Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/a32c0a0ad78c7b51b4aabbe9ed729b2dcb3212d9
最近、コンビニの店頭に外国人店員が戻っていると感じませんか? コロナ禍による入国制限が大幅に緩和され、外国人留学生の訪日も徐々に増えています。コンビニはセルフレジの拡大により省人化を進めていますが、人手不足はいまだ解消されていません。外国人店員は重要な戦力です。では、コンビニがどのようにして外国人を受け入れ、戦力化を図ってきたのか、その一端を解説します。
1 コンビニの外国人店員、東京23区で3割に
コンビニの仕事は多岐に渡ります。 商品の発注に陳列、揚げ物の調理やおでんの仕込み、接客に清掃など、覚える仕事が山ほどあるのです。それでもコンビニの仕事は単純労働と見なされ、就労ビザが活用できず、外国籍の従業員(外国人店員)のおおよそ8割が「留学生」の資格で働いています(残り2割が永住者や定住者など)。 留学生は1週間に28時間の労働が認められる「資格外活動の許可」を申請して就労しています。コンビニで働く外国人の国籍は、ベトナムやネパールが多く、次いで中国、ウズベキスタン、スリランカといった順でした。その留学生がコロナ禍の渡航制限により激減しました。 出入国在留管理庁の公式サイト「令和4年6月末現在における在留外国人数について」によると、2019年末に34万5791人だった留学生が20年末に28万901人、21年末に20万7830人と、2年間で6割にまで減少したのです。 一方で、飲食店の営業自粛やイベント関連の休止により、コンビニに職を求める日本人が急増、コロナ禍前の人手不足を解消したコンビニ店舗も多く見られました。 しかし、入国制限が徐々に緩和され、22年6月末で在留の留学生が26万767人と21年末比で25%の増加、23年3月現在、その数はさらに拡大していると見てよいでしょう。コンビニで働く外国人店員の割合は、コロナ禍以前で8~9%、東京23区に限れば、おおよそ3割に上っていました。現在は19年と比較して少なくなっているものの、これから本格的に戻ってくると予想されます。 そこで、コンビニ店舗には、外国人の応募を促進し、十分に教育し、お店の戦力として育成することが課題となっています。コンビニ各社、各店舗には、しっかりとした受け入れ体制が求められます。
2 週28時間を超えるアルバイトは禁止
採用に関しては、日本人の採用と同様に各店舗が個別に実施しています。外国人の採用に未経験の加盟店も多く、各チェーン本部ではガイドブックを用意しています。 ガイドブックには、在留資格には就労制限の有無があり、留学生や家族滞在者は就労が許可されていませんが、入国管理局から「資格外活動の許可」を得ていれば週28時間以内を条件にアルバイトが可能といった基礎知識が記されています。 ちなみに就労時間は、1週間のどこから数えても、28時間の上限を超えないように注意が必要です。学生の場合は長期休暇があるので、この期間中は1日8時間、週40時間の就労が特例として認められています。 こうした上限時間をオーバーし、発覚した場合は、加盟店オーナーと外国人店員の双方が罰則の対象になります。
3 外国人採用の秘訣は「好循環」を生み出すこと 悪評には注意
そこで、外国人店員の就労状況については、チェーン本部も定期的に点検を実施しています。各店舗で働く店員の労務管理は、加盟店の責任において実施すべき性質のものです。ただし本部としても「オーバーワークになっていませんか?」「在留期限が切れている店員はいませんか?」など、スーパーバイザー(店舗相談員)がオーナーと間違いはないか一緒に確認しています。 新しい取り組みとして、ファミリーマートでは雇用主であるオーナーに向けた外国人店員の労務管理アプリを導入しています。在留カードのICチップの情報から、氏名、国籍、生年月日、住所などの情報とともに、雇用する前に確認が必要な情報が表示され、オーナーの負担を軽減させています。 こうした雇用条件はもちろん、採用の中心となる語学留学生であれば、専門学校や大学に進む計画、帰国の予定、ビザの有効期限などが注意点としてガイドブックなどに記されています。 外国人店員を採用する秘訣は、結局のところ王道になりますが「好循環」を生み出すことです。一人の外国人店員が店舗で勤務し、そこで仕事が楽しいと感じれば、その友人が来日したときに働き手として積極的に紹介してもらえます。やはり言葉や文化が同じ国同士の店員がいると安心なのでしょう。 外国人店員を、人材として大切にするオーナーのもとには、新たな外国人店員が集まって、共存関係が構築できます。 しかし、逆に考えるとオーナーが、初めて採用する国の店員とトラブルを起こし、離職された場合は、その国のネットワークでお店に悪評が立つことを覚悟しなければなりません。
4 日本独特の文化を学ぶことが自身の身を守る
トラブルの元に文化の違いがよく指摘されます。「郷に入っては郷に従え」なのだから、日本のルールや慣習に従うべきは、その通りなのですが、日本人と同じ教育の仕方を押し通し、相手に譲歩をしなければ、外国人店員の定着が難しくなります。 そこでチェーン本部が強化してきたのが、外国人店員を戦力にするための教育者用のマニュアルです。紙ベースだけでなく動画も制作して、迎え入れる側の意識改善を図っています。 その教え手の育成は、オーナーだけにとどまりません。 例えば、あるチェーン本部では、本部のトレーナーが、既存の外国人店員に対して、新しく入ってくる外国人に、どのように教えたらよいのかの研修を実施していました。 基本的なオペレーションや店舗のルールについて、同じ国の店員同士であれば、日本独特のきめ細かな所作を確認できるでしょう。 例えば、店内でお客とすれ違う際に(コロナ禍で控える店も多いのですが)「いらっしゃいませ」と軽く会釈します。挨拶の強弱、お辞儀の角度の違いも、外国人店員が会得するのは容易ではありません。母国と異なる点は、同じ国の店員であれば、理解し合えます。 あるいは、日本には「おわび文化」と呼ばれる独特の習慣があります。謝ることがとても大切であり、自ら非を認めることで、人間関係を良くすることができます。こうした日本独特の文化を学ぶことは、自身の身を守ることにもつながります。 仮に、外国人店員が日本語学校から大学に進学し、その間、店舗に勤務していれば、4年から5年のベテラン店員になります。アルバイトのリーダー的な立場で、日本人も含めた新人店員に対して、教える側に回れば、新たな発見があるかもしれないし、コンビニの仕事の魅力を、改めて感じてもらえるかもしれません。
5 お店のルール、やさしい日本語に置き換える工夫
また、教育について、外国人店員が何につまずくのか、ローソンの店舗人財育成推進部によると、日本人には当たり前でも、外国人店員には難解なお店のルールを整理して、加盟店と情報共有を図っています。 例えば、外国人店員が最も迷うのが、カウンターでお客に渡す、箸とスプーンとフォークです。豚汁は箸だがミネストローネはスプーン、カツ丼は箸だがチャーハンはスプーン、焼きうどんは箸だがパスタはフォークです。見た目から判断できない商品は数多くあります。 他にも外国人店員に話す際に最も意識すべき点として、難解な言葉を、どう分かりやすく翻訳するかに腐心しています。例えば「法令順守」を音で聞いても、多くの外国人は聞き取れません。 そこで“必ず守らなくてはいけないルール”とか、もっと簡単にいえば、“約束”と置き換えるなど工夫しているお店もあります。 また、店内で頻繁に使われる指示に「前進立体陳列」があります。棚の奥に引っ込んだ商品を前に出し、ボリュームをつけて並べる手法ですが、言葉が難しい上に“ぜんちん(前陳)”と略してしまうオーナーもいます。英語の“フェースアップ”が分かりやすいかもしれませんし、言葉だけではなく、作業そのものの意義として、なぜ前陳が必要なのかを、しっかりと伝える努力をしています。 コンビニの草創期は、男子学生と近隣の主婦がアルバイトの中心でした。現在はそこに外国人と一部で高齢者も加わっています。店員もお客も、国際感覚を養う良い機会と捉えて、共生を図っていくことが望まれます。
6 コンビニは毎日数百人と接する職場
こうした状況を捉えて、セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は「多文化共生社会の実現」を目的に、2020年3月に一般社団法人「セブングローバルリンケージ」を設立しています。外国人材が安心して働き、安定した生活、そして人生設計が図れるように支援していくとしています。 こうした取り組みは、受け入れる企業が単体で担っていくには難しい面があります。セブン-イレブンにとっても、店舗経営のノウハウを有しているものの、外国人材の生活全般を支えていくには、 専門の知識や技術を持つ外部の企業や組織の力を借りた方がよいと考えています。 そこで、外国人材の共生社会を実現させるために、目的を共有する企業や組織が連携していく必要があります。その連携のために、セブングローバルリンケージは共通のプラットフォームを用意。必要な専門領域を持つ企業(10企業1団体、2月末時点)や組織が参加することにより、人材の開発や研修、セブン-イレブンの加盟店へのマッチング、在留手続きや生活全般の支援を推進しています。 これら企業の支援を受けて、外国人材に対して「ワンストップサポートステーション」を提供、以下の4つの受け入れ機能を持たせています。 第1に「(外国人材の)開発サポート」、教育や研修を通して外国人材を創出、適性人材を加盟店にマッチングさせます。 第2に「(加盟店への)受入サポート」、加盟店への研修や手続き支援、教育支援を実施します。研修内容は、異文化の人たちと接するときの心構えや注意点、外国人材に理解されやすい日本語など、受け入れる加盟店側の体制づくりをサポートしていきます。 第3に「(外国人材への)生活サポート」、外国人材が日本で不安なく暮らせるような、さまざまな支援を実施していきます。住居の確保や医療や保険の手続き、借入れや、預け入れ、送金などの各種手続きをサポートしています。 第4に地域社会と連携して「多文化共生推進」の理念を掲げています。現在もコンビニで働く留学生たちは、住民の一人として地域社会で共生しています。コンビニは日本社会にエントリーする上で入りやすい職場です。 生活圏に立地するコンビニで働くことにより、毎日数百人と接する機会を持つことになります。コンビニは地域社会の拠点の一つですから、そこでは働く外国人材は、地域社会の一員として機能することになります。来店したお客の側も、外国人が生き生きと働いている姿を見て、多文化共生とは何かを理解することになるでしょう。 こうした多文化共生社会を推進し、同時に人手不足を解消しながら、地域のインフラ、生活のライフラインとして、コンビニはその持続性を目指しています。
流通ジャーナリスト ・「月刊コンビニ」編集委員 梅澤聡
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