Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/6895c4bf90e676540addedf11e0aab455a91476a
2022年の干支はトラです。アジアに生息していて、文学や絵画などで描かれることも多い動物で、その力強いイメージどおり、ワイルドで危険な面もあります。そのトラをはじめ、野生の危険生物の生態について解説します。 ※本稿は「角川の集める図鑑GET! 危険生物」を一部抜粋・再構成したものです。 【写真】トラの生態 ■現在は絶滅危惧種になっているトラ トラが人を襲う事件はたびたび起こっています。特に被害が大きかったのが、1900~1907年にかけてインドとネパールの国境地帯、チャンパーワット周辺で、ベンガルトラが起こした事件です。
人間を襲っていたのは1頭のメスで、ジム・コーベットというハンターに射殺されるまでに、少なくとも436人が犠牲になったと言われています。その後もベンガルトラによる事件は起こっており、インド周辺では現在も毎年50人前後が亡くなっています。 トラによる人を襲撃する事件は、19世紀末に増え始めました。これは人間による森林の開発が始まったことが原因です。 21世紀に入っても、トラによる事件は起きています。シベリアに生息し、トラの亜種の中でも最も身体の大きいアムールトラは用心深く、人間を滅多に襲うことはありませんが、2002年1月に男性を襲う事件がありました。場所は中国北東部、ロシア国境近くの森で、襲われた男性は生き延びましたが、翌日1人の女性が襲われて殺されました。襲ったトラも重傷を負っており、しばらくして死亡しました。
その後の調べで、襲われた男性が密猟者で、トラを罠にかけて重傷を負わせていたことが判明し、男性は捕まりました。密猟者は骨などの身体の一部を薬の材料にしたり、毛皮をとったりするために、トラを狙います。 森林開発や密猟のために、トラは数を減らしていて、現在は絶滅危惧種になっています。 トラはネコ科最大の動物です。がっしりとした体格で、鋭いきばと力強い前あしで獲物を攻撃します。アジアに5種類の亜種がすんでいます。
亜種の中でもっとも数が多いのが、インド周辺にすむベンガルトラで、アムールトラの次に身体が大きく、シカやスイギュウなど大型の哺乳類を獲物にしています。中国に生息していた亜種アモイトラは、野生ではすでに絶滅したとされています。 ■狩りの成功率は10~20回に1回程度 トラは単独で行動し、活発にシカやイノシシなどの獲物を探し回ります。獲物を見つけると、背後や横から近づき、襲いかかります。獲物の肩や首を押さえつけて地面へと倒し、首にかみつきますが、大きな相手の場合は、のどに噛みついて窒息させます。
ただし、狩りの成功率は意外に低く、10回または20回に1回程度しか成功しません。 ジャガーはトラと同じネコ科の動物で、南アメリカの森林に生息する肉食哺乳類の代表です。ジャガーによる人間を襲撃する事件も起こっています。 2008年6月、ブラジル中央部のマットグロッソ州で、川で漁を行っていた男性がジャガーの襲撃にあい、死亡しました。男性は夜間にテントで寝ているところを襲われました。ジャガーはヒョウやトラなどと違い、人間を襲うことはほとんどありませんが、ブラジルでは、2007年と2010年にもジャガーが人間を襲撃する事件が起き、負傷者が出ています。
これらの事件が起こる背景には、農地や鉱山開発のため森が切り開かれ、ジャガーのすめる場所が少なくなっていることが関係していると考えられています。 ジャガーは南アメリカ大陸で最も大きなネコ科の動物です。模様はヒョウに似ていますが、身体付きはヒョウよりもがっしりとしています。木登りや泳ぎがうまく、鋭いきばや強力な前あしで、ペッカリーなどの哺乳類やワニなどを捕らえます。人間を積極的に攻撃することはありませんが、人間が襲われる事件がまれに起きています。
■ライオンやワニも近寄らない危険生物「カバ」 カバは日本の動物園でも飼育されていて、親しみのある動物の1つですが、生息地であるアフリカでは、たびたび人間を襲う事件を起こしています。 2014年11月、アフリカ西部のニジェール川でカバが渡し舟を攻撃し、乗客18人中、13人が死亡しました。場所はニジェールの首都ニアメの近くで、川を渡って通学していた12~13歳の子ども達が犠牲になりました。アフリカではカバによる被害はとても多く、年間で500人以上の死者が出ています。生息している場所が町や村に近く、人間だけではなく、放牧しているウシが襲われる事件もしばしば起きています。
カバは陸地にすむ動物ではゾウ、サイに次いで3番目に大きく、大きなものは約3tにもなります。攻撃的な性質で、縄張りに入ってきたり、危害を加えてきたりする相手には、鋭いきばで攻撃します。下あごの鋭いきば(犬歯)は、成長すると長さ50cm、重さ1kgを超える大きさになり、口は150度もの角度に開きます。 川で洗濯をしている人や漁をしている人、泳いでいる人などが襲われることも多く、数多くの野生動物がいるアフリカでも、特に危険な動物です。大人のカバには、ライオンやワニも近寄りません。
水上でも陸上でも、カバを見かけたらすぐに立ち去り、縄張りから離れる必要があります。カバはボートを引っくり返すことができ、また陸上では時速30kmを超える速さで走れます。カバは決まった道を通る習性があるため、カバの足跡がある道には近づかないことも大事です。 カバは基本的にアフリカにしか生息していませんでしたが、南アメリカのコロンビアでは、動物園で飼われていたカバの群れが野生化して川にすみついてしまっています。
■生物が人間に危険をもたらす4つの理由 なぜ生物はときに人間に危険をもたらす、「危険生物」となるのでしょうか。それには、4つの理由があります。 ①獲物を狩るため 肉食の生き物は、食べ物を得るために、他の生き物を獲物にしています。そして、獲物を狩るために、きばや爪、毒など、様々な強力な武器を持っています。人間を獲物にしている生き物はあまりいませんが、群れていたり、お腹を空かせたりしている場合は、人間を襲うことがあります。
②自分の身を守るため 普段おとなしい生き物でも、自分達を獲物にしようとする肉食の生き物などに狙われ、逃げられないようなら、身を守るために必死になって戦います。また、自分達が食べられないように体内に毒を持つ生き物もいます。毒がある生き物の中には、派手な体色をしていて、「毒があるぞ」と敵に示しているものもいます。 ③子どもや仲間を守るため 多くの生き物は、自分達が生活する上で、安全が確保できる場所である「縄張り」を持っています。縄張りに近づいてきたり、侵入してきたりした相手に対し、自分の子どもや群れを守るために攻撃することがあります。
④子孫を残すため 生き物の中には、子どもをつくる時期である繁殖期になると、自分の子どもを産んでくれるメスをめぐって、オス同士で争うものがいます。そのため、繁殖期のオスは気が荒くなり、人間が近づくと攻撃されたり、争いに巻き込まれたりすることがあります。 生物はすべて、食べるためや身を守るため、子孫を残すためなど、生きるために必死で戦っています。それぞれがきばや、爪、角、巨大な身体、毒など、武器となる特徴を持ち、生き抜いています。
「危険生物」という生き物がいるわけではなく、生き物たちの生きるための戦いを邪魔したり、その戦いの場に不用意に近づいたり、彼らの生活を脅かすことが、人にとって危険となるのです。生き物たちが戦う理由を知り、尊重することが、身を危険から守ることにつながります。
『角川の集める図鑑GET!』編集部
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