Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/c97ebef7d7c427bc7d184ec6cb0ecea166ff19c4
【列島エイリアンズ】 3年に及んだパンデミックも、今回こそはようやく収束してくれそうな雰囲気だ。街角でも外国人観光客の姿もチラホラと見かけるようになった。 しかし、ここ数年、すっかり忘れていた「観光公害」も再び表面化し始めている。交通渋滞や混雑などいろいろあるが、なかでも人命に直結する喫緊の問題が、訪日外国人客による交通事故だ。 白銀の世界を目当てに多くの訪日客が訪れる北海道では、レンタカーによる事故が続発している。 1月10日、北海道の上富良野町では、レンタカーとダンプカーが交差点で出合い頭に衝突し、レンタカーに乗っていた4人のうち女性と乳児が死亡する事故が発生。4人はいずれもシンガポール国籍で、日本に観光にきていたという。地元紙の報道によると、レンタカー側に一時停止の標識があったが、停止を怠ったとみられている。 北海道士幌町では2月14日、中国籍の男性が運転するレンタカーと30代女性が運転する軽乗用車が、これも出合い頭に正面衝突。女性が骨折して病院に搬送された。この事故でもレンタカー側に一時停止の標識があったとされる。 車社会の北海道だけに訪日客もレンタカーを利用する機会が多い。その訪日客が運転する車が起こしやすい違反が一時不停止だ。 北海道警が、2022年までの5年間で発生した外国人の運転によるレンタカーの事故80件のパターンを調べたところ、出合い頭の事故が34件で最も多かった。さらに80件のうち20件は一時不停止だったそうだ。 理由の1つは標識のデザインにあるのかもしれない。一時停止は赤い逆三角形の中央に白字で「止まれ」の文字。日本人なら誰でも知っている図柄である。 ところが、来日したばかりで運転する外国人に直感的にその意味が分かる人は少ない。 世界的には、一時停止の標識は赤い八角形が主流だ。アメリカやイギリス、フランス、中国、韓国、タイなど訪日客が多い国々の多くで採用されている標識は、そこに書かれてある文字こそ違うが、赤い八角形という点では共通している。 キューバやパキスタン、リビアなどでは、赤丸の中に赤い逆三角形が描かれた一時停止の標識が採用されているが、丸のない赤い逆三角形は、日本独自のデザインのようだ。 1960年代までは、日本でも赤い八角形の一時停止標識が使われていたという。しかし63年以降に新しく設置された同標識は、いまの形に変更されたようだ。当時はドイツも赤い逆三角形を一時停止標識として採用しており、それにならったという説もある。しかしドイツも今では赤い八角形である。 「日本で運転するなら日本の標識を覚えるべきだ」と言えばそれまでだが、ジュネーブ条約の下、国際運転免許証による運転を認めるのであれば、外国人運転者による事故の可能性をできるだけ排除する必要があるのではないだろうか。 ちなみに東京五輪開催を機に、英語の「STOP」が併記された一時停止標識も増えてきてはいるが、まだまだ広がりに欠けている。 =つづく ■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。 ■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。
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