「働き方改革」とともに、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)が進む日本の社会――外国人労働者のほか、高齢者、障がい者、LGBTなど、「働く人」の多様化が顕著だ。また、要介護者・がん患者などの存在も目立ってきている。それぞれの数字をもとに、日本の「ダイバーシティ&インクルージョン」の現在地を見てみよう。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部) *『インクルージョン&ダイバーシティマガジン「Oriijin(オリイジン)』2019年3月発売号「オリイジン2019」の掲載原稿を加筆修正 【この記事の画像を見る】 ● さまざまな場所で在留外国人を見かけるのは当たり前のこと あらゆる人が暮らし、働く社会――まず、外国人労働者関連では、2018年12月に出入国管理法改正案が成立し、2019年4月に施行された。それまでは技能実習生らに限られていた労働において、「特定技能」という新しい資格を設け、2020年現在、建設や介護など14分野で受け入れるようになっている。 厚生労働省の発表では、日本で働く外国人労働者は、2019年10月末時点で約165万人。2012年は約68万人だったので、7年あまりで2.5倍近く増えたことになる。全就業者に占める割合はさほどでもないが、コンビニや飲食店、建設工事現場などにおいて、外国人の姿を見かけることはもはや当たり前の状況だ。 背景にあるのは深刻な人手不足にほかならない。 地域や業種によっては求人倍率が5倍どころか10倍といったケースもあり、外国人労働者への期待は高く、数字上では、すでに日本人の派遣社員(約136万人 *2018年6月・厚生労働省調べ)よりも多くなっている。 たとえば、監理団体を通じて外国人が日本の企業で働く実状は、ダイバーシティ&インクルージョンマガジン「オリイジン」の掲載記事「『外国人労働者』との付き合い方が、これからの企業の生命線になる理由」でも明らかにしているので一読いただきたい。
当然、日本にいる外国人は労働者だけに限らない。2017年末時点で国内にいる中長期在留者は223万2026人、そのほか、在日韓国人・在日朝鮮人を中心とする特別永住者32万9822人を合わせると、256万1848人に達し、国・地域では195にのぼる(法務省調べ)。 増加が著しいのは、ベトナム、ネパール、インドネシアの3カ国だ。特にベトナムは前年比で30%以上も増え、フィリピンを抜いて3位となった。 自治体で在留外国人の人数が最も多いのは東京都の53万7502人。全国の2割以上を占め、これに、愛知県・大阪府・神奈川県・埼玉県が続く。外国人は都市部だけでなく、日本全国で増加中だ。その数は、長崎県を除く46都道府県で前年末を上回り、各地に外国人コミュニティも誕生している。 ● 人材の多様化が進んでいるのは、「働く人」に限らない 外国人労働者に限らず、日本社会では、いま、「働く人」の多様化が急速に進んでいる。 例えば、女性。2018年の女性の就業率は全年齢ベースで51.3%となり、50年ぶりに5割を超えた(総務省調べ)。また、女性の就業者増加数は約87万人で男性(約45万人)の2倍近い。 50年前は農業や自営業などの家業で働く女性が多かったが、いまは企業などに勤務する女性がほとんどである。人手不足とともに、育児と両立して働きやすい環境作りが一定程度進んでいるからだろう。日本における女性の社会進出は道半ばだが、数字や実例を見ていけば、着実に変わりつつあることは明らかだ。 高齢者や障がい者の就業も進んでいる。 2019年1月時点の日本の労働力人口=約6793万人のうち、65歳以上は862万人にのぼり、労働力人口総数に占める割合は12.7%と年々上昇し続けている(総務省調べ)。 障がい者についても、2019年時点で約56万人が民間企業で働いており、16年連続で過去最高を更新した(厚生労働省調べ)。障害者雇用促進法において、民間企業で2.2%、国や地方公共団体・特殊法人などで2.5%の雇用率が義務づけられており、さらに2021年4月までにこの数字が引き上げられる予定だ。
● これからますます、あらゆる人がかたちづくる日本の社会 また、日常生活において何らかの不自由があるという点で、要介護者も社会の「多様性」をかたちづくる層と位置づけられるだろう。一定以上の要介護認定を受けている人は、税法上「障害者控除」の対象にもなっている。 障がい者は総人口の6~7%と言われており、要介護者は総人口の5%程度。単純に両方を合計すると日本人の10人に1人は、生活上で何らかの不自由を抱えていることになる。身内に障がい者や要介護者がいる人は、日本人全体の半分を超えるのではないだろうか。 LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の存在も忘れてはならない。およそ10年前である2010年以前は、この言葉も存在もあまり意識されてこなかったが、LGBTと称される人は総人口の約8%いると言われている。データ元となるアンケート調査の内容や定義によってこの数値は異なるものの、学校の1クラスが30人とすれば、周囲の者が認識しているかどうかは別として、複数人はLGBTに該当する可能性がある。 さらに健康面で言えば、日本人の寿命が伸びるにつれ、2018年で100万人を超えるがん患者がおり、がん患者の3人に1人は治療をしながら働いているとされる(国立がん研究センター推定)。 現在、自分は「社会における多数派」と思っていても、いつ少数派になるかは分からない。マジョリティ/マイノリティという区分自体がダイバーシティ社会の中ではもはやナンセンスなのかもしれない。 こうして、数字とともに周囲を見渡してみれば、日本の社会がさまざまな人によって形成され、「ダイバーシティ&インクルージョン」が着実に進んでいることに気づくだろう。 ※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2019」特集《ダイバーシティが日本を変える!》内のテキストを転載(一部加筆修正)したものです。 注)「オリイジン」の最新号は「オリイジン2020」です。
0 件のコメント:
コメントを投稿