ドイツの選手(左端)と記念撮影する那賀町民ら。コロナ禍でこうした交流事業の準備が滞っている=2018年10月7日、同町の川口ダム湖

 東京五輪・パラリンピックの「ホストタウン事業」で、外国の選手団を受け入れる県内自治体が具体的な交流内容などを決められず、頭を悩ませている。受け入れ開始まで残り3カ月となったが、新型コロナウイルスの影響で出場選手の選考が遅れるなどし、準備が滞っているためだ。県民が一流選手の技術を間近で体感できる機会だけに、各自治体は「より良いものにしたい」と意気込むものの、計画通りの内容を実現できるかは見通せていない。

 ホストタウン事業は国際交流推進などを目的とした政府の取り組みで、県内では県と徳島、鳴門両市、那賀町が登録。ドイツ(ハンドボール、カヌー、柔道)、ネパール(水泳、アーチェリー)、カンボジア(水泳)、ジョージア(パラ代表)の選手団が3市町で、7月から順次事前合宿する。

 合宿期間中は選手団との合同練習や選手による実技指導、交流行事などを行うため、県と3市町が各国の競技連盟などと内容を詰めていく予定だった。だが、コロナ禍で各競技の予選会などが遅れており、現時点でどの選手団についても来日日程や人数、受け入れ期間が決まっていない。

 事業では、競技の枠を越え、受け入れ自治体と各国の文化交流の促進も図られる。選手団が活躍すれば、地域の活性化も期待される。

 那賀町は、メダル獲得が有力視されるドイツのカヌー選手団を受け入れる。担当者は「世界トップの競技力を町民が体感できるチャンス。競技人口の増加につながるかもしれない」と話す。町は2018年、川口ダム湖畔に艇庫を整備し、18、19年には選手の合宿も受け入れた。小中学校などの給食にドイツ料理を出すなど、機運の盛り上げも図っている。

 一方、政府は大会前に選手と住民の接触を極力避けるよう求める指針を公表している。これに対し、複数の自治体担当者は「感染対策上やむを得ない」と理解を示しつつも「仮に交流がオンラインといった非接触のものになれば、どれだけ地元が盛り上がるだろうか。事業の意義も薄らいでしまう」と危惧する。

 各国との交流プログラムを調整する県は「公開練習など、できるだけ選手を身近に感じられる場をつくっていきたい。感染状況にもよるが、相手国や3市町と協議しながらどこまでできるかを見極めていきたい」としている。