべきなのだろうか。新型コロナウイルスと世界の1月の動向を振り返る。
オミクロン株の亜種「BA.2」とは
「ステルスオミクロン」と呼ばれることもあるオミクロン株の亜型(BA.2)は、2022年初めに検出された。デンマークを始めフィリピンやネパール、カタール、インドでは最初のオミクロン株(BA.1)より優勢になりつつある。 家庭内感染の報告では、BA.2の陽性者が同居人を感染させる確率は39%であり、BA.1(29%)よりも家庭内で感染する確率が高いことがわかった。なかでもワクチン未接種の人に感染する可能性が最も高く、ワクチン接種者や特にブースター接種(3回目以降の追加接種)を受けた人は、この株に感染する可能性がより低いことが報告されている。なお、重症化の程度は従来のオミクロン株であるBA.1とさほど変わらないという。
“軽症”では有益な免疫は得られない?
査読前の新たな研究によると、デルタ株へのブレイクスルー感染(ワクチン接種を完了した人がCOVID-19を発症すること)で得られる免疫がもつオミクロン株への防御効果は限定的であり、交差免疫反応を示さないことがわかった。つまり、デルタ株感染で得られる免疫はオミクロン株に対してあまり効果がないということになる。また驚くべきことに、オミクロン株に感染しても軽症だった場合、オミクロン株への有益な免疫が誘導されない可能性も明らかになっている。 これはオミクロン株から回復したあと、しばらくすると同じオミクロン株に再感染する危険性を示唆するものだ。実際にイスラエルでは従来のオミクロン株(BA.1)に感染後、ほとんど間を置かずに亜種であるBA.2に再感染した例が報告されている。
4回目の接種は必要なのか?
オミクロン株の流行が拡大するにつれ、感染者を減らし医療のひっ迫を軽減させるために、ブースター接種が推奨されるようになった。問題は3回目のワクチンを接種しても数カ月で抗体量が低下するので、長期間にわたる防護効果が期待できないことだ。 4回目のブースター接種に関する研究では、3回目に見られたような極端な抗体量の上昇は見られないことがわかった。しかし60歳以上を対象とした調査によると、4カ月前に3回目の接種を受けた人と比べて4回目の接種を受けた人は、オミクロン株に対して2倍の感染予防効果と3倍の重症化予防効果が認められたという。これを受けてイスラエルの専門家たちは、3回目のブースター接種か回復から5カ月後を条件に、4回目のワクチンの接種を政府に勧告した。 ある研究では、3回目のブースター接種ではオミクロン株への感染を予防する抗体が最大でも4カ月しか持続しない可能性が示唆されている。これに対して体の免疫反応を調べたほかの研究では、ほとんどの場合は3回目のワクチン接種でより長期的な免疫を得られるという結果が出た。重症化に対する保護効果はより持続的で、たとえ血中の抗体量が低下しても免疫記憶やT細胞によって重症化を予防できる可能性があるという。 それゆえ、4回目からのワクチン接種に関しては感染予防を目的としているのか、それとも重症化を抑えて入院せずに済むことを目的としているのかによって用途が異なるだろう。いずれにせよ研究者の間では、将来の変異株に対してより広い防御効果を得られる新しいワクチンが必要という意見が多い。
進む「オミクロン株専用ワクチン」の開発
ファイザーとモデルナがオミクロン株に特化したワクチンの臨床試験を開始した。英国の報告によると、mRNAワクチンの3回目のブースター接種の2週間後には80~95%と依然として高い入院予防効果を維持しているものの、発症予防効果にいたってはオミクロン(BA.1)で63%、オミクロン(BA.2)では70%ほどの効果しかないとされている。 ファイザーはすでにオミクロン株用のワクチンの製造を開始しており、3月にも準備が整うとしている。モデルナのワクチンは2022年の夏に出荷される見通しだ。
ワクチン接種が“後遺症”のような症状を示すことも
新型コロナウイルスのワクチン接種後に非常にまれに起こる後遺症が、COVID-19の後遺症に似た症状を示すことが報告されている。例えば、疲労や激しい頭痛、神経痛、血圧の変動、短期記憶障害などが挙げられるが、症状の幅が変動しやすいことが診断を難しくしているという。 動物実験から得られた証拠によると、免疫反応を引き起こす目的で多くのワクチンが使用しているSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に原因がある可能性がある。スパイクタンパク質を標的にする抗体が、組織に何らかの損傷を引き起こすかもしれないというのだ。 研究では、SARS-CoV-2に対して強力な効果をもつ18の抗体のうち、4つがマウスの健康な組織も標的にしている可能性が示唆されている。それが患者の自己免疫疾患を誘発しているのかもしれない。 この結果は、SARS-CoV-2への感染後の人々では、感染者自身の体細胞や組織を攻撃する自己抗体のレヴェルが異常に高い傾向があることからもうかがえる。現在、研究チームは自己抗体が組織に損傷を与えるかどうか、そして自己抗体がどれだけ持続するのかを調査している。 現在査読中の論文では、COVID-19の後遺症を患う人の少なくとも3分の1でマウスの神経細胞やほかの脳細胞を攻撃する自己抗体が見つかったという。ただし、この研究ではワクチン接種による後遺症は極めてまれであるとし、対照的にCOVID-19の後遺症は患者の5~30%で起こりうることが強調されている。
COVID-19の後遺症のリスク因子とは
COVID-19患者の初診から回復期(2~3カ月後)を調べた縦断的なデータから、COVID-19の後遺症に関連するリスク因子が報告されている。COVID-19の患者309人の臨床データと自己申告された症状を分析したところ、4つの予測因子が浮かび上がってきた。 それらは「2型糖尿病、血中のSARS-CoV-2のRNAレヴェル、血中のエプスタイン・バー(EB)ウイルスのDNAレヴェル、自己抗体(自己免疫疾患の原因となる抗体)」の4つである。これらをCOVID-19診断の初期段階で測定することで、患者が長期的なコロナ後遺症を発症する可能性があるかどうかを予測できるという。 この研究による重要な知見は、診断時(発症初期)のウイルス量が数カ月後にCOVID-19の後遺症を発症するかどうかに強く関連することと、体内で不活性化しているEBウイルスがCOVID-19発症後早期に再活性化し、それが後遺症と関連することも突き止めたことだ。 なお、ワクチン接種者は長期的な新型コロナウイルス後遺症の発症率が非常に低いことがわかっている。COVID-19にブレイクスルー感染した完全ワクチン接種者はワクチン未接種者に比べて頭痛を訴える確率が54%低く、疲労を訴える確率が64%低く、筋肉・関節痛を訴える確率が68%低いという。 オミクロン株の出現とその亜種の動向を見る限り、集団免疫の達成は実質的に不可能であることが明らかになってきた。増える後遺症と人手不足によって、社会は機能不全に陥っている。 オミクロン系統の変異株に対する防御効果がより高いワクチンが完成するまでは、重症化から個人を守ること、脆弱なグループを保護するためのブースターショット、そして重症化を回避するための抗ウイルス剤の使用を優先させることが、わたしたちがいまできることではないだろうか。
SANAE AKIYAMA
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