Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/e429eb1888d3d31c1bbaefeaf0b16d191cccfaf0
世界各地で新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」が猛威を振るう中、日本政府は厳格化した水際対策を維持し、〝防波堤〟の空港で国内への侵入をどうにか食い止めようとしている。国内でのオミクロン株の感染者は日を追うごとに増加しているが、その大半は空港検疫で見つかっている。世界有数の厳格な検疫体制を敷く香港での社命研修を終えて12月上旬に帰国した記者も、相当に強化されたことを実感した。一方で、政府の大幅な方針転換は、空港から指定宿泊施設の移動に長時間を要したり、検査官や外国人の警備員らが激務にさらされたりと、現場へのしわ寄せを生み出した。年末年始にかけて、帰国者数はピークを迎えるが、指定宿泊施設だけでなく、検疫関係者の人員確保も課題に上る。(共同通信=杉田正史) ▽厳重 12月5日昼、多くの店のシャッターは下り、人がまばらな香港国際空港。約7カ月前に入境した際、新型コロナのPCR検査で鼻に綿棒を挿入されたり、繰り返される健康状態の質問に答えるたびにマスクがずれて注意を受けたりと、日本の対策とは比較にならないほど厳重だった。
さらに、隔離期間は計21日間で、自身で予約したホテルの部屋から一歩も出られない。部屋のドアの内側には違反した場合に下される約35万円の罰金と禁錮6カ月の警告文が張ってある。腕にはGPS関連装置がまかれ、期間中には4、5回のPCR検査が待ち受けるなど“身元調査”の連続だった。 隔離費用は個人負担だったが、例えばある日の朝食はパンとゆで卵だけで、お世辞にも健康に配慮した食事とは思えなかった。 こうした入境時の印象が強烈で、念のため日本に戻る際は離陸まで余裕を持って着いたが、72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書を提示する程度で、すんなりと出国ゲートにたどり着いた。
「こちらで待機してください」。5日午後8時すぎに成田空港に降り立つと、検疫担当の女性が、出発地ごとに区分けされたエリアに帰国者を誘導する。既に他の地域からの帰国者らがパイプ椅子に座っていた。抗原検査の案内を待つ間、指定宿泊施設を出た後の滞在地や健康状態を報告するスマートフォン用アプリ「My SOS」のインストール状況、施設退所後の移動手段について、何度も確認があった。
透明の筒状の検査容器に唾液を入れ、2列になって検査結果が言い渡される待機場所に移る。昨年2月、新型コロナ感染者が中国で相次ぎ、一度目の社命研修を中断して北京から急きょ戻った時は、特段の検査もなく、強化された水際対策に驚いた。 ▽技能実習生が 6日午前0時。空港到着から4時間近くが経過していた。空港警備の担当者が、帰国者に割り当てられた番号を読み上げる。検査で「陰性」の判定が出た合図だ。1回に呼ばれるのは26人ほどで、専用バスに乗って政府指定の宿泊施設に向かう。この時点でようやく行き先が判明する。 政府が12月中旬までに国内の主要空港周辺に約1万3千室の隔離用の宿泊施設を確保した。ただ、空港検疫でオミクロン株が見つかるケースは急増しており、施設は埋まりつつある。宮城や愛知、大阪、福岡の4府県に移動を余儀なくされた帰国者も出始めている。空港で待機中にも「隔離用の宿泊施設のために飛行機で移動するのはつらい」と周囲から漏れ聞こえてきた。
一般的に抗原検査は約1時間で結果が出るが、時間がかっているのは宿泊施設側の調整の問題だと理解した。 「本日の勤務は午前0時までです」。空港警備員のネパール人男性が、日本人の責任者からの就業時刻の問いに答えていた。男性は帰国者に飲み物を配ったり、室外で待機しているバスに誘導したり、ずっと走り回っていた。男性に声を掛けると、技能実習生として来日したと言い、「同僚もネパール人ばかり。朝6時から働いている人もいる」と額から垂れた汗を拭った。 ▽長い時間 記者の番号が呼ばれ、腕時計に目をやると、午前3時を回っていた。行き先は空港から10分ほどのホテルだった。バスに乗ると、先ほどのネパール人の男性は乗客の積み荷作業まで担っていた。 ホテルのエントランス前に到着したところで、運転手から「入所手続きを行うロビーの混雑を避けるため、車内でお待ちください」とのアナウンス。結局、入所の手続きを終えてホテルの部屋に入ったのは午前5時半だった。厚生労働省の空港検疫の担当者は「11月上旬から水際対策を少しずつ緩和した。そんな中で、これまでにない対策強化が打ち出されて、準備が間に合わなかった」と語った。
入所中は決められた時間に1日3回、弁当が届けられる。香港のホテルよりも栄養に配慮された内容だった。部屋のドアの内側には、PCR検査時に唾液を出やすくするように梅干しとレモンの写真が張ってあった。 退所する8日午前7時前。部屋のドアノブに掛けられた検査キットを受け取り、再び唾液を容器に入れる。昼すぎ、退所の連絡が入りホテルを出る際も、スタッフは休みなく新たな帰国者の受け入れ手続きを進めていた。
0 件のコメント:
コメントを投稿