Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/e3b473c4043294c99a04df8bc7a4aa67e912ec3f
2022年は寅(とら)年。日本に野生のトラは生息していませんが、干支の一つとして古くから親しまれ、ことわざや格言にも登場、動物園でも飼育されている身近な動物です。その雄々しさ、強さとともに、まるで大きな猫のような愛らしいしぐさも人々をひきつけます。しかし今、野生のトラは非常に厳しい状況に置かれています。そこで寅年にちなみ、野生のトラを取り巻く環境について、保護活動に取り組むWWFジャパンに取材しました。 【写真】追いかけっこをする兄弟のトラ。まるで猫?
動物園より少ない野生のトラの数
世界に生息する野生のトラは、2010年時点で推定3,200頭。これは、世界の動物園で飼育されているトラよりも少ない数です。20世紀初頭には約10万頭いたという野生のトラは、生息地である森の減少と乱獲・密猟により、わずか100年で激減、すでに絶滅したトラも3亜種います。そこで、2010年の寅年にスタートしたのが、「世界トラ回復プログラム」。 トラが生息している13の国が、次の寅年、つまり2022年までに野生トラの数を2倍の6,000頭に増やすという国際目標に合意し、国としてトラの生息数回復に取り組み始めたのです。現在、WWFなどの国際機関も協力しながら、保護活動が進められています。 WWFジャパンは、極東ロシア、タイ、ミャンマー、インドネシアのスマトラ島で、現地のNGOへの資金援助、技術指導、人材育成などを通じて、主に以下の活動に取り組んでいます。 ・個体数や生息範囲など生息状況の調査 ・防火帯の整備など森林火災対策 ・違法行為(密猟・違法な伐採など)の監視 ・森林を再生するための植林 ・負傷したトラの救護と治療、野生復帰 ・関係政府への働きかけ
数を増やすだけでは十分ではない保護活動
生息数6,000頭を達成できたかは、現在、調査が進められているところなので、正式な発表までわかりませんが、これまでの取り組みの効果もあり、ロシアやネパール、ブータンでは、生息数が増えていることが報告されています。 一方で、トラの保護に対する政府の姿勢は国によって温度差があり、東南アジアではトラの生息が確認できず、地域的な絶滅が危惧されているところもあります。また、ミャンマーではクーデターが発生し、活動そのものを中断せざるを得なくなりました。ネコ科動物に感染するとされる新型コロナウイルスの拡大も、野生のトラにとっては大きな脅威となっています。 生息数が増えているロシアでも、新たな生息地の確保という次なる課題が出てきています。ロシアの冷涼な針葉樹の森は、熱帯雨林に比べて獲物となる動物が少なく、トラはより広大ななわばりを必要とします。 例えば東京都の広さの森があったとしても、そこに生息できるトラは、オスならわずか1~2頭、メスでも4~5頭。減少を続けるロシアの森林では、野生のトラはすでに飽和状態。このままなわばりを持てないトラが増えると、人里に近づいたトラと人間の間に不幸な事故が起きる危険も高まってしまいます。
野生のトラのためにできること
日本も多く輸入している木材や紙、パーム油、天然ゴムなどを生産するために、特に東南アジアでは貴重な自然林が伐採されています。トラの生息数を回復するためには、この伐採をなくし、自然豊かな森をいかに維持していくかがカギとなります。 そのために、WWFジャパンが取り組んでいるのが、環境に配慮してつくられた製品に付ける認証制度の普及です。印として、紙製品や木材製には「FSC○R」(※1)、パーム油を含む製品(せっけん、洗剤など)には「RSPO」(※2)マークを付け、消費者が選べるようにしています。 20数年前、認証制度を日本に導入しようという提案がWWFジャパンであったとき、スタッフの中にさえ「日本では難しい」という声があったといいます。しかし今、認証制度に賛同する企業は増えています。数年前はあまり見かけなかったマーク付きの製品を、コンビニやスーパー、ドラッグストアで目にすることも増えました。消費者も企業も、ゆっくりではありますが、変わっているのかもしれません。 環境に配慮した製品を選ぶことが、森林の減少を防ぎ、野生のトラを守る。遠いと思っていた野生のトラとの距離は、意外に近かったのかもしれません。これから先もずっと最大のネコ科動物として君臨し続けてもらうために、まずはできるところから始めてみませんか。 (※1)FSC(R):森林管理協議会(Forest Stewardship Council(R)) (※2)RSPO:持続可能なパーム油のための円卓会議
sippo(朝日新聞社)
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