Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/fda110362324e81579bfc34f771a682065584da3
日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、元日本赤軍メンバーと捜査当局との長い戦いについて聞いた。 【画像】事件から半世紀が経っても、「面影」は変らない。「国際手配中の日本赤軍メンバー」 ***
5月28日、元日本赤軍最高幹部、重信房子氏(76)が20年の刑期を終えて釈放された。彼女は、1974年9月、フランス当局に逮捕された日本赤軍の山田義昭を奪還するため、オランダのハーグにあるフランス大使館を占拠して大使ら11人を人質にとり、警察官に発砲して重症を負わせた(ハーグ事件)ことで国際指名手配された。 長い逃亡生活の末、潜伏先の大阪・高槻市で逮捕されたのは、2000年11月のことだった。 「ホテルに挙動不審な女がいるという、複数の情報が寄せられたことが逮捕のきっかけでした」 と語るのは、勝丸氏。 「ホテルに長期滞在しているのにほとんど外出はしない。その一方、不自然なほど訪問客が多いというのです。彼女に関する公安の膨大な資料には、特徴を示すデータがいくつもありました。その一つがタバコの吸い方です。キセルを吸う時のように、親指と人差し指でタバコを持って吸うのです。監視していた捜査員が、彼女がタバコを吸う姿を見て重信だと確信したそうです」
空港や税関職員を接待
ハーグ事件をきっかけとして、警察庁は在外公館に警備担当者を派遣するようになったという。彼らには赴任先の大使館で、赤軍メンバーの動向をチェックする任務もあった。 「私も具体的には申し上げられませんが、アフリカのある国の日本大使館に派遣されました。そこで、逃亡中の日本赤軍の7人に関する情報を集めていました」 逃亡中の7人を改めて説明しよう。1972年にイスラエルのロッド空港乱射事件を起こした岡本公三(74)、ハーグ事件に加わった奥平純三(73)、1977年のダッカ日航機ハイジャック事件に関与した佐々木規夫(73)、重信の元側近で、1971年に横浜銀行の銀行強盗の実行犯だった松田久(73)、1974年の三菱重工爆破事件に関与した大道寺あや子(73)、元連合赤軍で1972年にあさま山荘事件を起こした坂東国男(75)、ダッカ日航機ハイジャック事件で釈放されて日本赤軍に参加した仁平映(76)である。 「7人はICPO(国際刑事警察機構)によって国際手配されています。国際手配には、身柄を拘束する赤手配と潜伏先などの情報を提供してくれる青手配があります。7人は赤手配です。もっともICPOから赤手配されても、各国の警察が実際に動いてくれることはまずありません」 そのため勝丸氏は、独自に現地の空港職員や税関職員に、偽造パスポートを使って入国したアジア系の人間がいれば連絡してもらうように頼んでいたという。 「もちろん、ただお願いするだけでは手間がかかるので連絡はもらえません。私は何とか協力を得るために、日頃から外交機密費を使って彼らを接待していました」
アフリカ某国に現れた奥平純三
すると、ある日、空港の関係者から日本人の偽造パスポートを使って入国したアジア系の女性がいると連絡が入った。 「日本大使館から空港まで80キロありましたが、車を飛ばして駆けつけました。日本赤軍のメンバーではないかと色めき立ちました」 だが、問題の女性は中国人だった。 「中国人女性が持っていたパスポートは、兵庫県に住む日本人女性のパスポートを盗んで偽造したものでした。結局、中国人女性は国外退去となりました。偽造パスポートはかなり精巧なもので、専門的な知識のある中国人組織によって作られたもののようでした」 結局、勝丸氏は国際手配中の赤軍メンバーと接触はできなかった。 「ですが、逃亡犯の一人である奥平はアフリカのある国に滞在したことが分かりました。1996年のことです。その国には共産主義の過激派組織があり、そこに奥平が接触していたのです。日本赤軍は世界共産主義革命を標榜しています。そのため、同志を探して世界各国をあちこち回っているのですが、アフリカにも来ていたのです」 この他、坂東国男は、中国、ネパール、オーストリア、ルーマニアに入国した形跡があるという。大道寺あや子は1999年、香港で松田久とともに重信と会っていたことが確認されている。 「佐々木規夫は1998年、奥平と日本に入国していたことが分かっている。現在、7人の逃亡犯はレバノンかパレスチナに居ると見られています。各国の日本大使館にいる警察出身の外交官が今も7人に関する情報収集をしています。重信がそうであったように、日本に潜伏している可能性も否定できません」 なお、5月30日、岡本はレバノンの首都ベイルートで開催されたロッド空港乱射事件の50周年を記念する集会に参加したと報じられた。 重信は逮捕後の2001年4月、日本赤軍の解散を宣言している。今後、再結成の可能性はあるのか。 「彼女は高齢で病気なので再結成の意志はないようですが、周りに熱心な支持者がいて夢を捨てきれず、再結成を望んでいる者もいます」
デイリー新潮編集部
新潮社
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