2019年5月29日水曜日

米カジノ企業、アジアで新興勢力との競争激化

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190508-00012929-wsj-bus_all
5/8(水) 、ヤフーニュースより
 近年マカオで大きな収益を上げてきた米カジノ運営大手各社は、中国からの観光客や富裕なギャンブラーを奪おうとするアジア各地の新興カジノとの競争激化に直面している。

 格付け会社フィッチ・レーティングスの推計によれば、2018年のマカオのギャンブル事業収入は370億ドル(約4兆0800億円)で、ラスベガス大通りの6倍、他のアジア地域のカジノ収入合計の倍以上に上った。それでもマカオの収入の伸び率は、今年4月には過去3年間で最も低くなった。背景には大金を投じるギャンブラーの減少が続いていることがある。

 マカオの2018年の収入伸び率は前年比13%で、アジアの他の新興カジノ市場の伸びを下回った。フィッチによれば、シンガポール・韓国・フィリピン・オーストラリアを合わせた収入は41%増えた。ラスベガスの伸び率は約2%だった。アナリストらは、マカオ以外のアジアにおける成長の可能性は大きいとみている。

 ギャンブル企業を主要顧客とする投資銀行ユニオン・ゲーミングのデータによれば、今年から2021年にかけてマカオ以外のアジア全域(ベトナムやロシア極東地域を含む)で、中国人の需要を当て込んで計100億ドル前後のカジノ事業の営業が始まる予定だ。さらに日本では2025年までに225億ドルの投資が見込まれている。

 こうした状況で、米大手カジノ運営会社であるラスベガス・サンズ、ウィン・リゾーツ、MGMリゾーツ・インターナショナルへの圧力が強まっている。3社とも、2022年に期限を迎えるマカオでの事業ライセンスが更新されるかどうか分からないとしている。サンズはシンガポールでカジノを運営しているが、ウィンとMGMはマカオ以外のアジア太平洋地域に進出していない。日本では昨年7月にカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が成立し、カジノ事業が合法化されたことを受け、3社は営業ライセンス獲得を期待して日本市場への関心を強めている。

 サンズは2002年にマカオで最初のカジノ事業ライセンスを獲得した外国企業の一つ。18年の年次報告書で、マカオの事業は他のアジア地域からの競争にさらされていると指摘。特に東南アジアでのカジノ急増に言及した。

 MGMはアジア全域での長期的な成長に向けて努力しているとし、日本にも事業機会があるとみていると述べた。サンズとウィンからはコメントを得ることができなかった。

 マカオは中国で唯一ギャンブルが合法化されている地域だ。大口賭博者からの収入は減り続けており、今年も最大10%減ると見込まれている。業界の専門家は、中国の大口賭博者の中には経済の不確実性によって国内にとどまる人もいるものの、他のアジアのカジノに出掛ける人もいるとの見方で一致している。

 中国人のカジノ訪問者数の公式集計はないが、業界の専門家はカジノのある国への観光客数をギャンブル人口の代用データとして参照しており、こうした数は増えている。例えば、昨年フィリピンを訪問した中国人の数は、2015年比で2倍以上に増えた。15年には香港のメルコリゾーツ&エンターテインメントがマニラにカジノ施設を開設した。

 ヒマラヤ山脈を抱えるネパールでは、中国人観光客の数が08年に約3万5000人だったのが17年には10万人以上に増えた。同国では、豪州のシルバー・ヘリテージ・グループが新設の「タイガー・パレス」を含む2カ所のリゾートを運営している。新リゾートの貢献もあって18年1~6月の同社ギャンブル収入は前年同期比で倍増した。

 最近カジノを合法化した日本はマカオの強力なライバルになる可能性がある。日本IR協会の中山彩子代表によると、当初5~7年で計3カ所のカジノリゾートが許可される見通しで、その後は最大10カ所まで増える可能性があるという。

 香港証券市場に上場するカジノ運営会社で、ロシアのウラジオストクにカジノ施設を保有するサミット・アセントのエグゼクティブ・ディレクター、エリック・ランドヒール氏によれば、マカオ以外のアジアにおけるギャンブル事業は引き続き急速に拡大するとみられている。だが日本でカジノ施設が開設されれば供給が需要を上回り始める可能性があり、市場は飽和状態に達しかねないという。

 メルコリゾーツはアジア事業に大きく賭ける計画で、ローレンス・ホー最高経営責任者(CEO)は日本での営業ライセンス獲得を目指している。

 とはいえ、マカオが占める首位の座を他のアジア市場が奪うには依然課題がある。多くの新興市場にはインフラ面の問題がある。マカオではフェリーターミナルか空港からカジノ場のテーブルに着くまで30分程度だが、ネパールやベトナムでは何時間もかかる。

 米アタリスト・フィナンシャル・グループのマネジング・ディレクター、ロイ・スモラーズ氏によれば、インフラ面での問題が少ない日本のような市場では、地元の人々の感情を損なうことなく、客となる中国人に魅力を感じさせる施設を設計することが課題となっている。

 スモラーズ氏によると、経営難に陥っていたラスベガスのカジノ「ラッキードラゴン」に日本人投資家を案内した際、「中国調の装飾」に対する彼らの否定的見方に驚いたという。同カジノは中国人のギャンブラーを対象にしていたにもかかわらずだ。

 「日本人にとって受け入れ可能で望ましいものは何かを極めて敏感に受け止めず、東京であれ他の都市であれ派手なカジノリゾートを設立しようと考えているのであれば、それは間違いだ」。スモラーズ氏はこう語った。

0 件のコメント:

コメントを投稿