2021年4月20日火曜日

国内活動への職員の意識高まる 国際協力機構理事長・北岡氏に聞く

 Source:https://kahoku.news/articles/20210419khn000017.html

北岡伸一氏

 東日本大震災は日本の国際貢献などにもさまざまな影響を与えた。国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長に、震災後の国内外の取り組み、今後の展望を聞いた。(聞き手は防災・教育室 須藤宣毅)

 -震災発生直後、どのような動きがあったか。
 「南アフリカ、トルコ、インドネシアなど、それまで協力してきた多くの国々から救助隊、救援物資、寄付金といった被災地支援を受けた。日本は世界とつながり、協力は一方向ではなく双方向だったと確認できたことは、われわれにとって大きな財産になった」
 「海外での活動で培ったボランティア精神、他者の利益を優先する利他主義を被災地で発揮した。JICA職員、元青年海外協力隊員が被災地の避難所運営やイスラエル医師団の受け入れなどに協力したほか、ボランティア活動に参加した。東松島市では元隊員が継続的に復興に関わった。震災を経て職員たちは国内活動に対する意識が高まった」

 -震災の教訓は国際協力にどう反映されているか。
 「国連による『仙台防災枠組』の指針の一つビルドバックベター(より災害に強い復興)を国際協力の活動で実践している。2015年に発生したネパール大地震の後、現地で住宅の耐震性を高める基準作りや技術指導を行った。18年のインドネシア・スラウェシで起きた地震の被災地でも、災害に強い地域づくりに協力した」

 -震災後、国内外で力を入れている取り組みは。
 「日本にとってフィリピン、インドネシア、ベトナムなどの西太平洋諸国は地政学的に重要な国々だ。一方でそれらの国々は、日本と同様に自然災害が多発している。連携強化に防災、復興は重要なテーマになる。防災投資への協力を強化したい。防災を担う人材を育成するため、18年度からは東北大などに留学生を受け入れてもらっている」
 「国内は少子高齢化で働き手が減少し、外国人の人材なしには経済が成り立たない状況になっている。JICAとしても協力していきたい。取り組みの一環で外国人材・多文化共生専門のJICAデスクを仙台に置いた。人口が減少した東北の被災地にも貢献できると思う」

 -東北の被災地に期待することは。
 「冷害、津波、地震など災害が多いことは、東北の人にとって不幸なことだと思うが、そのたびに乗り越えてきた。多くの災害に見舞われる日本全体が、東北に学ぶべきだろう」
 「東北は戊辰戦争で敗れ、『白河以北一山百文』と軽視されたように、敗者として辛酸をなめた。しかし、そこから立ち上がり、原敬、後藤新平、新渡戸稲造ら優れた人材を輩出している。震災から立ち上がり、東京を越え、国際的に活躍する人材が今後も出てくることを期待したい。それは日本の活性化にもつながる」

北岡 伸一[きたおか・しんいち]氏 東大大学院博士課程修了。東大教授、国連大使などを経て2015年から現職。専門は日本政治史。72歳。奈良県出身。

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