2020年7月14日火曜日

北の大地に根付くか 北海道の野球独立リーグ、コロナに負けず始動

Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/1f2d25e1fab26350c21654d82d033dc8ffad3fed

配信、ヤフーニュースより

産経新聞

 北海道初の野球の独立リーグ「北海道ベースボールリーグ」(HBL)が今春、1年目のシーズンをスタートさせた。選手たちは拠点がある富良野市などで人手不足に悩むメロン農家や地元企業で働き、寮生活を送る。「地域貢献」と「選手育成」を2本柱に掲げてリーグを旗揚げしたのは、青年海外協力隊員として西アフリカのブルキナファソで野球を指導した経験を持つ出合祐太代表(37)。産声を上げた新リーグはコロナ禍に負けず、「北の大地」に根を張れるか。 【写真】北海道初の独立リーグを立ち上げた出合代表  プロ野球や他のリーグに先駆け、5月末に無観客で開催にこぎつけた。富良野市と美唄市に本拠地を置く2球団が平日午後を中心に週3、4回のペースで試合をこなし、6月中旬からは観客も動員した。今季は70試合程度を実施予定だ。  四国や北信越などを拠点とする独立リーグと違い、トライアウトで集まった約30人の選手は無報酬でプレーする。プロを目指す選手もいるが、「レベルはまちまち」と出合代表。それでも週末にもなれば、新型コロナウイルス感染防止のために定めた上限200人の地元の人たちが観戦に駆けつけてくれる。  「選手のほとんどは北海道以外の出身。地元のおじちゃん、おばちゃんから応援してもらうことがモチベーションになっています」と出合代表。支持を広げるのには理由がある。  選手たちは昼間、人手不足に悩む地元企業や農家で働く。過疎化が進む地方で、選手は貴重な若者。地元開催のイベントにも積極的に参加して地域に溶け込む。選手は受け入れ先の企業から給料を受け取って生活する。このうち月5万円をリーグへ渡し、リーグは選手の食費や用具代などにあてる仕組みだ。  出合代表は「どうすれば、リーグがつぶれることなく、継続していけるか。そのための仕組み作りを考え、地元の人たちのニーズともマッチする運営方法にたどり着きました。地域貢献と野球振興が両立できるアイデア」と胸を張る。  HBLは2023年までに道内に4チーム、26年に6チーム、そして30年には8チームを置くことを目標に掲げる。出合代表によると「この仕組みなら、ぜひやりたい」と名乗りを上げる自治体や民間企業から問い合わせがあり、予定よりも早くチーム数が拡充できそうだという。  出合代表は故郷の富良野市内でパン屋を営み、「午前3時に起きて、パンを焼いて昼まで店で働いています。その後はリーグ戦の打ち合わせなどが続き、試合がある日は、球場にも足を運びます」と二足のわらじを履く。  大学まで野球に打ち込んだ出合代表がHBLを立ち上げるきっかけになったのは、2008年から2年間、ブルキナファソで子供たちの指導に携わったことだという。現地は停電や断水が茶飯事で、水不足も深刻だった。「国のスポーツ省が管轄する野球連盟に所属することになったのですが、『好きにやってくれたらいい』と言われただけでした」と苦笑する。ゼロからの立ち上げ。「どうやって選手を集めよう」と悩んでいたとき、「本当に偶然、目の前を通りかかった」という子供に声をかけると、野球に興味を示してくれた。その後、友達も連れてきてくれて、口コミで仲間が増えていった。数個のグローブと金属バットを使い、広場で“野球ごっこ”からスタートさせた。  日本から持ち込んだ「夏の甲子園」の映像を見せると、子供たちが「僕たちもこんなふうになりたい」と目を輝かせた。「子供たちの夢を後押ししたい」と一時帰国した際、母校の高校や大学、北海道の人たちから寄付金を集め、現地の子供たちを日本に招いた。当時10~13歳の子供たちが日本でプロ野球や高校野球を観戦。夢をさらに膨らませた。このときの一人が22歳になった現在、日本の独立リーグ「高知ファイティングドッグス」でプレーするまでに成長した。  ブルキナファソでの経験をもとに「いろんな若い選手たちにチャンスが提供できるリーグを作りたい」と決意を固め、帰国後は働きながら立ち上げに向けた準備を進めてきた。  HBLは海外にも門戸を開き、現在はコロナ禍で渡航できていないが、フランス、フィンランド、ネパール、米国、韓国、ブルキナファソから6選手も加入予定だ。実現はしなかったが、リーグ発足1年目に夢を追う「シンボル」として、現役復帰を目指すと公言した元日本ハムのスター選手でメジャーでも活躍した新庄剛志氏にもオファーを出した。  「いつか、プロ野球のドラフトにかかるような選手が誕生してほしい」。壮大な挑戦はまだ始まったばかりだ。(運動部 田中充)

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