Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/17cb9ca3d3d58b6370e2f2990cc7da852768bef1
バスが好きだ。鳥取市内を循環する「くる梨(り)」は車窓を流れる街並みが楽しいし、海外のおんぼろ暴走バスで尻が擦りむけたのも懐かしい。そんな“乗りバス”の記者が、自動運転バスに試乗した。鳥取砂丘の東西を結ぶ約2キロの公道で実証実験が始まるのを前に、報道各社を対象とした15日の試乗会に参加した。【平川哲也】 試乗したのは仏ナビヤ製の電気自動車「アルマ」(14人乗り)。高さ2・64メートルのずんぐりとした体形で、鳥取砂丘会館(鳥取市福部町湯山)にたたずむその姿を見るなり、五十路に突入したおっさん記者はときめいた。車体中央で大きく開閉するドアの前に立つと、左右対称ではないか。 「よく気づきましたね。アルマの前部と後部は『同じ顔』です」 市内などで路線バスを走らせる日ノ丸自動車と日本交通の実験に車両を提供した、高速バス運行会社「WILLER」(大阪)の池あい子さんが笑った。実験は安全のためオペレーターと保安員が乗り込むが、自動運転バスは本来、運転席がいらない。日本の交通法規に合わせて便宜上は前後を決め、オペレーター席も設けるが、前後進とも同程度の速度が出るモーターさえあれば、後ろが前でも前が後ろでも構わない。 アルマはあらかじめ記憶させた立体的な地図やGNSS(全球測位衛星システム)で走行位置、赤外線センサーで障害物を検知しながら、最高時速19キロで鳥取砂丘周辺を自動走行する。緊急時に備えるオペレーターが手にするのはゲーム機のコントローラーそのもので「自動車感」は乏しい。池さんは「パソコンが走っている感じ」と言う。いやはや、近未来的なのである。 砂丘会館から西にチュウブ鳥取砂丘こどもの国を目指して乗り込んだ。床は平らでシートは硬め。電気自動車らしく滑り出しは静かだが、安全への配慮を感じた。強めにブレーキがかかるため、シートベルトをして着座していてもカクカクと小刻みに体が揺れる。一方で、モーターの力強さはどうだ。起伏のある鳥取砂丘沿いの公道でもぐんぐん進み、安心感が広がった。 大きな車窓に年がいもなくはしゃぐうちに、30年も前を思い出した。インド北東部からネパールを目指した数百キロのすし詰めバスは苦行に等しく、めったやたらにクラクションを鳴らして暴走する運転手におびえながら木製のシートに耐えた。通称「ジャンピングバス」に尻が悲鳴を上げ、降車後に確かめたら破れたパンツに血がにじんでいた。 アルマはゆるゆるとゆく。前面の車窓から飛び込んでくる鳥取砂丘の景色が美しい。ほどなく到着したこどもの国で駐車場内を1周した際もコーナリングはなめらかだった。ほとんどの場合、日本のバスは優しい。路線バスの降車時は止まってから降りる準備をすればいいし、お年寄りが多い乗客を見ると交通弱者のニーズに応えていると実感する。 ただ、路線バスは利用者の減少や運転手の不足で存続の危機にある。実験に2200万円を補助した鳥取市は自動運転バスを将来的な移動サービスの核に据えたい考えで、試乗会の日にも、日ノ丸自動車の田中賢治常務は「バスの将来が改善されるという、兆しが見えるような実験にしたい」と力を込めた。 実験は3月6日までの10日間を予定し、砂丘会館とこどもの国を約20分で1日4往復する。1便につき試乗モニターを4、5人乗せて走り、運行技術や走行性能などを検証する計画だ。
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