新型コロナウイルスの影響で仕事を失った沖縄県内の外国人労働者が苦境に陥っている。一部の在留外国人は政府の一律10万円の特別定額給付金や、休業などで収入が減った人を支援する特例貸し付けの対象外となっている。申請を断られたネパール出身の女性は「帰国のお金もなく、頭がおかしくなりそう」と窮状を訴えている。

役所の窓口で給付金について確認するネパール出身の女性=19日、那覇市役所

■突然の解雇

 来沖6年目で昨年春に県内の専門学校を卒業し本島北部のホテルに就職したネパール出身の女性(34)。転職のため2月、那覇市に引っ越して那覇空港内の仕事に就いたが3月末、突然退職届を書かされ、解雇された。4月17日付で就労ビザの期限切れを迎え、在留資格が出国を準備するための3カ月の「短期滞在」になった。「悲しくて、部屋に閉じこもって泣いていた」

 女性には帰国できない事情がある。沖縄留学のために両親が背負ってくれた借金はまだ70万円も残っている。「ネパールでは若者の年収はわずか5万円ほど。借金を全部返すまで帰れない」と目を潤ませる。

 4月からハローワークを訪ねるなど、ひたすら仕事を探し続けた。「今後どうなるか不安だ」とし、食料費も月2千~3千円まで削減。状況を知った友人などからもらったスパゲティや米、タマネギなどで何とか食いつないできた。

■給付対象外

 10万円の特別給付金申請書が届かないため市役所の窓口を訪ねると「ビザが短期滞在に変更されたのに伴い、住民票が取り消された」と告げられた。

 国は4月27日時点で住民基本台帳に登録されている人を10万円給付の基準とする。沖縄に5年以上住み続けてきた女性も、給付の対象外とされた。那覇市の担当者は「これまでも(女性と)同様の問い合わせが数件あった。国に相談してみたが、対応方法の指示がなかった」と説明する。

 女性は「悲しい。給付金をもらったら生活が少し助かると思った。いつ再就職できるか分からない。貯金で来月までの家賃をぎりぎり払えるかどうか」と話す。

 6月中旬、県外のリゾートホテルに就職が内定し、就労ビザを再申請した。ただコロナの影響で再就職先で雇用が保障されるのか、先行きは不透明だ。「もし今回もビザが下りなかったら、さらに借金をしてでもネパールの家族の元に帰ると決めた」という。

 「私より苦しい人もいるかもしれない。死ぬことを考えず、何があっても生きるようにする」。女性は静かに語り、前を向いた。

(社会部・徐潮)