Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/eb519a3117f88f5358a571b93c7cf811a7224204
学費分だけでも2億8000万円の減収
新型コロナウイルスの感染が拡大し始めて、すでに2年以上が経つ。現在も外国人の新規入国は禁止されており、日本は事実上の“鎖国”状態が続いている。そのため、在留資格の事前認定を受けているにもかかわらず、日本へ入国できていない外国人留学生は、2021年末時点で約15万人にものぼるという。北関東のある日本語学校の役員は、「コロナ禍以前には250人いた生徒が100人を割ってしまいました。約2億円の減収となり、銀行からの借入も限界に来ています」と嘆く。 【関連】水商売で違法労働の「ベトナム人留学生」が急増 彼女らを「救世主」と言うスナック経営者の本音
関東地方にあるファッション系専門学校の職員も、厳しい表情でこう語る。 「留学生頼みの経営をしている専門学校も少なくありません。私たちの学校も在籍する生徒の9割以上がベトナム人、ネパール人を中心とした留学生でした。しかし、コロナ禍の影響で600人ほどいた生徒が200人に減ってしまった。学費は1人あたり年間70万円ほどなので、単純に計算すると学費分だけでも2億8000万円の減収です。さらに文部科学省の外郭団体から1億円ほど私学助成金をいただいていたのですが、生徒数が激減したことで大幅に減額されるでしょう。今でも留学したいという問い合わせは多いのですが、いつから確実に入学可能と断言することができず、やりきれない思いです」 経済界や野党、与党内部からも厳しすぎる水際対策に批判が相次ぎ、政府は現在3500人に制限されている観光目的ではない外国人の新規入国者数を、3月から1日5000人に引き上げる方針を明らかにした。しかし、この5000人は留学生以外にもビジネス関係者や技能実習生なども含めた総数で、優先順位も決まっていない。新規入国者数が増えるといっても、留学生を受け入れる大学や専門学校、日本語学校がコロナ以前と同等の状態にすぐに戻るとは到底思えない。
“留学生を逃さない”ことが優先
留学生頼みの日本語学校や専門学校の経営が窮地に追い込まれ、その「教育現場」も様変わりしている。先の専門学校職員が話す。 「2019年、東京福祉大学に在籍していた留学生約1600人が所在不明になっていることが判明し、ずさんな学校経営が大問題になりました。授業もせず、教員すらろくにいなかった実態が判明し、このときから文部科学省は留学生を受け入れる学校へ彼らの徹底的な管理を指示しました。留学生のなかには日本語学習を目的とはせず、出稼ぎ目当てで来日する者も少なくありませんが、我々もそれ以来、授業への出席や法律で定められている週28時間までの労働も遵守するよう厳しく指導し、授業の質も高めてきました。 しかし、現在は“留学生を逃さない”ことが優先されています。元々素行の悪い学生は、これまで一定数、中途退学していました。とにかく今はそういう留学生も辞められては困る。だから、ドロップアウトした留学生の受け皿となっていた外国人不良グループのリーダーに頼んで、何とか通学してもらえるようお願いするのです」
「在籍」させたいばかりに
結果、平気で遅刻、早退をする、まったく授業は聞かずに教室でスマホをいじる、周囲におかまいなしに音楽を聴く、もちろん課題などこなすはずもない、という学生が増えていったという。「在籍」させたいばかりに、やりたい放題にさせていると、専門学校の職員はため息をつく。先の日本語学校の役員も、「同じような状態になっている」と語る 「素行不良の留学生たちに引っ張られるように、他の学生たちもやる気をなくして授業をまともに聞かなくなりました。教員や職員の言うことも無視するので、授業はDVDを流すだけのこともあり、学級崩壊状態になっています。職員は授業以外の生活の指導も行わなくなったので、留学生の中には週28時間の制限を超えてアルバイトなどをしている者も多いといいます」 さらに、専門学校の職員は、こんな場面を目撃している。 「一度、校長が外国人不良グループのリーダーに留学生が退学しないよう説得を頼んでいるところに出くわしたのですが、あまりにペコペコしているので、そこまでするのかと驚きました。ですが、それほど経営者が窮地に立たされているということなのでしょう。こんな実態が文科省にバレれば、留学生の新規受け入れが認められなくなってしまうかもしれません」
1人紹介で10~50万円
挙げ句の果てには、学校と外国人不良グループの間に金銭の授受があるのではないか、という話も流れているという。こうした日本語学校、専門学校の窮状を知ってか、外国人不良グループは”人材斡旋”に手を出し始めたというのだ。どういうことなのか。 「地方の中小企業や農家は、技能実習生を受け入れることで労働力不足を補っていましたが、コロナで彼らが来日できなくなったため、人手不足が深刻化しています。これに目を付けた外国人不良グループが日本語学校や専門学校の留学生を1人につき10~50万円の斡旋料を取ってビジネスにしています。もちろん、週28時間以上働くのは違法ですが、雇う側も背に腹は代えられないようで、特に工場、介護の会社、農家から紹介してほしいという依頼が引きも切らないようです」 まぎれもない違法行為である。トラブルなどは起こっていないのだろうか。 「それはほとんど聞きません。留学生が在籍している学校関係者にこっそりと、どの程度日本語が話せるのか、まじめな性格かどうか、事前に聞いているようなんです。質の悪い留学生を紹介したら信用問題になりますし、警察沙汰になって目を付けられるようになったら今後、ビジネスができなくなる。外国人不良グループとはいえ、その辺は慎重に行っていますよ」(同) コロナ禍が日本にいる留学生と外国人不良グループをさらに結び付けてしまったようだ。今後、留学生の受け入れが再開された時、日本語学校や専門学校は本来の「学びの場」に戻ることはできるのだろうか。 真樹哲也 1985年、北関東生まれ。裏社会に入り込んで取材をし、アンダーグラウンド記事を書くことを得意としている。近著『ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団』(彩図社)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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