Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/0f3714812d45c6f0ea7c738fe290c6d4797036a0
「ガチネパ」とは?
最近広く知られるようになったことですが、日本のインド料理店の厨房で働いている人の多くは、実はインド人ではなく、ナンもバターチキンも食べたことがないネパール人。ネパールはもともと海外に働きに出る男性が多い国柄で、近年は政情不安が続いて失業率が高まり、海外に出る人がさらに増加。 中でも日本は、留学資格や技能ビザのハードルが低いため行き先として人気があり、2006年には7844人だった在日ネパール人の数が、2020年には12倍の9万9582人に増加(今後は円安で急減していくでしょうが)。特に新大久保周辺は、3000人近くが集中して住んでおり、「リトル・カトマンズ」と呼ばれています。
日本のネパール料理店はすべて庶民向けの味
ネパールは、我々日本人と同じモンゴロイドの顔をしたグルン族からインド人に近いチェトリ族、料理がうまいと評判のタカリ族(ネパール料理店で「タカリ」と店名につく店は、ウチはタカリ族が調理してますというアピールです)まで、129もの民族からなる多民族国家。公用文字はインドと同じですが、話し言葉は8割が別。 昔はインド同様厳しいカースト制があったそうですが、インド料理は日本に宗主国のイギリスを経由して入ってきたため、初期の日本のインド料理店がイギリス人も行けるカースト上位者向けの店ばかりだったのに対し(例えば、「タンドール窯」はインドでは王様の屋敷の厨房にしかなかったので、庶民はナンやタンドリーチキンを食べたことがないそうです)、ネパールの外食店にはカーストによる違いはなく、日本のネパール料理店はすべて庶民の店だそうです。 民族やカーストに関係なく、ネパール人が朝食と夕食に毎日食べているのが「ダルバート」(昼食は麺や炒飯など人によって違うそうです)。「ダル」とは豆のスープ、「バート」とは炊いた米。 「ダルバート」とは、この2つのほか、上図のように、メインのカレー、塩を使わない青菜のスパイス炒めの「タルカリ」、逆に塩を効かせた野菜果物の漬物「アチャール」、野菜を乳酸発酵させた「グルントゥク」、ジャム状ソース「チャツネ」などを1枚の大皿にのせた定食のこと。 1枚の大皿に様々な料理を盛る定食は、南インドでは「ミールス」、北インドの「ターリー」と呼ばれ、インド文化圏ではおなじみのスタイル。ただし、ネパールのダルバートがインドのそれと違うのは、スパイスをあまり使わず味があっさりしていること。 そして、スリランカ・カレーのように全部をグチャグチャに混ぜるのではなく、大皿の手前にスペースを作り、そこで好きなものだけを混ぜて口に運ぶのがネパールスタイルだそうです(実はスリランカでも、日本で言われているほど全部を混ぜたりしないそうですが)。
ネパール人が調理するインド料理店で出す「インネパ」
そしてネパール料理のもうひとつの特徴が、日本同様、串焼きや餃子(モモ)などに代表される少量小皿の酒のつまみが発達していること。 ネパール人が調理するインド料理店(壁にネパール国旗が張ってあるのですぐわかります)は、マニアの間では「インネパ」と呼ばれていますが、近所の「インネパ」に足しげく通って店のネパール人と仲よくなり、料理人にちょっとお願いしたりすると、酒肴として郷里の小皿料理を出してくれて、これが侮れないおいしさなんだそうで──雑誌『dancyu』のWebサイトに去年から連載されているコラム「インネパ食堂で飲む!」は、まさにそうしたコンセプト。 そして、これまでインドとひとくくりにされてきたネパールの人々が、自国の食文化に誇りを持ち、「ダルバート」や少量小皿のつまみを前面に押し出したガチなネパール料理店「ガチネパ」が、今、東京のあちこちに誕生しています。
新大久保では以前からあった「ガチネパ」
実は「ガチネパ」は、新大久保のリトル・カトマンズでは以前から当たり前の存在で、5~6年前の最盛期には在日ネパール人向けガチネパ食堂が30軒近くあり、それらの多くは、金のない留学生たちのために、ダルバートを500円で出していました。 しかも「ダル」と「バート」はおかわり自由! が、日本人がワンコインで満腹になれるとの噂を聞きつけて押し寄せ始めたため、今ではどの店もダルバートを600~700円に値上げしています。
「ガチネパ」のおすすめ店
最もユニークな「ガチネパ」は、横浜駅から徒歩10分のところにある4階建て雑居ビルの屋上に2019年にオープンした『ルーフトップ ビアガーデン ヨコハマ』でしょう。 店名だけ聞くととてもネパール料理店とは思えませんが、実はカトマンズにはこうしたビルの屋上の店がたくさんあって、通に言わせると、むしろこのほうが本場っぽいんだそうで。料理も極めて本格的です。 一方、ネパール料理通がこぞって、初心者が行くならここと挙げるのが、豪徳寺に2020年にオープンした『オールドネパール』──この店は、ネパール専門の旅行会社から料理人に転身した本田遼が2015年に大阪に出した「ダルバート」の専門店『ダルバート食堂』の支店で、店内はシックで清潔。女性でも抵抗なく入れる店です。 もう1店、おすすめが、今年6月に根津にオープンした『チャングラ』です。等々力と藤沢でネパール産コーヒー専門店『YETI ROASTERY. COFFEE』を経営するネパール人のアミット・チェトリが不忍通り沿いに出したこの店のダルバートは、全然辛くないので、カレー好きはいささか戸惑いますが、実はこれがネパールのスタンダードな味。本場の味を知りたいならここでしょう。 『チャングラ』は、等々力と藤沢でネパール産コーヒー店を経営するアミット・チェトリが今年6月、根津の不忍通り沿いに出したネパール料理店。ウリのダルバートは1650円。ネパールピザなどのおかずがプラスされた「チャングラ・セット」が2800円。奥に細長い26席の店内はモダンで清潔。男性2人のネパール人スタッフがおぼつかない日本語で食べ方を一生懸命説明してくれるのは好感が持てます。初心者がネパール料理を体験するならここでしょう。◆ 住所:文京区根津 2-20-1 ◆電話:03・5815・4878 【秘訣】地味な国の料理でも、歴史と文化があれば必ずウケる 取材・文/ホイチョイ・プロダクションズ
@DIME編集部
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