Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/f5cdc1e5932ba11c9b7a97eca089f559df1d5337
<世界屈指の登山家で写真家・映画監督でもあるジミー・チンが、世界7大陸での命懸けの冒険をまとめた作品集『ゼア・アンド・バック』から10の絶景を紹介>
ジミー・チンは、超高難度の山岳スポーツの写真家にしてアカデミー賞も受賞した映画監督、そして世界屈指の登山家でもある。エベレストのスキー滑降からヒマラヤ・メルー峰の岩壁「シャークスフィン」の征服まで、前人未到の偉業に挑む本物のスーパーヒーローだ。 【写真】ごく一部の冒険家しか実際に目にすることができない「10の絶景」写真を見る しかし、意外にも世界で最も高い花崗岩の壁の1つを登ることが人生最大のリスクだったとは思っていない。それより大きかったのは、20代前半で下した人生の選択だった。 「自分の夢に懸け、ヨセミテ(国立公園)に移り住み、車の中で生活した」と、チンは登山の夢を追う決意をした当時を本誌に語る。 「クライミングは私がずっとやりたかったことで、決断に迷いはなかったと思われるかもしれない。でも、その後は何年間も疑心暗鬼だった」 それでも夢を追い掛けてヨセミテに向かい、青いスバルの後部座席で6年間暮らした決断は、間違いなく報われた。チンは今、世界最高のクライマーの1人。さらに人類史上最も偉大な身体的勝利のいくつかを映像や写真に収めることにも成功した。 チンの人生は、大きな賭けと人間の持つ可能性の到達点であり、その偉業は彼だけものではない。 2019年にアカデミー賞を受賞した『フリーソロ』は、世界で最も有名な岩壁「エルキャピタン」の端にカメラを持ってぶら下がったチンが、ロープや安全装置を一切使わずに登るアレックス・オノルドの姿を撮影したドキュメンタリー。映画制作のパートナーであり妻でもあるエリザベス・チャイ・バサルヘリィとの2作目の共同監督作品だった(1作目は2人を恋仲にした15年の『MERU/メルー』)。 2人の最新作は、18年に洞窟内に閉じ込められたタイの少年サッカーチーム救出についてのドキュメンタリー『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』(日本公開2月11日)。既にアカデミー賞の有力候補と噂されている。 チンはほとんど誰も追っていけない場所に出掛けるが、20年以上にわたる世界7大陸での命懸けの冒険をまとめた新刊の作品集『ゼア・アンド・バック──崖っぷちからの写真』では、その世界を特等席でのぞき見ることができる。南極大陸の氷の頂から、サハラ砂漠南部の世界一高い砂岩の塔まで、圧倒的な写真の数々を眺めるだけで心臓の鼓動が少し速くなるはずだ。 『ゼア・アンド・バック──崖っぷちからの写真』 表紙写真に写っているのは、チョモランマの登山ガイドのカミ・シェルパとミンマ・シェルパ Reprinted with permission from THERE AND BACK. Copyright (c) 2021 Jimmy Chin, Published by Ten Speed Press.
エルキャピタン、ヨセミテ、南極……
01. ヒーローと一緒にスキー ブリティッシュコロンビア州(カナダ) アイランドレイクロッジの急斜面を滑り下りるスキーヤーのスコット・シュミット。チンいわく、「地球上で最も個性的で美しいターン」だ。幼少期のヒーローで今は友人のシュミットについて、チンは「子供の頃、初めて手にしたポスターはシュミットの写真だった。彼の映画は全部見た。ターンも彼を手本にした」と語っている。 02. 『フリーソロ』の撮影 エルキャピタン(米カリフォルニア州) アレックス・オノルドは、高さ1000メートル近いヨセミテの一枚岩「エルキャピタン」の頂上にロープや安全装置なしで到達した最初の人物。世界で最も有名なロッククライミングの聖地に挑むオノルドをスリル満点の映像で捉えたチンと妻エリザベス・チャイ・バサルヘリィの『フリーソロ』は、アカデミー長編ドキュメンタリー賞に輝いた。 03. 夕暮れ時の断崖に舞う ヨセミテ渓谷(米カリフォルニア州) 「ヨセミテ渓谷は、世界中のどこよりも大きな影響を人生とキャリアに与えた」と、チンは語る。写真は、断崖などの高所からパラシュートで降下する「ベースジャンプ」を撮影した一枚。ヨセミテ国立公園では禁止行為なので、人目を避けて夜明けか夕暮れに飛ぶジャンパーが多い。 04. 時には退く勇気も必要 パタゴニア(アルゼンチン) チンは2001年12月、登山家・環境保護活動家のブレイディ・ロビンソン(写真)とパタゴニアの尖峰セロトーレの「コンプレッサールート」に挑戦。しかし、危険な強風と迫り来る嵐が行く手を阻んだ。2人は氷の洞窟で震える夜を過ごし、強風に揺られながら氷河を懸垂下降したが、最終的に撤退を余儀なくされた。 05. ウルベタンナの牙を抜く 南極 チンは登山家のコンラッド・アンカー(写真)と共に、南極大陸の大西洋側の陸地クイーンモードランドにある標高2930メートルの「ウルベタンナ(狼の牙)」の新ルートを開拓。この壮大な冒険について、彼はこう語っている。「気温はマイナス30度、アイゼンの下で雪がキーキー音を立て、まばたきをゆっくりしすぎると目が凍ってしまいそうだった」 06. 「ファティマの手」に登る マリ サハラ砂漠南部にあり、自立する砂岩として世界最高峰の「ファティマの手」に登るシダー・ライトを撮ったときのことを、チンはこう書いている。「砂漠とそこに住む人々の本質を捉えた写真を撮りたかった。かつて誰も見たことのない写真を撮りたいという思いもあった」
エネディ砂漠、ヒマラヤ、南陵ルート、カムチャッカ
07. エネディ砂漠で重力と闘う チャド 世界のさまざまな僻地での初登頂を捉えるのは、チンの得意とするところ。ここではジェームズ・ピアソンとマーク・シノットがチャドにある印象的な砂岩の岩山、バシケレ・アーチを初登頂する姿を撮影した。「マークは重力との新たな闘いの場を見つけることにたけている」と、チンは書く。 08. メルーで日光浴 ヒマラヤ(インド) マイナス30度近い気温の中、崖につるした簡易テントで一夜を過ごしたロッククライマーのレナン・オズターク(写真)が日光浴と景色を楽しんでいるところ。「直射日光に当たれるのは毎日1時間だけ。その温かさは本当にありがたかった」とチンは振り返る。オズタークらによるヒマラヤ山脈メルー峰の岩壁「シャークスフィン」の初登頂は、映画『MERU/メルー』になった。 09. キット・デローリエとチョモランマを滑降 チベットとネパール(南陵ルート) キット・デローリエ(写真)は七大陸の最高峰をスキーで滑降した最初の人。チョモランマ(エベレスト)がその最後の山だった。キットと彼女の夫ロブ・デローリエ、チンはチョモランマの頂上からスキーで滑降した初のアメリカ人であり、世界で初めて南陵ルートをスキーで滑った。チンはこう書く。「人生で最悪のスキーをするために、山で2カ月過ごしたことを私たちは笑い合った」 10. 僻地に降り立つ カムチャツカ半島(ロシア) チンは世界中の辺境地で、「エクストリームスポーツ」の離れ技を撮影してきた。写真は、ドキュメンタリー映画『フォース・フェーズ』の撮影中、ロシア極東で強風の中を進むスノーボーダーのトラビス・ライス。チンが言うように、トラビスは優美さと高度な技でスノーボードを進化させ、エクストリームスポーツの祭典「Xゲーム」で金メダルに2度輝いている。
キャスリーン・レリハン
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