Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/88efdb771b469950f969dc8826c5e81d23f3a0cf
人口約2000人、面積の96%が森林に覆われた日本三大秘境の一つ、宮崎県椎葉村。険しい山あいに囲まれたこの村で、住民の健康を一手に支える村唯一の病院がある。赴任して以来、「世界一のかかりつけ病院」を掲げ、患者の心と暮らしに寄り添い続ける院長と病院の姿に密着した。 【動画】「世界一のかかりつけ病院」を目指して 椎葉村の温かな医療と覚悟
秘境の椎葉村を支える唯一の医療機関
日本三大秘境の一つ「椎葉村」。宮崎県の北西部に位置し、面積の96%を森林が占める。 人口約2000人が暮らす深い緑と険しい山々に囲まれたこの村で、住民たちの健康を支えているのが村唯一の病院「椎葉村国民健康保険病院」だ。病院には吉持厳信院長をはじめ、県から派遣された医師を含めて3人の医師が在籍。一般病床は30床あり、入院にも対応しながら総勢48人の職員が村の医療を支えている。 「『椎葉村民にとっての世界一のかかりつけ病院』という標語を掲げさせてもらってる」そう話す吉持厳信院長は、診察室で患者の体調を優しく気遣う。 吉持厳信院長: 暑いから熱中症とかに気をつけて、水分もしっかり取ってください。 病院に訪れる患者は1日に70人ほどで、その約8割が65歳以上の高齢者だ。高血圧や脂質異常症など生活習慣病の患者を多く診察する。 吉持厳信院長: この検査の結果やと、辛いものがちょっと多い感じよ。 患者: じゃろうね。控えなかんね。 吉持厳信院長: そうやね。 患者からは「ずっと院長先生じゃもの、私は。話しやすい。2ヶ月に1回やけどね、病気の話をよう聞いてくれる」と、厚い信頼が寄せられている。
ネパールでの経験が育んだ地域医療の原点
吉持院長は静岡県生まれ、大阪府で育った。京都大学医学部を卒業後、外科医として滋賀県の病院で5年間勤務したのち、1996年から2002年までネパール極西部のダンデルデュラで地域医療に携わった。 吉持厳信院長: シュバイツァー博士に憧れて、途上国の医療に携われたらいいなと思って、ネパールの中でも一番開発が遅れていた地域で働かせてもらった。ネパールでは全部のことをみんなと一緒に考えていかないといけなかったので、そのときの病院運営などが今に生きていると思う。 2022年9月、県からの紹介で椎葉村へたどり着いた。吉持院長は椎葉村について「はじめて来たときは山しかないから、平地はどこにあるんだろう?と思った。でも、住んでしまえば本当にいいところ」と話す。 吉持院長やスタッフと患者の距離は非常に近く、温かなコミュニケーションが日々の医療を支えている。 吉持厳信院長: どこの病院よりも看護師さんと患者さんとか、僕らと患者さんとか、事務の人と患者さんとかっていう、患者さんとの距離がかなり近いと思う。患者さんの把握度ということに関しても、多くの場合が患者の家族の関係とか、そういったことまでも多くのスタッフは頭に入っている。
遠隔診断と巡回診療で届ける医療の温もり
職員の数が限られる中、遠方の医療機関と連携した体制も整えられている。 吉持厳信院長: CTの検査など僕らだけではちょっと不安なときは、県立の延岡病院に画像を送るシステムを使って、向こうの先生に電話をすれば診てくれるみたいな感じ。これはとても助かっている。密に連携できるので「とりあえず椎葉の病院に行けば何とかなる」とみんな思ってくれていると思う。 一方、山あいに暮らす村民にとって、移動の難しさは大きな課題だ。 広い村内には集落が点在しており、定期的なバス便もない山間部では、吉持院長自らが月に一度、栂尾や大河内、財木といった地区へ赴き、巡回診療を行っている。 通院が困難な高齢者にとって、この巡回診療は命綱だ。 診察を受けた高齢の患者は、「我々にとっちゃ神様の様なもんだ」「優しいして、いつまでもおってもらいたい」と感謝を伝える。 その言葉に、吉持院長は「面と向かって言われちゃうと、こっちもなんか照れてしまうけど、そう言ってもらえるのは本当嬉しいです」と笑顔を見せる。
災害の試練を乗り越え、助け合いで守る暮らし
2026年6月の大雨では、椎葉村大河内の国道265号の路肩が決壊し、村の中心部へつながる主要道路が全面通行止めとなった。 現在も村民は車を2台使い、通行止め区間を徒歩で移動したあと、反対側でもう1台の車に乗り換える生活を強いられている。 迂回路を通る看護師の通勤も片道2時間半以上かかるなど、大きな負担が生じており、一刻も早い復旧が望まれている。 こうした困難な状況の中でも、椎葉村には強い結びつきがある。 村には消防組織がなく、急病人が出た際には近隣の住民たちが一緒になって病院へ搬送するなど、日頃から助け合いが当たり前に行われてきた。 吉持厳信院長: こういうところに巡りあえて良かった。「椎葉村民にとっての世界一のかかりつけ病院」という感じでみんなも思ってくださっていると思うので、僕が誰かに伝えていくというよりは、病院全体でいろいろな精神が椎葉村の伝統として残っているので、それがそのまま継続していければ大丈夫だと思う。 「椎葉村民にとっての世界一のかかりつけ病院を目指すぞ!」 病やけがを治すだけでなく、村民にとってのかけがえのない「拠り所」として、椎葉村の温かな絆は今日も命と暮らしをつなぎ続けている。 (テレビ宮崎)
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